水星の近日点移動 その2 6 (5.12) 式の右辺の第二項が、一般相対論による補正項を与えると述べたのだが、その実 際の計算にはかなり不自然な技巧を用いている。ケプラー運動の軌道は (5.24) 式で与えら れているので、仮に計算が面倒であってもそれを素直に代入する方がずっとすっきりして いるように思えてくる。実際に、(5.22) 式と (5.24) 式を用いて、第二項の被積分関数を変形 すれば jδU/r2 δU dr = dϕ 2 2 3/2 [2(E − U0 ) − j /r ] 2(E − U0 ) − j 2 /r2 GM j 2 j2 j4 dϕ =− dϕ = − 2 2 r3 e2 G2 M 2 sin ϕ e2 GM sin ϕ r3 2 2 2 2 2 a (1 − e ) G M (1 + e cos ϕ)3 GM (1 + e cos ϕ)3 =− dϕ = − dϕ a3 (1 − e2 )3 a(1 − e2 )e2 e2 GM sin2 ϕ sin2 ϕ (6.1) となる。したがって、これを ϕ について 0 から 2π まで積分すれば発散してしまう。つまり、 (5.13) 式は、計算をスマートにやるためではなく、発散を防ぐために導入したものだったの だ。しかし、このままではこの結果が本当に正しいのかどうかわからない。そこで、以下 では問 5.1 の式を異なる方法で計算してみる4 。 問 6.1 再び を考える。ここで、 dϕ j/r2 = ±! dr 2(E − U ) − j 2 /r2 U = U0 + δU ≡ − rs rs j 2 − 3. 2r 2r (6.2) (6.3) 常識的には誰もが試すように、(6.2) 式の U を展開して、δU の最低次を取り出し、そ れを計算すると(形式的には)発散してしまう。そこでまず、rs /r ≪ 1 を仮定して、 以下の変形が近似的に成り立つことを示せ。 " # & " # ' rs rs j 2 j2 $ rs % 1 + 2E j 2 − rs2 2 E+ + 3 − 2 ≈ 1− 2 E+ rs − (6.4) 2r 2r r r 2r r2 問 6.2 (6.4) 式を参考にして ! j 2 − rs2 /r2 dφ = ±( " # dr 1 + 2E j 2 − rs2 2 E+ rs − 2r r2 (6.5) 以下は、ジェームス・ハートル著、牧野伸義訳『重力』(日本評論社)の第 9 章の問題 15 を参考にした ものである。 4 21 という軌道を考える。|E| ≪ 1, j ≫ rs とすれば、ニュートン力学のケプラー運動の 場合と同じく、その解は r= a′ (1 − e′2 ) 1 + e′ cos φ (6.6) で与えられる。これより、a′ , e′2 、および a′ (1 − e′2 ) を求めよ。 問 6.3 (6.6) 式を用いて (6.2) 式を dϕ j 1 dφ ! =! ≈ dr j 2 − rs2 1 − rs /r dr " r2 1 + s2 2j #$ 1+ と変形して、φ が 0 から 2π 変化する際の、ϕ の変化量 ∆ϕ が ∆ϕ − 2π ≈ 3πrs 6πGM = 2 a(1 − e ) a(1 − e2 ) rs % dφ 2r dr に帰着することを示せ。ここで、a と e は、問 5.2 で得られたものである。 22 (6.7) (6.8)
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