文部科学大臣 馳 浩 様 復興に関する要望書 平成 28 年 6 月 20 日 福島県富岡町長 宮本皓一 福島県富岡町議会議長 塚野芳美 要 望 書 当町においては、平成 27 年6月に策定した富岡町災害復興計画 (第 二次)において、「早ければ平成 29 年4月」という帰還開始目標時 期を設定し、町内における生活環境の整備をはじめとした復旧・復 興に全力を挙げて取り組んでおります。 この間、町民との対話を通して、 「帰還する・しない」に関わらず、 古里の着実な再生が多くの町民の共通の願いであることを実感し、 帰還開始目標時期まで残すところ 10 ヶ月余りとなった中、「ふるさ と富岡」の再生に本格的に歩み出すために、「平成 29 年4月の帰還 開始をより確かなものしていく」という町の姿勢を町民に対して伝 えたところです。 しかし、この実現には未だ多くの課題が山積しており、帰還開始 時期を見通すことが困難な状況にあります。早々に解決しなければ いけない放射線量の低減や町民の生活再建のほか、帰還後の行政サ ービスの充実など、帰還開始はもとより、その後の復興・創生を見 据えた課題解決に、国・県・町が共に手を取って取り組む必要があ るものと考えております。 つきましては、まさに正念場を迎えている当町の実情を真に認識 され、町の状況・状態に応じた柔軟な対応と政府方針に沿った確実 な復旧・復興施策を講じ、 「ふるさと富岡」の本格復興と町民の生活 再建を実現するため、次の事項を強く要望いたします。 記 第1 被害の実態に即した速やかな賠償と柔軟な対応 第2 事業再開に係る支援と営業損害賠償の柔軟化 第3 農業に係る損害賠償方針の早急な提示 第4 国際共同研究棟を核とした産業集積 第1 被害の実態に即した速やかな賠償と柔軟な対応 ○避難指示区域の見直しは、町の中心市街地の一つである夜の森地 域の人口密集地を分断する形で、帰還困難区域と居住制限区域の 2つの区域に分け、町全体を3区域に分断している。 ○避難指示区域の違いにより異なる賠償内容は、被害の実態とそぐ わず、区域の違いによる格差への不満は深刻であり、分断と格差 は平成29年4月の避難指示解除の足かせとなっている。 ○こうした中で、当町と国との区域再編の経過を踏まえ、避難指示 解除見込時期を既に経過した現在、発災から5年経過した場合の 残り6分の1の追加的な財物賠償を、早期に実現するよう強く要 望する。 ○また、避難指示解除以降の一定期間を賠償継続とする「相当期間」 について、原賠審の中間指針第四次追補では、 「避難指示解除の状 況が異なるなど、状況に変更が生じた場合は、実際の状況を勘案 して柔軟に判断していくことが適当である」としている。これを 踏まえ、長期避難による環境変化や、帰還困難区域が大きく占め る状況下での帰還という、当町の特殊な被害状況を理解し、実態 に即し柔軟に判断するよう要望する。 第2 事業再開に係る支援と営業損害賠償の柔軟化 ○政府方針では、平成 27・28 年度の2年間において集中的に事業・ 生業の再建につながる自立支援施策を展開し、東京電力が営業損 害・風評被害への賠償を適切に対応するよう指導を行うこととし ている。 ○当町は復興の緒に就いたばかりであり、商工業者の商圏が回復す るには多くの時間を要し、わずか2年間で自立・再建することは 非常に厳しい環境にある。 ○よって、集中的自立支援期間後についても、個別の事情を踏まえ、 十分な支援の継続と実態に即した賠償がなされるよう要望する。 第3 農業に係る損害賠償方針の早急な提示 ○農地除染に伴う、5~10cm の表土剥ぎ取りと山砂への入れ替えに より、農地の原状回復は長期にわたり、早期の営農再開は難しい ため、長期的な環境再生を目指す必要がある。 ○また、依然として風評被害が根強く残っている状況である。 ○よって、そういった状況を踏まえた、平成 28 年 12 月以降の賠償 の考え方を早急に示すことを要望する。 第4 国際共同研究棟を核とした産業集積 ○原子力発電所事故に伴う放射能汚染、全町民の長期避難等により、 当町の基幹産業であった農業をはじめ、原発被災地で息づいてい た各種産業の再生は極めて困難な状況にある。 ○国においては、 「イノベーション・コースト構想」により原発被災 地の復興に寄与する新たな産業創出や集積を推進する中、昨年8 月には、当町王塚地区に「廃炉国際共同研究センター国際共同研 究棟」の立地を決定いただき、当町の再生と発展の大きな光とし て当該施設に寄せる期待が非常に大きい。 ○当町は、当該施設を核として、 「人々の交流の地」の復活を目指し ているとともに、新たな産業の創出と集積を進めていくこととし ていることから、国は、 「国際共同研究棟」の着実な運営とさらな る充実を図るとともに、これらに続く「イノベーション・コース ト構想」の早期具現化に取り組むよう要望する。
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