CLOSEUP REPORT ファンドマネージャーの視点

2016年6⽉20⽇
⽇本株ファンドマネージャーの視点
『中⾷が変える⾷⽣活と企業体質』
※このレポートでは、⽇本株ファンドマネージャーが注⽬しているトピックなどを毎週お届けします。
最近、⼩型株の企業訪問をしていると「中⾷(なかしょく)」という⾔葉を毎⽇⽿にします。コンビニエンスストア(以下
コンビニ)、スーパーは⾔わずもがな、惣菜、調味料、漬物専業、⾹⾟料メーカー、さらには厨房機器の機械メーカーと、
内需にかかわる企業にとって中⾷対応は極めて重要なものとなっています。ところで中⾷とはどのようなものでしょうか。
「⾷事」の形態を⼤まかに分けると、以下の表になります。
内⾷
中⾷
外⾷
⾷事の場所
家庭
様々な場所
レストランなど
第三者のサービス提供
無し
無し
有り
⾃⾝または家族
専業者または⼯場
シェフ
原材料、⽔道光熱費、調理の
原材料、⽔道光熱費、調理の⼈
⼈件費、販売費(配送費等)
件費、給仕の⼈件費、販促費
調理の主体
コスト(変動費)
形態の拡⼤期
原材料、⽔道光熱費
有史以来
1990年代以降
1970年代以降
1970年代以降、⼥性の社会進出や晩婚化とともに、外⾷は⽇本⼈の⾷⽣活の⼀部となり、外⾷産業が成⻑するとともに
内⾷率が減少しました。これを企業収益の観点からみると、外⾷は⾷材に調理者や給仕する⼈員のサービスが付加されてい
るため、内需の拡⼤に寄与してきました。外⾷率の向上はGDPの拡⼤に寄与しています。特に1980年代からバブル崩壊
まで、外⾷産業は多くの企業が成⻑し隆盛を極めました。
外⾷産業の成⻑時代を築いてきたのが、ファミリーレストランに代表される外⾷チェーンです。外⾷チェーンは多様なメ
ニューをリーズナブルな値段で消費者に提供することで成⻑してきました。しかし、1990年代に⼊るとこのような画⼀
的なメニューやフォーマットに限界が⾒え始め、⾷材の質や新鮮さなど⾷の提供以上の付加価値が求められるようになりま
した。こうした動きについていけない従来のチェーン型外⾷産業は、消費者からみた付加価値が減少し、コモディティ化が
進みました。
コモディティ化が進んだ旧来の「外⾷」の魅⼒は値段に集約されがちです。そして、ここから給仕などのサービスをとれば
もっと価格を安くできます。そのニーズをとらえ、消費者の嗜好の変化に機敏に対応し成⻑したのが「中⾷」でした。20
00年代に⼊り、「時間」、「値段」といった中⾷の⻑所に加え、短所であった「味」の改善が急速に進みました。もとも
と単⾝世帯の趨勢的な増加を背景に、中⾷需要は潜在的に成⻑⼒を持っていました。そこに「味」の進化が加わったことで、
従来の内⾷のコアユーザー層である⼦供のいる家庭や、⾼齢者の中⾷への抵抗感がなくなったのです。
中⾷需要をリードしているのがコンビニです。⼤⼿コンビニの、お弁当、おにぎり、レトルト⾷品は最近では⾔われなけれ
ばコンビニのものとは思えない味です。この味を⽀えているのが⾷品ベンダーです。コンビニの味や値段、⾷の安全などの
⾼い要求⽔準に⾷品ベンダーは⽇々鍛えられています。また、⾷品ベンダーはコンビニの出店に合わせ絶え間ない設備増強
を強いられます。最近は調理スタッフの⼈集めに苦労しており、設備の⽴ち上げ時に⾚字になるのもめずらしくありません。
しかし、今後の量的成⻑を考えると必死でついていくしかありません。ただこの努⼒は結果的に⾃社製品に反映され、筋⾁
質の企業体質となって将来に⽣かされていきます。
私が中⾷にかかわる企業の株式を評価しているのは、コンビニと⼆⼈三脚で質の向上に取り組んでいるからです。置き場の
限られたコンビニだからこそ、棚を占有する価値のあるもの、バリューフォーマネーの製品を追求し続ける中⾷関連企業に
注⽬しています。最近の⽣鮮⾷品とエネルギーを除いたコアコアCPI上昇に⾷品関連の値上げが⼤きく寄与してきました。
これも消費者だけでなく、コンビニに鍛えられているからこそ、⽇本の⾷品の付加価値が上昇しているのかもしれません。
株式運⽤部
永⽥ 芳樹
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