発表資料

長波長領域光吸収やバンド構造の
自在制御が可能な金属サルファ
/セレンハライドの低温合成方法
京都大学大学院 工学研究科
教授 阿部 竜
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新技術の特徴・従来技術との比較
• 金属サルファ/セレンハライドは、各種光機能
材料としての応用が期待される材料群であるが、
その合成例は極めて限定され、特にハロゲン
種の組成制御は、ハロゲン(ヨウ素種)の揮発
等により本質的に困難であった。
• 本技術では、室温で合成可能な金属オキシハ
ライドを原料として、150℃以下の極めて低温で
のアニオン交換反応により金属サルファ/セレ
ンハライドを合成し、吸収波長の連続かつ精密
な制御に世界で初めて成功した。
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サルファ/セレンハライドとは?
長波長までの可視光を吸収可能であり、かつ構造中
に含まれるハロゲン種およびその割合を変化させる
ことにより、光吸収特性の自在制御が可能
太陽電池・発光材料・フォトディテクター・光触媒・など、
光機能材料としての応用が期待される材料群
しかし、その合成が困難で、報告例は極めて少ない
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サルファハライド:長波長吸収+波長制御
オキシハライド
伝導帯
1.5 eV
1.8 eV
2.7 eV
1.7 eV
価電子帯
価電子帯
I 5p
+
+
O 2p
O 2p
I 5p
Br 4p +
+
S 3p S 3p
Ex.) BiOX
Ex.) BiSX
(X=Cl,Br,I)
(X=Cl,Br,I) BiSI
0.8
吸光度(任意単位)
伝導帯
Br 4p
1.0
サルファハライド
BiSBr
0.6
0.4
0.2
0.0
300
BiOI
BiOBr
400
500
600
700
800
波長(ナノメーター)
BrからIへの置換、OからSへの置換により吸収が顕著に長波長化(バンドギャップ縮小)
しかし、BiSXの合成例はごくわずかで、特にハロゲン混合体の合成には、400℃程度で真空
中での長時間焼成が必須(ハロゲンの揮発のため、組成比の精密制御は困難)
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Reac on
with H2S
BiOI
BiSI
本技術の特徴1:新規低温合成(~150℃)
Bi3+
X−
S2−
O2−
BiOX
BiSX
アニオン交換反応
(O2− → S2−)
室温で合成可能なBiOX(X= Cl, Br, I)を前駆体として、新規低温アニオン交換により、BiSX
を合成(低温反応のため、ハロゲン組成が維持され、連続的制御が可能に)
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本技術の特徴2:吸収波長の自在制御
低温合成により、試料中のハロゲン組成の精密制御が可能に(揮発抑制による)
単一カチオン種(例:Bi)であっても、アニオン種制御により紫外から近赤外領域まで制御可能
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本技術の特徴3:光電変換材料への応用
光電変換効率 (%)
80
Potential / V
vs. Ag/AgCl
60
0.2V (vsAg/AgCl)
0.1V ( vsAg/AgC
0.0V ( vsAg/AgC
BiSI_ UV_ KM
0.2
0.1
0
40
0.1 M-NaI
/ ACN
20
150℃
HS
2
BiOI
0
400
500
BiSI
600
700
800
900
波長(ナノメーター)
本手法で合成したBiSXは導電性基板に塗布・乾燥させるだけでも高い光電流を生成
室温で合成したBiOIを導電性基板に塗布・乾燥させ、基板上で直接アニオン交換すると、
さらに高い光電変換能を示す(粒子同士および導電性基板との接合改善による)
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発光材料(LED等)
Normalized Kubelka–Munk
想定される用途:光機能性材料
1.0
0.8
0.6
太陽電池
0.4
0.2
0.0
300
400
500
600
700
800
Wavelength/nm
900
O2
H2
・波長自在制御
・低温合成(成膜性)
Gan, X. et al., Natrue photon. 2013, 7, 883
フォトディテクター
光触媒(人工光合成)
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想定される用途:太陽電池材料
有機無機ペロブスカイト太陽電池 真空プロセスを必要とせず安価で高効率な次世代太陽電池として注目
(CH3NH3)PbI3
(CH3NH3)PbI3 特徴
TiO2
I– CH3NH3+ Pb2+ バンドギャップ:1.5 eV
800 nmまでの光を吸収
○電荷移動特性
長いキャリア拡散距離
電子のエネルギー
○吸収特性
FTO
e–
-4.0
e–
-3.9
1.5 eV
光エネルギー-5.6
hv
価電子帯
課題
★鉛による有害性の懸念
(水に溶解) 伝導帯
h+
-5.1
-5.1
h+
Au
Spiro–
OMeTAD
T. Miyasaka, J. Am. Chem. Soc. 131 17 (2009),
R. G. Palgrave et al., J. Mater. Chem. A, 3, 9071 (2015)
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想定される用途:太陽電池材料
有機無機ペロブスカイト太陽電池 ビスマス系カルコハライド
(CH3NH3)PbI3 Bi3+
✓ バンドギャップ ca. 1.5 eV
I– ✓ 長距離キャリア拡散
✓ 製造コスト低減
I−
BiOX
S2− or
Se2−
70
●"+0.2"V"
3
●"+0.1"V"
●"""""""0"V"
●"−0.1 V"
●"−0.2 V"
60
Pb2+ IPCE/%
50
vs. Ag/AgCl
40
30
2
K/M
CH3NH3
+ 0 .2 V (
0 .1 V
0 .0 V
-0.1V
-0.2V
'1 4 1 2
IPCE 64 %
20
1
10
BiSI, BiSeI,,,,
◯ 高効率+低コストの両立が期待
☓ 鉛による有害性の懸念 (水に溶解) ✓
✓
✓
✓
0
400
500
600
700
800
Wavelength / nm
鉛フリー
バンドギャップ ca. 1.3-1.5 eV
低温、短時間での合成(低コスト)
高い光電変換効率
太陽電池材料として期待
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実用化に向けた課題
• 現在、高い光電変換能が確認されているが、
太陽電池への応用については、材料内の高
い抵抗値を低減することが必須であり、半導
体の本質的性質の制御、およびデバイスの
構造最適化などが望まれる。
• 他の特性(発光など)については、現在評価
をスタートしたところであり、企業との連携な
ども期待している。
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :金属サルファハライド及び/
又は金属セレンハライドの合成方法
• 出願番号 :特願2015-177080
• 出願人
:京都大学
• 発明者
:阿部 竜、東 正信、国奥広伸
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お問い合わせ先
関西TLO株式会社
ライセンスアソシエイト
藤田 直子
TEL 075-753-9150
FAX 075-753-9169
e-mail fujita@kansai-tlo.co.jp
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