Market Flash 温度差広がり 自由度下がる 2017年2月24日(金) 第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 藤代 宏一 TEL 03-5221-4523 【海外経済指標他】 ・新規失業保険申請件数は 24.4 万件と前週から 0.6 万件増加したものの、引き続き歴史的低水準に留まった。 4週移動平均は 24.1 万件へと一段と減少し、1973 年以来の低水準を記録。前年比でみた減少ペースは、 雇用統計NFPの 20 万人増に整合するレベルまで戻している。労働市場の量的回復はここへ来て再加速し ている。 新規失業保険申請件数 (千件) (前年比、%) 雇用者数・新規失業保険申請件数 (前年比、%) 6 -50 400 失業保険(右) -30 4 370 -10 2 340 NFP 310 0 280 -2 250 -4 10 30 220 12 13 14 15 16 50 70 -6 17 90 80 85 90 95 00 05 10 (備考)Thomson Reutersにより作成 3ヶ月平均の前年比 (備考)Thomson Reutersにより作成。太線:4週移動平均 15 ・FHFA住宅価格指数は前月比+0.4%と、概ね市場予想(+0.5%)どおりのペースで上昇。前年比では +6.2%と緩やかな加速基調にある。 15 FHFA住宅価格指数 (%) FHFA住宅価格指数 250 3ヶ月前比年率 10 230 5 210 0 前年比 -5 190 -10 170 -15 07 09 11 13 15 05 17 07 09 11 13 15 17 (備考)Thomson Reutersにより作成 (備考)Thomson Reutersにより作成 【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】 ・前日の米国株は小幅ながら続伸。NYダウは10日連続で最高値更新。新規の材料に乏しいなか、好調な企 業業績を後ろ盾に買い優勢。ここもとのUSD安も好感されている。WTI原油は54.45(+0.86㌦)で引け。 ・前日のG10 通貨はGBPが最強でそれにJPYが続いた。USD/JPYは米国時間早朝の米金利低下に足並みを揃え て下落、113を割れた。EUR/USDは1.06に水準を切り上げた。こうしたなか新興国通貨の堅調さは続き、JPM エマージング通貨インデックスは4日続伸。大統領選後の下落の大部分を取り戻している。 ・前日の米10年金利は2.372%(▲4.1bp)で引け。ムニューシン財務長官の発言を受けて、法人税減税を柱 とする大型減税の実現が後ろ倒しされるとの見方が生じたことが背景。欧州債市場(10年)は総じてみれ 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 1 ば堅調。ドイツ(0.233%、▲4.6bp)、フランス(0.985%、▲3.1bp)、スペイン(1.686%、▲0.7bp) が金利低下となった反面、イタリア(2.225%、+3.1bp)が小幅に金利上昇。 【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】 ・日本株は、USD/JPY下落が重荷となり、米株上昇に追随できず、安く寄り付いた(10:00)。 <#ECB #ドイツと周縁国 #温度差 > ・ドイツのメルケル首相は20日、ECBの金融政策について「ドイツよりもポルトガルやスロベニア、スロ バキアなどに合わせて策定されている。もしドイツマルクが存続していれば、現在のユーロ相場と異なっ た水準にあったのは間違いない」との見方を示し、「ECBの独立した金融政策に関わる問題で、独首相 が影響を及ぼすことはできない」とした。現状のドイツ経済にとって、ECBの強力な金融緩和が馴染ま なくなりつつあるとの認識だろう。また、行き過ぎた金融緩和が過剰投資、すなわちバブルを招くとの含 意があったのかもしれない。 ・ここでドイツのCPIに目を向けると、総合インフレ率が2%近傍まで伸びを高めている(3ヶ月前比年 率は+2.4%)。直近の数値はエネルギー価格反発、ベースエフェクト、その他幾つかの特殊要因等によっ て誇張されているとはいえ、さすがにこうした状況下での「マイナス金利+量的緩和」は正当化されにく い。ユーロ圏全体でみても、最近はコア物価が僅かながら加速基調にあり、このことは失業率が低下する なかで賃金上昇圧力が芽生えつつあることを示唆しているだろう。実際、労働集約的なサービス物価は緩 やかながら加速に向かっている。 (%) 4 (前年比、%) 6 ドイツ CPI ユーロ圏CPI 3ヶ月前比年率 4 3 2 2 コア 1 0 0 -2 前年比 総合 -4 -1 07 09 11 (備考)Thomson Reutersにより作成 (前年比、%) 5 13 15 10 12 14 (備考)Thomson Reutersにより作成 17 ユーロ圏CPI (前年比、%) 3 16 ユーロ圏CPI 4 サービス 2 3 コア 2 1 1 0 コア財 0 総合 -1 08 10 12 (備考)Thomson Reutersにより作成 14 -1 08 10 12 (備考)Thomson Reutersにより作成 16 14 16 ・今後、年後半にかけてドイツを中心にユーロ圏のコア物価が上昇していくようだと、ECBの金融政策は その自由度が一層低下することが見込まれる。ECBの資産購入(月あたり600億ユーロを17年12月)を巡 っては市場関係者の多くが、段階的縮小を伴った延長をメインシナリオにしているとみられるが、ドイツ の反対次第では、思いのほか早期に量的緩和が打ち切られるとの見方が生じても不思議ではない。資産購 入終了までの残り時間が半年を切る頃には、そうした懸念が表面化しそうだ。 ・そうなれば、G4中銀(FED、ECB、BOJ、BOE)の緩和度合いは一段と縮小することになる。 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 2 ここ数年、FEDの引き締めによる過剰流動性縮小(観測)を、日銀とECBが補ってきた経緯を踏まえ ると、ECBの緩和縮小(停止)がリスク性資産に打撃を与える可能性は否定できない。FEDのQE3 発動前後にあたる2012年から13年頃にかけて、FEDのバランスシート規模で米国株上昇を説明するチャ ートが流行したことを踏まえると、中銀のバランスシート規模を重視する向きが多く存在するのは事実。 FEDのバランスシート縮小に向けた議論が具体化するなか、ECBの量的緩和縮小にも注意を払いたい (本稿では触れなかったが日銀、BOEも例外ではない)。 S&P500 (pt) FEDバランスシート 2500 FED (兆㌦) 5 B/S(右) 2000 4 S&P500 1500 3 1000 2 500 1 09 11 13 15 17 (備考)Bloombergにより作成 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 3
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