2016年7月21日 新総裁体制でのブラジルの金融政策とレアル相場 ブラジル中銀は、ゴールドファイン総裁就任後初となる金融政策委員会(COPOM)で政策金利の据え置きを決定。 中銀はインフレ抑制重視のタカ派的な政策方針を示す。金融緩和への転換には財政政策の進展がカギを握る。 ブラジル中銀のタカ派的な政策姿勢、国内経済環境の改善、経常収支の均衡化などがレアル相場の下支え要因に。 中銀は小規模の為替介入を継続。レアル相場の先行きを左右する暫定政権の政策の行方は慎重に見守る必要。 図1:ブラジル中銀の政策金利とインフレ率 ブラジル中銀は政策金利の据え置きを決定 ブラジル中央銀行は7月19-20日(現地時間)、ゴール 16 (%) 2016年7月20日 ブラジル中銀 政策金利 ドファイン総裁就任後初となる金融政策委員会(COPOM) 14 を開催し、政策金利の据え置きを決定しました(図1)。 COPOM声明文では、「インフレ見通しとリスクを考慮する と金融緩和の余地はない」と述べられ、インフレ抑制を重 視するタカ派的な政策方針が示されました。ブラジル中銀 の2017年末のインフレ見通しは、政策金利据え置きを想 定した基準シナリオでは目標の4.5%近辺に低下が見込ま 11.00% +8.8% 2016年末(予) +7.3% 上限 2017年末(予) 6 2 財政政策の進展が金融緩和への転換のカギ握る 2017年末(予) 2016年6月 8 オでは5.3%近辺への低下に留まるとみられています。 せることに注力する政策方針を示していました。 13.25% 10 4 ト」でも、2017年末のインフレ率を目標の4.5%へ収れんさ 2016年末(予) インフレ率 (IPCA、前年比) 12 れるものの、市場の政策金利予想を想定した市場シナリ ブラジル中銀は6月28日公表の「四半期インフレ・レポー 14.25% +5.3% インフレ目標(中心=4.5%) 下限 0 13 14 15 16 (年) 17 (出所)ブラジル中銀、ブラジル地理統計院(IBGE) (期間)政策金利:2013年1月1日~2016年7月20日 拡大消費者物価指数(IPCA):2013年1月~2016年6月 (注)政策金利およびIPCAの点線は市場コンセンサス(7月15日時点) ブラジル中銀はCOPOM声明文において、インフレ見通し 図2:ブラジルの公的部門の基礎的財政収支 のリスク要因として「財政調整策の議会承認と実行に関わ る不透明感」を指摘しました。今後、テメル暫定政権下で の財政政策の進展がインフレ見通しの改善および中銀の 金融緩和への転換のカギを握ると考えられます。 ブラジル財務省の予算計画によれば、テメル暫定政権 は財政赤字の縮小を段階的に図り、2019年に公的部門 4 (GDP比、%) 予算計画 3 2 1 0.2% の基礎的財政収支をGDP比0.2%へ黒字化させる方針を 示しています(図2)。テメル暫定政権は財政目標達成の ため、追加の歳出凍結策や景気刺激策を含む政策パッ ケージの公表を検討している模様です。 なお、ブラジル中銀の市場コンセンサス調査(7月15日 時点)によれば、市場関係者の間では2016年10月以降 の利下げ転換が見込まれており、2017年末には政策金 利は11.00%へ低下すると予想されています。 0 -1 -2 -3 -0.9% -1.9% -2.1% -2.6% 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 (年) (出所)ブラジル中銀、ブラジル財務省 (期間)2003年~2019年 (注)基礎的財政収支は利払い費を除く財政収支(プライマリー収支) ●当資料は、説明資料としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」)が作成した資料です。●当資料は、当社が各種 データに基づいて作成したものですが、その情報の確実性、完結性を保証するものではありません。●当資料に記載された過去の成績は、 将来の成績を予測あるいは保証するものではありません。また記載されている見解、目標等は、将来の成果を保証するものではなく、また予 告なく変更されることがあります。●この書面及びここに記載された情報・商品に関する権利は当社に帰属します。したがって、当社の書面に よる同意なくして、その全部もしくは一部を複製し又その他の方法で配布することはご遠慮ください。●当資料は情報提供を目的としてのみ作 成されたもので、証券の売買の勧誘を目的としたものではありません。 