課題①

道徳教育(他学部)
7月5日(金)4限
第十一回「子どもの道徳的な学びについて考える⑤」
レポート課題(仮)
課題①(A とBから選択、両方選択も可、どちらの課題を選択したかを
明記のこと、2500字以上、)
A
授業で扱ったトピックについて、三つ以上に触れながら今期の授業の中
で学んだこと、自分の考えが変わったと感じたこと、深く考えたことな
どを振り返り、自由に記述してください。可能であれば、自分の人生経
験や道徳観、教育観とも関連づけて下さい。
B
「道徳」もしくは「教育」、もしくは「道徳教育」というキーワードに
関係すると思われる本(授業中に紹介した参考文献も可)を一冊以上読
み、その内容に関連して考えたことを自由に記述してください。
課題②(分量は自由、書いてくれれば全員に一律に点数をつけます)
講師の半期間の授業の内容や進め方について、感想やアドバイスがあれ
ば述べて下さい。もちろん批判も歓迎します。
※ 課題①を40点、課題②を5点として採点する。(計45点)
前回の感想より①
• 正義の倫理は合理的な解決方法を目指すものであり、ケアの倫理はどん
な解決方法にも限界があるので、解決されないままの葛藤を説明すると
のことである。正義の倫理に沿って考えれば問題の解決は早いが、人間
関係などが考慮されない。ケアの倫理に沿って考えればそればかりに囚
われ、そもそも解決というものがない。どちらの倫理も大切だが、状況
や問題の大きさなどでどちらを優先させるかなどがある。(園芸学部)
• コールバーグさんの研究を踏まえてギリガンさんはケアの倫理をつくっ
たと思うので、人としての深みがある倫理だと思いました。ケアの倫理
の発達②でキャシーさんの言葉を聞いて、なんだか悲しくなってしまい
ました。周りに頼れる人はいなかったのでしょうか?19歳だから妊娠
についての知識も少なく、どうすればよいのかわからないという気持ち
が伝わってきました。海外にも相談する期間はあったと思いますが、周
りの大人がそこまで導いてあげてほしいと思いました。(科目等履修
生)
• 動物実験について、“人の命を守る”ために“動物を実験に使う”ことにかん
して、近年様々なところで議論がなされてきましたが、答えは出ていま
せん。しかし、私はこれを“答えがない”のではなく、“複数の答えがある”
と考えています。個々人の判断を議論し、すり合わせていくことに意味
があると思います。私は道徳的問題に正解は必要ないと思います。と同
時に、それは議論の必要性がないということではなく、この問題を考え
ること自体に意味があるのだと最近考えるようになりました。(理学
部)
前回の感想より②
• 正義の倫理は素早い判断が、ケアの倫理は人を傷つけにくい判断がで
きると思った。日常の大事な判断にはケアの倫理があっていると感じ
た。何より大事だと思ったのは、自分がある行為を行った時に、周り
の人がどう思うか、どうなるのかを気に留めることだと思った。(園
芸学部)
• ケアの倫理では道徳が人間関係の中で常に変動するものだということ
を理解しているからこそ、定義することの限界を認めてしまっている
ように感じる。もちろん、人間の道徳心を完全に説明することは難し
いことであるだろうが、このケアの倫理の第三段階の帰結はあまりに
抽象的すぎて定義とは言えないと思う。正義の倫理の帰結を指示する
わけではないが、正義の倫理の合理的と言われる判断基準を用いてい
るように見えても、実際は人間関係の中で生まれる精緻な真理も組み
込んだ判断を下しているはずである。すなわち、二つの倫理の重なっ
た部分に一応の納得できる帰結があるのではないか。(法経学部 経
済学科)
• 正義の倫理だと正義を振りかざして自分の意見を押し通したり、他人
からの批判から身を守るイメージがあります。前提として人間の自立
が挙げられていますが、その代わり正義を介してつながっているよう
な気がします。乱暴な言い方をすると、大義名分によって国や世界を
操ることすらできるのでしょう。(理学部)
前回の感想より③
