Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
3月の利上げ確率は100%に
そして4回シナリオに備える時
2017年3月10日(金)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】
・新規失業保険申請件数は24.3万件と前週から2.0万件増加したものの低水準を維持。4週移動平均は23.7万
件と引き続き43年ぶりの低水準にある。前年比でみた減少ペースはここへきて再加速の兆しがみえており、
労働市場の量的回復の再加速を示唆。雇用統計NFPは20万人ペースを維持する可能性が高い。
新規失業保険申請件数
(千件)
(前年比、%)
雇用者数・新規失業保険申請件数
6
400
4
(前年比、%)
-50
失業保険(右) -30
370
-10
2
340
NFP
10
0
310
30
280
-2
250
-4
220
-6
12
13
14
15
16
17
80
85
90
95
00
05
10
(備考)Thomson Reutersにより作成 3ヶ月平均の前年比
(備考)Thomson Reutersにより作成。太線:4週移動平均
50
70
90
15
・ECB理事会は政策金利の現状維持を決定。主要政策金利は±0.0%、中銀預金金利は▲0.40%、限界貸出
金利は+0.25%で据え置かれ、資産購入額は予定どおり4月から実施することが確認された。昨年12月理
事会の決定に基づき4月以降は現在800億ユーロの購入額が600億ユーロへと減額される。声明のトーンは
景気認識が楽観に傾斜し、またこれまで長期間に亘って言及されてきた「目標達成に向け正当化されるな
ら理事会は利用可能なあらゆる措置を利用する(using all the instruments available within its
mandate) 」との文言を削除した。景気と物価見通しは2017-18年が共に上方修正された。
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場他】
・前日の米国株は横ばい。米金利上昇で金融株が上昇する反面、公益など高配当銘柄が軟調に推移。また原
油価格続落でエネルギー関連の一角に売が売られた。WTI原油は49.28㌦(▲1.00㌦)で引け。8日発表
に発表された原油在庫の急増が需給懸念を誘発。
・前日のG10 通貨はEURが最強となった反面、JPYが最弱となり、USDの強さは中位程度であった。EURはECB
理事会を受けて急伸する場面があったが、米国時間午後にかけて上昇幅を縮小、一日を通じては+0.34%
の上昇に留まった。他方、USD/JPYは日本時間から一本調子で上昇、115を回復した。
・前日の米10年金利は2.605%(+4.6bp)で引け。雇用統計、FOMCを控えるなか、ドラギ総裁の記者会見中
にドイツ国債が売られると米債市場はそれに追随。10年金利は大統領選後の最高を更新した。欧州債市場
(10年)はドイツ(0.426%、+5.6bp)、フランス(1.086%、+6.1bp)、イタリア(2.312%、+
5.8bp)、スペイン(1.839%、+2.8bp)が金利上昇。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株はUSD/JPY上昇を受けて窓明けオープン。日経平均は19500を回復した(11:00)。
<#3月FOMCの利上げは既成事実化
#4回シナリオ
>
・9日時点で金利先物が織り込む3月FOMCの利上げ確率は100%と市場は完全にそれを織り込んだ(Bloomberg
算出ベース、CME算出のそれは90.8%)。今晩発表の2月米雇用統計が目を疑うような弱い結果にならない限り、
FEDは3月の追加利上げを決定するとみられる。因みに雇用統計のコンセンサスはNFPが+20.0万人(1月
22.7万人)、失業率が4.7%(4.8%)、平均時給が前月比+0.3%(+0.1%)、前年比+2.8%(+2.5%)であ
る。
・雇用統計の最重要項目は平均時給。FEDが労働市場の量的回復に満足しているのは明らかだが、一方で平均時
給はこれまで利上げに待ったをかけてきた経緯があり回復の勢いが注目される。ここでイエレン議長が重視する
自発的離職率に目を向けると、振れを伴いながらも上昇基調にあり、平均時給の上昇を示唆している。これは労
働者が待遇改善を求めて活発に転職活動をしている様子を映し出していると考えられ、賃金上昇の兆候として認
識される。また、NFIB 中小企業楽観指数のサブ項目である人件費計画に目を向けてみても、昨年夏場をボトム
に足もとでは明確な反発基調にあり、賃金上昇を示唆している。両者の関係は景気後退前後で水準は断絶してい
るが、方向感の連動性はさほど崩れておらず、注目に値する。
・なお、昨日の当レポートで指摘したとおり、平均時給の増勢次第ではFEDの利上げ計画が4回に上方修正され
る可能性がある。詳細については「4回シナリオの復活劇も」を併せて参照されたい。
(%)
自発的離職率(米国)
3
(%)
4
NFIB人件費計画・平均時給
20
2.5
離職率 3
(%)
25
人件費計画
5
4
15
3
10
2
2
2
1.5
5
平均時給(右)
1
1
01
03
05
07
09
(備考)Thomson Reutersにより作成
11
13
15
1
平均時給(右)
0
90
95
00
05
10
(備考)Thomson Reutersにより作成 太線:3ヶ月平均
17
平均時給18ヶ月先行
0
15
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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