Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
輸出が絶好調
2016年7月15日(金)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】
・米新規失業保険申請件数は25.4万件と前週から変わらず、歴史的低水準を維持。4週移動平均は1973年以
降の最低近傍に比肩した。もっとも、前年比でみた減少率が一桁台に落ち込み、雇用統計NFPが2%以
下のペースに落ち込むことを示唆しているほか、目下の水準でさえ2012年以降の傾向線よりも上方に位置
している点は注意が必要。
新規失業保険申請件数
(千件)
(前年比、%)
雇用者数・新規失業保険申請件数
6
400
4
370
(前年比、%)
-50
-30
失業保険(右)
-10
2
10
340
0
改善
310
-2
280
-4
30
雇用者数
50
70
悪化
250
12
13
14
15
-6
16
80
85
90
95
00
05
10
(備考)Thomson Reutersにより作成 3ヶ月平均の前年比
(備考)Thomson Reutersにより作成。太線:4週移動平均
90
15
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は5日続伸。発表が本格化しつつある企業決算が概ね好調な滑り出しとなり、業績への期待
からNYダウ、S&P500がともに史上最高値を更新。原油価格の安定も寄与。WTI原油は45.68㌦(+0.93
㌦)で引けた。
・前日のG10 通貨はGBPを筆頭に欧州通貨の強さが目立った反面、JPYの弱さが目立った。GBPの強さはBOEが
利下げを見送ったことが背景。BOEは8月に利下げに踏み切る可能性が高いとしたが、一旦はGBPの買戻し
が優勢となった。グローバルに投資家のリスク選好度が強まる下で、この日もJPYロングポジションの巻き
戻しが進みUSD/JPYは一時106に迫った。
・前日の米10年金利は1.536%(+6.1bp)で引け。株高・原油高で逃避需要が後退する下、欧州債下落に追
随。欧州債市場では、BOEの緩和見送りを受けて英国(0.794%、+4.9bp)が金利上昇。これに追随する形
でドイツ(▲0.040%、+2.2bo)、イタリア(1.218%、+1.0bp)、スペイン(1.169%、+2.1bp)、ポ
ルトガル(3.114%、+1.5bp)も金利上昇。3ヶ国加重平均の対独スプレッドは概ね横ばい。
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株は欧米株高に追随して続伸で寄り付いた後、上げ幅拡大(10:15)。ここもと話題になっているヘ
リコプターマネー政策を巡る思惑が円安・株高の一因となっている。
・昨日発表の対内・対外証券投資(週次)では、7月3日~9日にかけての本邦投資家による中長期外債の
買い越し額が約2.5兆円と空前の規模に膨らんだことが判明した。これは連続性が担保されている2005年1
月以降で最高額。この時期はBREXIT後のリスクオフムードのなか、日銀の追加緩和観測が高まり、円債市
場では一時20年金利がマイナス圏に突入し、米債市場では米10年金利が1.36%まで低下した局面に一致す
る。本邦投資家の外債購入は、その大半が円債の代替投資的な意味合いが強いヘッジ付き投資であると考
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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えられ、本邦投資家の物色の矛先がプラス金利の獲れる外債に向かったと容易に推察される(※週次統計
では詳細な投資主体が公表されないが、詳細が公表されている直近の月次統計では生保・銀行の買い越し
が確認されている)。要するに、日本が米国に低金利を輸出した形だ。日銀のマイナス金利発動以降、中
長期債の累積買い越し額は16兆円に迫る勢いだが、先行きも日銀の追加緩和観測が燻り続く可能性が高い
ことを踏まえると、日本の“輸出”は好調を維持する公算が大きい。
・ところで筆者は、米国株が史上最高値を更新している最大の要因を、株式が債券の代替投資先として選好
されていることにあると理解している。最高値を更新している銘柄の多くは業績の変動が低く、減配リス
クが低いという条件を満たしており、投資家の狙いがインカムゲインにあることを窺わせている。ある意
味で金利敏感株だ。そこで注意したいのは、何らかの理由で円債市場の低位安定が揺らぐようことがあれ
ば、米債市場への資金流入が減少する可能性があること。その場合、米金利の低位安定が揺らぎ、米株市
場にも影響を与える可能性がある。
万
(兆円)
(兆円)
対外・対内証券投資(本邦投資家)
16
2.5
7/3-7/9
2
本邦投資家による中長期債累計買い越し額(2月以降)
14
中長期債
12
1.5
10
1
8
0.5
6
0
4
2
-0.5
0
16/02
-1
13
14
15
16
16/03
16/04
16/05
16/06
16/07
(備考)Thomson Reutersにより作成 4週平均
(備考)Thomson Reutersにより作成 4週平均
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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