• 正義とは「正しいこと」ではなく、その人が「正しいと思っているこ
と」なので、絶対的な定義をつけることはできないと思われます。ハ
インツのジレンマにしてもハインツにとっては薬を盗んで妻を助ける
ことが正義、薬屋にとってはお金儲けが正義なので、どちらが一概に
間違っているとは言えません。「薬屋が悪い」と断言する人も、例え
ば薬屋の金儲けする理由が「難病の娘を助けるため」だったりすれば
簡単に答えが出せなくなります。つまり正義は状況によって簡単に移
ろい、時に全く意味をなさなくなるものだと考えます。一方(自分)
の正義を通せば、もう一方(他人)の正義は立たないのではないで
しょうか。(理学部 地球科学科)
• ケアの倫理は関係しているほぼすべての思いを大切にする倫理観で、
正義の倫理は第三者から見た理詰めの倫理観であると考えました。前
回の話を例にとると、ケアの倫理は夫の考えだけではなく、妻の考え、
薬屋の考えにも目を向けて何が善いのかを判断するのに対して、正義
の倫理は個々人の考えを一旦置いておいて、どうするのが「正しいの
か」ということで判断するものであり、それは「普遍的な正しさ」に
支えられているものだと思います。今日のテーマの「ケアの倫理」は
発達段階が上がるにつれて抽象的で難しい考えになり、かつその考え
方からどちらを判断するか決定しづらくなるような倫理観だと思いま
した。なので、私には自分が苦しくなるだけの考えのようで、理解し
がたいものでした。(理学部 数学科)
前回の感想より④
• 死にゆく人の思考はおおよそ2パターンだと思う。①生にすがる、②死
を受け入れる。ハインツの奥さんが①のタイプだったなら薬を盗むとい
う判断は最悪ではないと思う。しかし、②だった場合には最悪である。
最善の行動は環境によって異なるはずであるから(それが絶対的な正義
だとしても)避けるべき選択も存在するはずである。私は正義志向に凝
り固まっていると思うが、母が大分ケア志向なので話がかみ合わないの
ではないかと今回気付いた。(理学部 数学情報数理学科)
• 私の中には「自分が身ごもった子は私の子であり、その命を殺すことは
できない」という考えがある。それは子を育てる準備が整っている、
パートナーも身ごもることを望んでいるなどの条件下では喜ぶべきこと
であるが、今現在、将来の夢を叶えるために大学進学をして悩んだ時に
は上手く対処できないこともあるこの状況で、予想もしていない妊娠を
した場合には最初に挙げた私の考えは自分を苦しめ、考えを貫き通すこ
とで家族もパートナーも苦しめることになり、結果として生まれてくる
子を苦しめることになると思うと、混乱し、何も決定できない。(文学
部 日本文化学科)
• ケアの倫理は自分や相手の考え方に大きく影響を受けると思います。同
じ行動をとったとしても、ある人にとっては“自分のケア”であり、他の
人にとっては“他人のケア”であるかもしれません。また、自分が“他人の
ケア”と思っても、相手はそれを望んでいない可能性もあるので、一概
には言えないとても難しい問題であると思いました。(園芸学部 緑地
環境学科)
前回の感想より⑤
• “自分を犠牲にしなければ他人を大事にすることができない”というケア
の倫理について、そのような行動をとれる人は少ないのではないかと
思う。大部分の人が自分だけをケアするように動いていると思う。少
し内容がずれるかもしれないが、中学のとき、クラスの一人の子に机
を全て運ばせるといういじめのような事態があったのだが、誰も手を
貸そうとしなかった。私もその子が悪くないし、理不尽なことをさせ
られていると思うものの、他人の目を気にして(自分が後で手を貸し
たことで非難を受けるということを恐れた)自分を犠牲にしてまで他
人をケアする道を選ばず、自分をケアする考えに従っていた。(今振
り返ってみると自分がそのような決断をしていたと分かるのだが、当
時は何も考えずにそのような行動をとっていたのだと思う)(文学部
日本文化学科)
• 何を問題にするかにもよると思うが、ケアの倫理には「他人にどう見