1 図3:ブラジル・レアル相場の推移 レアル相場は対米ドル・対円で緩やかに回復傾向 50 足元のレアル相場は、英国の欧州連合(EU)離脱問題 (円) (レアル) 2.5 2016年6月24日 英国民投票でEU離脱派勝利 の影響も限定的に留まり、緩やかなレアル高傾向が続い 45 ています。レアルの対米ドル相場は1米ドル=3.2レアル台 3.0 2016年5月12日 テメル暫定政権発足 へ緩やかに持ち直し、対円相場も2015年12月以来とな 40 る1レアル=32円台を回復しています(図3)。 3.5 対米ドル相場(右軸) 足元のレアル高進行の背景としては、①タカ派的な政策 35 姿勢を採るブラジル中銀が政策金利を当面維持する公 レアル安 しつつあること、③ブラジルの経常収支が均衡化している 25 15年7月 こと、④レアル高抑制のためのブラジル中銀の為替介入 が小規模に留まっていること、などが挙げられます。 4.5 対円相場(左軸) 15年10月 16年1月 16年4月 16年7月 図4:ブラジルの経常収支 6 ブラジルの経済環境の面では、ブラジル中銀もCOPOM (10億米ドル) 貿易収支 サービス収支 4 声明文の中で短期的に経済活動が安定化しているとの景 2 気判断を示しました。また、国際通貨基金(IMF)は7月19 0 日に公表した世界経済見通し(改定見通し)の中で、世界 -2 経済の成長見通しを引き下げる一方、2016~2017年の -4 ブラジルの経済成長見通しを引き上げています(2016年: -6 -3.8%→-3.3%、2017年:0.0%→+0.5%)。 -8 また、経常収支の面では、レアル安による輸出競争力改 所得収支 (第一次・第二次) -10 経常収支 -12 場の下支え要因となっているとみられます(図4)。 ブラジル中銀は小規模な為替介入を継続 為替介入政策に関しては、7月1日以降、ブラジル中銀 05 06 07 08 09 10 11 13 14 15 16 (年) 図5:レアル相場とブラジル中銀の為替介入動向 (先物市場での米ドル買い・レアル売り介入)を実施してい ますが、4月前後の局面と比べると介入規模は小さく、レア 12 は1日当たり5億米ドル規模のリバース通貨スワップ介入 12 (出所)ブラジル中銀 (期間)2005年1月~2016年5月 (注)レッグ・メイソン・アセット・マネジメントによる季節調整値。 (10億米ドル) 16 6月7日:上院がゴールドファイン 14 中銀総裁の就任人事を承認 ル高の抑制効果は限定的に留まっている模様です(図5)。 10 もっとも、足元でのレアル高はテメル暫定政権の構造改 8 革への期待先行の面も大きいとみられ、レアル相場が一 6 段の安定に向かうかは暫定政権の政策の実現性に左右 4 されると考えられます。特に財政健全化を進める過程では、 2 議会審議などでの紆余曲折も予想され、暫定政権の政策 0 3月1日 の行方は慎重に見守る必要がありそうです。 5.0 (出所)ブルームバーグ (期間)2015年7月1日~2016年7月20日 IMFはブラジルの経済見通しを引き上げ 経常収支の均衡化に繋がりはじめていることも、レアル相 レアル高 30 算が増していること、②ブラジルの経済環境が最悪期を脱 善や資源価格持ち直しなどを背景に、貿易黒字の拡大が 4.0 (レアル) 3.2 3.3 レアルの対米ドル 相場(右軸) 3.4 レアル高 3.5 3.6 レアル安 3.7 リバース通貨スワップ 実施額(左軸) 3.8 3.9 4.0 3月31日 5月2日 6月1日 7月1日 (出所)ブルームバーグ (期間)2016年3月1日~7月20日 ●当資料は、説明資料としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」)が作成した資料です。●当資料は、当社が各種 データに基づいて作成したものですが、その情報の確実性、完結性を保証するものではありません。●当資料に記載された過去の成績は、 将来の成績を予測あるいは保証するものではありません。また記載されている見解、目標等は、将来の成果を保証するものではなく、また予 告なく変更されることがあります。●この書面及びここに記載された情報・商品に関する権利は当社に帰属します。したがって、当社の書面に よる同意なくして、その全部もしくは一部を複製し又その他の方法で配布することはご遠慮ください。●当資料は情報提供を目的としてのみ作 成されたもので、証券の売買の勧誘を目的としたものではありません。 2
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