材料は揃った あとはタイミング 藤代 宏一

Market Flash
材料は揃った
あとはタイミング
2016年6月23日(木)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】
・5月米中古住宅販売件数は前月比+1.8%、553万件と市場予想に概ね一致して景気後退後のピークを更新。
2007年2月以来の高水準となった。主力の戸建てが+1.9%と3ヶ月連続で増加し、集合住宅も+1.6%と
堅調に推移。先行指標の販売成約指数の改善基調と整合的で消費者の旺盛な住宅購入意欲を窺わせる。住
宅在庫が異例の低水準から増加するなど、供給側要因が販売増加に寄与している面もある。先行きも所得
環境の改善と低位安定を保つモーゲージ金利が支えとなり、好調を維持しよう。
中古住宅販売件数・販売成約指数
千
(百万)
6
14
販売成約指数(右)
5.5
5
110
中古住宅販売件数
(月)
4.5
4
12
3.5
10
100
4.5
中古住宅在庫
(千件)
販売可能戸数
8
2.5
90
6
4
3.5
80
4
70
2
2
1.5
在庫月数(右)
3
10
11
12
13
14
15
1
07
16
(備考)Thomson Reutersにより作成 3ヶ月平均
3
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(備考)Thomson Reutersにより作成
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は反落。イエレン議長の議会証言は材料視されず、英国民投票の結果発表を控えて売り買い
交錯。WTI原油は49.13㌦(▲0.72㌦)で引け。USD安が支援材料になるも、週間石油在庫統計で原油在
庫の減少幅が予想より小さかったため需給懸念が生じた。
・前日のG10 通貨はCADが最弱でそれにUSDが続き、その他通貨は上昇。AUD、NZDの強さが目立ったほか、
EUR、GBPなど欧州通貨も堅調。USD/JPYは104半ばのレンジで推移、EUR/USDは1.13へ水準を切り上げた。
・前日の米10年金利は1.685%(▲2.1bp)で引け。アジア時間にラリーした米債は、7年債の好調な入札を
受けて一段とラリー。欧州債はコア堅調、周縁国軟調。ドイツ10年金利が0.061%(+1.1bp)で引けた一
方、イタリア(1.435%、▲1.2bp)、スペイン(1.497%、▲0.8bp)、ポルトガル(3.147%、▲2.1bp)
は金利低下。3ヶ国加重平均の対独スプレッドはタイトニング。
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株は米株安に追随して小安く寄り付いた後、プラス圏に浮上(9:15)
・当社は日銀短観(6月調査)で大企業製造業の業況判断DIが+3へと3月調査から3pt悪化し、「先行
き」は±0まで水準を切り下げると予想。同じく大企業非製造業のDIは「最近」が+17へと前回対比5
ptの悪化、「先行き」は+12へと水準を切り下げると予想している。原油安のプラス効果が漸減する下、
精彩を欠く国内消費、円高、海外経済の減速が逆風になったとみられる。
・その他の注目点としては、①雇用人員判断DI、生産・営業用設備判断DI、②販売価格判断DIおよび
企業のインフレ予想(2日目発表)。というのも、2013年4月のQQE発動以降、日銀は2%目標達成の
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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ロジックとして「需給ギャップ縮小+予想インフレ率上昇」を繰り返してきたわけだが、その動向が2%
目標達成に疑問を投げかけているからだ。最近になって日銀がこれを認めているから、今回調査では特に
注目が集まる。
・21日に発表された4月会合の議事録には「委員は、本年1月の見通しと比べて、2016 年度の物価見通しが
下振れることになるが、その主な理由が、これまでの修正と異なり、原油価格の想定の変更というよりは、
成長率の下振れや賃金上昇率の下振れによるものである」との記載があった。成長率下振れ、賃金上昇率
の下振れは、共に需給ギャップ縮小が不十分であることを意味しており、それが議事要旨に明記されたこ
とは、問題の大きさを物語っている。審議委員の懸念事項として強く意識されているならば、今回の短観
で①が悪化(需給ギャップ拡大方向に変化)した場合、日銀が動く可能性が高まると考えるのが自然だろ
う。同様の観点から②についても、その下方シフトは日銀を動かす材料となる。
・もっとも、7月会合で日銀が動くか否かを判断する際には、FEDの動向の方が重要なファクターだろう。
これまで何度も当レポートで指摘してきたとおり、日銀は残り少ない弾を無駄にしないよう、最も効果的
と思われるタイミング、つまりFEDが利上げを決断し、金融市場でドル高の風が吹く時を見計らってい
るはずだ。実際、議事録には大方の委員の発言として「国際金融市場において不安定な動きが続いており、
そうしたもとでは、前向きな変化が現れにくい」との記載もあった。金融市場がリスクオフ下にあった場
合、日銀は追加緩和に踏み切らないだろう。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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