られたいか」という考えが潜んでいるのではないかと思った。(文学
部)
• 自分と他人の両方をケアしようと思うことが第三段階であり、結論と
して実際に行った行動というのはそう思いつつも、結局はどちらかを
取った(優先した)結果なのだろうと思いました。「他人を思いや
る」というフレーズはよく聞きますし、今回の授業でも出てきました
が、結局それは他人を思いやっているという自己満足で終わるもので
はないかと思います。自分は他人には決してなれませんから。(理学
部 生物学科)
前回の感想より⑥
•
•
•
「人は他人とかかわって生きている限りにおいてのみ自分が他人から独立
した存在であるということを知り、他人と自分を区別する限りにおいての
み真の人間関係を経験することができる」という部分に共感しました。現
代では他人とかかわらずに生きるということが極めて困難になっているた
め、特に前者についての認識が薄れてきているように思います。ケアの倫
理の発達は①、②に比べて、③については実現すること自体が不可能な場
合もあると思う。根本的に①、②と違うのは、「自分か他人か」という選
択を行わないことだと思う。(理学部 数学情報数理学科)
正義の倫理のように“これが解決法だ”という考え方だけでは問題、ジレン
マは解決されないだろう。かといってケアの倫理のように多種多様な考え
方が深まっていくプロセスも必要ではあるが、解決されないままの葛藤は
人を追い込む。どちらかではなく、両方の倫理を併せて考え、正義の倫理
で考えた方法に頼らず、ケアの倫理によって考えを深める。最終的に解決
法は見つからないかもしれないが、妥協岸が出る可能性もあるし、何より
その心理的な葛藤は人の道徳観の発達、視野の拡大の助けになるのではな
いかと私は思う。(園芸学部 園芸学科)
細分化するのでは分からないということに気付き始めている。“世界は分け
てもわからない”ということ。もっと統合的に考えられる力を持ちたい。命
と魂は別。命に善いことが魂にも善いとは限らない。どちらかを人間だけ
は選ばなくてはならない。目に見えないものを見ようとして悩み続けるし
かない。(文学部 日本文化学科)
前回の感想より⑦
• ケアの倫理という考え方で厄介なのは、自分の感情や他人の感情を考
えるのではなく、自分の中にある正義感に従った行動をどう考えるか
だと思う。当事者が全員傷ついても正義に従うべきだと考えて自己犠
牲的な行動をとることもあるだろう。正義の倫理の考え方からすれば
正義を貫き通すことで他者の正義とかち合って不利益をもたらすこと
はありえないはずで、他者に狂信的正義のレッテルを貼るしかできな
くなる。重要なのは倫理観に従うことも含めて、自分のケアと考える
ことで、正義を感情を上下させる一要素に次元を下げることだと思う。
(科目等履修生)
• 実際に生きていく上で失敗や不都合があることも、その時だけを考え
ればマイナスかもしれないが、人生というタイムスパンで見れば決し
てマイナスではないかもしれないということである。そうだとすれば、
コールバーグもギリガンも限られた時間の中でしか道徳を論じていな
いように感じた。(文学部 史学科)
• ケアの倫理の例として延命治療などの終末期医療も当てはまるのでは
ないかと思った。自分としては延命治療が必要な家族に治療を受けさ
せて少しでも長く生きてほしいと思う一方、治療を受ける家族のこと
を考えると、一生寝たきりになることがその患者のためではない、少
しでも早く楽にしてあげたいと思う。実際、祖父母に対してその判断
を下した父母は、いつも延命治療はやらなくていいと言ってくること
をこの授業を受けて思い出した。大切な人が話題にあがるとき、私は
いつも正義ではなく、ケアの倫理を使うと思う。(文学部)
前回の感想より⑧
• 私が体験したケアの倫理。おつりが本来200円のはずが、2000
円返ってきた。私は少し迷った。2000円もらえるのは嬉しかった。
しかし、後のことを想像したら、」私は罪悪感にさいなまれるに違い
