公明党 代表 山口 那津男 様 復興に関する要望書 平成 28 年 10 月 10 日 福島県富岡町長 宮本皓一 要 望 書 当町においては、平成 27 年6月に策定した富岡町災害復興計画 (第 二次)において、「早ければ平成 29 年4月」という帰還開始目標時 期を設定し、町内における生活環境の整備をはじめとした復旧・復 興に全力を挙げて取り組んでおります。 この間、町民との対話を通して、 「帰還する・しない」に関わらず、 古里の着実な再生が多くの町民の共通の願いであることを実感し、 帰還開始目標時期まで残すところ6ヶ月余りとなった中、 「ふるさと 富岡」の再生に本格的に歩み出すために、 「平成 29 年4月の帰還開 始をより確かなものしていく」という町の姿勢を町民に対して示し ております。 しかし、未だ多くの課題が山積しており、帰還開始時期を明らか にすることが現段階では難しい状況にあり、早々に解決しなければ いけない放射線量の低減や町民の生活再建のほか、帰還後の行政サ ービスの充実など、帰還開始はもとより、その後の復興・創生を見 据えた課題解決に、国・県・町が共に手を取って取り組む必要があ るものと考えております。 つきましては、まさに正念場を迎えている当町の実情を真に認識 され、町の状況・状態に応じた柔軟な対応と確実な復旧・復興施策 を講じ、 「ふるさと富岡」の本格復興と町民の生活再建を実現するた め、次の事項を強く要望いたします。 記 第1 平成 29 年4月の帰還開始と長期目標を見据えた徹底除染 第2 帰還困難区域の再生 第3 被害の実態に即した速やかな賠償と柔軟な対応 第4 事業再開に係る支援と営業損害賠償の柔軟化 第5 農業に係る損害賠償方針の早急な提示 第6 国際共同研究棟を核とした産業集積 第7 復興・創生を支える確実な国の財政支援 第1 平成 29 年4月の帰還開始と長期目標を見据えた徹底除染 ○帰還困難区域を有し、総体的に放射線量が高い当町において、放 射線量が十分に低減されない現状は町民が最も不安を抱える部分 であり、効果的かつ徹底した除染による町民不安の払拭は、帰還 に向けて克服すべき最も重要な課題である。 ○当町における除染は、宅地等の生活空間が平成 27 年度までに終了 し、農地や道路、それら近隣の森林も今年度中に終了が見込まれ るなど一定の進捗をみせているものの、町内には未だ局所的に線 量が高い個所が数多く残っており、平成 29 年4月の帰還開始に向 けては、実施いただいているフォローアップ除染に懸ける期待が とても大きい。 ○よって、フォローアップ除染により確実に町内の放射線量が低減 されるよう、さらに除染体制の強化を図るとともに、帰還困難区 域に近い住宅地及び帰還を希望する住宅地に対するきめ細かな対 応や住宅周りの森林に対する表土剥ぎ取り等の丁寧な対応など、 より実効性のある確実な除染を要望する。 ○また、帰還開始は本格復興の第一歩であり、当町が真の復興を果 たすためには、その後の生活環境整備がより重要であることから、 国が掲げる長期目標の追加被ばく線量年間1ミリシーベルトを実 現されるよう、町民の要望に応じた柔軟かつ継続的なフォローア ップ除染を求めるとともに、生活空間の一部ともいえる里山除染 の着実な実施を要望する。 第2 帰還困難区域の再生 ○当町の帰還困難区域は全町の約 15%の面積と約 30%の人口を有し ており、総延長約2㎞の全国有数の桜並木や日本一に輝いた JR 常 磐線夜ノ森駅構内のつつじ、水戸・仙台間を結んだ古道“陸前浜 街道”沿線の松並木、約 200 年前に植栽されたやぶ椿の群生など 数々の重要な観光資源があり、四季を通じて多くの観光客が地域 を訪れていた観光拠点であるとともに、子どもからお年寄りまで が集い心通わす“心のふるさと”で、帰還困難区域は町全体の復 興のためには決して欠くことのできない地域である。 ○先般、たとえ長い年月を要するとしても復興再生に責任を持って 取り組む国の強い決意が示されたことには大きな期待をしている が、平成 29 年4月の帰還開始を確実なものとするためは、帰還困 難区域全体の再生に向けた道のりをより明確にすることが求めら れる。 ○よって、帰還困難区域の再生に向けた政府方針の迅速かつ着実な 実行はもとより、住民が安全・安心に一時帰宅できる環境整備な ど、ふるさとの帰還意欲の維持、醸成につながるような柔軟な対 応と当該区域の将来が展望できるような中長期的な施策の確実な 検討を要望する。 