ブラジル大統領弾劾

2016年9月1日
弾劾裁判でルセフ大統領の失職が正式決定
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上院の弾劾裁判でルセフ大統領の失職が決定。テメル暫定大統領が正式に大統領に昇格(任期は2018年末まで)。
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今後は構造改革などの面でテメル大統領の政策手腕が問われる。年内は歳出抑制法案や年金改革が焦点に。
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ブラジル中銀は政策金利据え置きを決定。今後の利下げの条件として、財政政策に係る不透明感解消などを指摘。
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海外投資家の証券投資は株式投資中心に流入傾向。資金流入の持続性は構造改革の行方に左右される見込み。
ルセフ大統領が失職し、テメル氏が大統領に昇格
図1:ルセフ大統領弾劾に関する最終投票結果
ブラジル上院は8月31日(現地時間)、ルセフ大統領の
弾劾裁判の採決を実施し、弾劾賛成が全議員の3分の2
を上回る61名となりルセフ大統領の失職が決定しました
(図1)。この結果、ミシェル・テメル暫定大統領が正式に
弾劾
賛成
61
大統領へ昇格しました(任期は2018年末まで)。
今後はテメル大統領の政策手腕が問われる
ブラジル金融市場では、ルセフ大統領の弾劾審議が動
きめた2016年3月以降、大統領交代による政策転換へ
弾劾
反対
弾劾成立ライン
54名以上
(上院議員の3分の2)
20
の期待感から株高・レアル高基調が続いてきました(図2)。
8月31日の市場では、ルセフ大統領の弾劾は概ね想定通
りであったことから、株式市場やレアル相場の反応は限定
的に留まりました。今後は財政構造改革の実施や経済再
建などの面で、テメル大統領の政策手腕が問われることと
0
10
20
30
2016年8月31日
ルセフ大統領の弾劾決定
(レアル)
65,000
(G20)首脳会議(中国・杭州)で外交デビューを果たした
60,000
1.5
ボベスパ指数
(左軸)
2016年5月12日
テメル暫定政権発足
2.0
2016年3月17日
下院がルセフ大統領
の弾劾審議開始
会審議や、年金改革法案の提出などに注力するとみられ
ています(図3)。2017年以降は、労働市場や税制に関す
70 (名)
60
図2:ブラジルの株価とレアル相場の推移
年内は歳出抑制法案や年金改革が焦点に
後、年内は10月の地方選挙の前後に歳出抑制法案の議
50
(出所)ブラジル上院 (注)上院定数は81議席。
なりそうです。
今後、テメル大統領は9月4~5日の20ヵ国・地域
40
55,000
2.5
る構造改革が進められるかも注目材料と考えられます。
50,000
3.0
45,000
3.5
図3:今後のブラジルの主要政治日程
 9月4~5日:テメル大統領がG20(中国・杭州)に出席
 10月2日:ブラジル地方選挙(第一回投票)
 10月30日:ブラジル地方選挙(決選投票)
↓
 2018年10月:ブラジル大統領選挙
レアル高
40,000
4.0
レアルの
対米ドル相場(右軸)
35,000
15年1月
レアル安
4.5
15年7月
16年1月
16年7月
(出所)ブルームバーグ (期間)2015年1月1日~2016年8月31日
(出所)各種報道・資料
●当資料は、説明資料としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」)が作成した資料です。●当資料は、当社が各種
データに基づいて作成したものですが、その情報の確実性、完結性を保証するものではありません。●当資料に記載された過去の成績は、
将来の成績を予測あるいは保証するものではありません。また記載されている見解、目標等は、将来の成果を保証するものではなく、また予
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成されたもので、証券の売買の勧誘を目的としたものではありません。
1
図4:ブラジル中銀の政策金利とインフレ率
ブラジル中銀は政策金利の据え置きを決定
ブラジル中央銀行は8月30-31日(現地時間)に金融政
16
策委員会(COPOM)を開催し、政策金利を14.25%で据え
14
置く決定を下しました(図4)。
12
COPOM声明文では、今後の金融緩和の条件として、①
10
食品価格上昇の影響が限定的に留まること、②金融政策
8
や経済活動に敏感な物価品目の上昇率が適度なペース
6
で鈍化すること、③財政政策などの必要な経済調整策の
4
実行を巡る不透明感が解消されること、が指摘されました。
2
市場では2016年末からの利下げ転換を見込む
0
足元のインフレ率は2016年7月には前年比+8.7%まで
鈍化しており、金融緩和に向けた素地が徐々に整いつつ
あるとみられます。直近のブラジル中銀集計の市場コンセ
(%)
14.25%
ブラジル中銀
政策金利
ると予想されています。
ブラジル中銀は経済活動の好転の可能性を指摘
2016年末(予)
13.75%
インフレ率
(IPCA、前年比)
2017年末(予)
11.25%
2016年7月
+8.7%
2016年末(予)
+7.3%
上限
2017年末(予)
+5.1%
インフレ目標(中心=4.5%)
下限
13
14
15
16
(年)
17
(出所)ブラジル中銀、ブラジル地理統計院(IBGE)
(期間)政策金利:2013年1月1日~2016年8月31日
拡大消費者物価指数(IPCA):2013年1月~2016年7月
(注)政策金利およびIPCAの点線は市場コンセンサス(8月26日時点)
図5:ブラジルの消費者・企業信頼感指数
ンサスでは、2016年末からの利下げ転換が見込まれてお
り、2017年末には政策金利は11.25%まで引き下げられ
2016年8月31日
(2001年=100)
120
(中立=50)
60
消費者信頼感指数
(左軸)
115
55
110
50
化しており、経済活動に緩やかな改善の可能性があるとの 105
45
また、COPOM声明文では、足元でブラジル経済が安定
景気判断が示されました。2016年4-6月期のブラジルの
改善
100
となったものの、テメル暫定政権が発足した2016年5月以
40
企業信頼感指数
(鉱工業、右軸)
実質GDPは前期比-0.6%と6四半期連続のマイナス成長
95
35
悪化
降は企業や消費者の信頼感が改善傾向にあります(図5)。 90
12
海外投資家の証券投資も資金流入傾向
なっています。
15
16
30
(年)
図6:海外投資家によるブラジルへの証券投資
動向も、2016年7月には資金流入額が33.7億米ドルへ増
などから、海外投資家による株式投資の流入が顕著と
14
(出所)ブラジル全国工業連盟 (期間)2012年1月~2016年8月
海外投資家によるブラジルへの信認を示す証券投資の
加しました(図6)。特に2016年は大統領交代への期待感
13
(10億米ドル)
4
証券投資
+33.7億米ドル
株式投資
ネット流入
+29.5億米ドル
2
+4.3億米ドル
0
もっとも、今後、海外投資家の資金流入が持続するかは、
テメル大統領が進める構造改革の行方に大きく左右され
-2
債券投資
ると考えられます。当面はテメル政権が重要視する歳出
-4
抑制法案に関して議会からの支持が得られるかが焦点と
-6
なるほか、国内外の民間資金を呼び込むためのインフラ
等の民営化計画の公表にも注目が集まりそうです。
ネット流出
-8
16年1月
16年3月
16年5月
16年7月
(出所)ブラジル中銀 (期間)2016年1月~2016年7月
●当資料は、説明資料としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」)が作成した資料です。●当資料は、当社が各種
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