ないと思った。店にとっても採算が合わなくては困るだろうと思った
私はおつりの間違いを言って返した。その時はお店のためと思ってい
たけれど、後から考えれば自分も気分の良いことをしたという満足感
があった。自分のためにでもあったのだ。これはケアの倫理だと考え
た。ボランティアにおいても、ボランティアされる人のためになるこ
とはもちろん、自分が他人の役に立っているという実感も得られる。
これも相互依存的だ。(文学部)
• 私が直面した道徳的ジレンマについて。暑い夏の日のことでした。私
は炎天下の中、家に向かって一時間近く歩いていました。のどはもう
カラカラでしたが、お金を持っていなかったので、飲み物を買うこと
もできません。そんなとき、目の前に黒い何かが落ちていることに気
付きました。財布です。手にとって中をそうっと見てみると、千円札
が数枚と免許証が入っていました。私の両親が揺らぎましたが、神か
らのプレゼントだと思い、そのお金でリンゴジュースを買ってしまい
ました。何よりまず自分のケアをしてしまったのです。しかし、さす
がにこのままでは気分が晴れません、元気が回復した私は、免許証に
書かれている住所を見て、その家のポストにそっと財布を入れておき
ました。相手をケアすることもできたのかなと思いました。(文学
部)
始めに大事なお願い
• 今回は、子どもの道徳観を、実践事例をもとに考え
たいと思います。
• この授業で取り扱う実践事例は、全て僕がかかわっ
た学校関係者の厚意によってこの授業で紹介するこ
とを承諾していただいています。
• 基本的に学校名がわからないように紹介しますが、
生の記録である以上、個人情報です。
• 従って、ツイッター、Facebook、ブログ、
その他、不特定多数の人が見る可能性のある媒体に
授業の内容について書くことは絶対にしないでくだ
さい。この授業のブログに書き込む場合には、個人
の名前は出さず、Aさん、B君のように頭文字で表
してください。
今日の事例について
• 神奈川県のある小学校で行われた5年生の道徳の授業です。
• 授業の中で自習の時間に起きた子ども同士の喧嘩について
話し合おうとしています。
• 今回と次回の授業は色んな意味で難しく、上手くいってい
るとは言いにくいものです。
• だからこそ、できる限り授業で起きている出来事に出会う
ようにしてください。子どもたちの背景を含め、授業で起
きていることはとても複雑で、簡単に言い尽くすことはで
きません。「この授業はこうだった」という答えを出すよ
り、その複雑さを実感してもらいたいと思っています。
• 「授業が悪い」、「子どもが悪い」、「教師が悪い」など、
価値的な視点は、ここでの複雑な出来事を理解を妨げる要
因になりやすいので、一度差し控えて授業を見る努力をし
てみて下さい。
• 発現記録の中の子どもの名前は全て仮名です。
グループワーク
• テーマは決めません。授業を見て考えたことを
自由に話し合ってみてください。
• できるだけ自分が見た授業の事実に基づいて話
をしてみて下さい。
感想シート
• 今日の授業の中で考えたこと、疑問や質問、グループ
ワークの中で話し合ったこと、授業に対する要望、なん
でもかまいません。
• 必ず、名前、所属、学籍番号を書いて出してください。
(所属は空きスペースに分かるように書いてください)
• 授業中に伝えきれなかった質問、意見はメール、もしく
はブログを利用してください。
[email protected]
http://moral-education.seesaa.net/
参考文献(前回分)
• Carol Gilligan In a different voice.
Havard University Press(邦訳版は絶版。図書館などに
あるかもしれません。『もうひとつの声』で検索してみ
て下さい)
• ネル・ノディングス(佐藤学 監訳)
『学校におけるケアの挑戦』 ゆみる出版
• ジェーン・ローランド・マーティン(生田久美子 監
訳) 『スクールホーム ケアする学校』 東京大学出
版会