第3 被害の実態に即した速やかな賠償と柔軟な対応 ○避難指示区域の見直しは、町の中心市街地の一つである夜の森地 域の人口密集地を分断する形で、帰還困難区域と居住制限区域の 2つの区域に分け、町全体を3区域に分断している。 ○避難指示区域の違いにより異なる賠償内容は、被害の実態とそぐ わず、区域の違いによる格差への不満は深刻であり、分断と格差 は平成29年4月の避難指示解除の足かせとなっている。 ○こうした中で、当町と国との区域再編の経過を踏まえ、避難指示 解除見込時期を既に経過した現在、発災から5年経過した場合の 残り6分の1の追加的な財物賠償を、早期に実現するよう強く要 望する。 ○また、避難指示解除以降の一定期間を賠償継続とする「相当期間」 について、原賠審の中間指針第四次追補では、 「避難指示解除の状 況が異なるなど、状況に変更が生じた場合は、実際の状況を勘案 して柔軟に判断していくことが適当である」としている。これを 踏まえ、長期避難による環境変化や、帰還困難区域が大きく占め る状況下での帰還という、当町の特殊な被害状況を理解し、実態 に即し柔軟に判断するよう要望する。 第4 事業再開に係る支援と営業損害賠償の柔軟化 ○政府方針では、平成 27・28 年度の2年間において集中的に事業・ 生業の再建につながる自立支援施策を展開し、東京電力が営業損 害・風評被害への賠償を適切に対応するよう指導を行うこととし ている。 ○当町は復興の緒に就いたばかりであり、商工業者の商圏が回復す るには多くの時間を要し、わずか2年間で自立・再建することは 非常に厳しい環境にある。 ○よって、集中的自立支援期間後についても、個別の事情を踏まえ、 十分な支援の継続と実態に即した賠償がなされるよう要望する。 第5 農業に係る損害賠償方針の早急な提示 ○農地除染に伴う表土剥ぎ取りと山砂への入れ替えにより、農地の 原状回復は長期にわたり、早期の営農再開は難しいため、長期的 な環境再生を目指す必要がある。 ○また、依然として風評被害が根強く残っている状況である。 ○よって、間近に迫る平成 28 年 12 月以降の賠償については、これ らの状況を踏まえ早急に示すことを要望する。 第6 国際共同研究棟を核とした産業集積 ○原子力発電所事故に伴う放射能汚染、全町民の長期避難等により、 当町の基幹産業であった農業をはじめ、原発被災地で息づいてい た各種産業の再生は極めて困難な状況にある。 ○国においては、 「イノベーション・コースト構想」により原発被災 地の復興に寄与する新たな産業創出や集積を推進する中、昨年8 月には、当町王塚地区に「廃炉国際共同研究センター国際共同研 究棟」の立地を決定いただき、当町の再生と発展の大きな光とし て当該施設に寄せる期待が非常に大きい。 ○当町は、当該施設を核として、 「人々の交流の地」の復活を目指し ているとともに、新たな産業の創出と集積を進めていくこととし ていることから、国は、 「国際共同研究棟」の着実な運営とさらな る充実を図るとともに、これらに続く「イノベーション・コース ト構想」の早期具現化に取り組むよう要望する。 第7 復興・創生を支える確実な国の財政支援 ○帰還開始を控えた当町にとっては、これからが本当の意味での復 興集中期間であり、国の財政支援が当町の再生・復興に大きな影 響を及ぼすものと考えている。 ○当町に限らず、原子力災害により避難を余儀なくされた自治体に おいては、帰還開始後の人口回復と自主財源の確保は長期に及ぶ 課題であり、財政逼迫による町内の環境整備や行政サービスの低 下は、町民の帰還意欲を削ぎ、さらなる人口減少をもたらす悪循 環となることが懸念される。 ○特に帰還開始後しばらくは、帰還した町民に限らず、様々な事情 により町外で生活せざるを得ない町民が抱えるとまどいや不安は 想像に耐えがたく、ふるさとへの思いをつなぎ留め、将来的な帰 還へと繋げていくためには、これらを払拭するための多様な対応 を求められる。 ○よって、これら継続的かつ多様な行政サービスへの対応が求めら れる被災自治体の特殊事情を十分に認識され、帰還を見据えた既 存復興予算の継続・拡充はもとより、公共・公設施設の再生、維 持運営に係る経費など、帰還後の長期的な町民サポート体制を構 築・維持するために必要となる復興予算の確保を強く要望する。
© Copyright 2024 ExpyDoc