2016年5月24日 オーストラリア債券の投資環境 ~ウエスタン・アセットによる見通し~ 2016年5月、レッグ・メイソン・グループの運用子会社であるウエスタン・アセットのオーストラ リア拠点で、債券運用チームを率いるアンソニー・カーカム氏が来日しました。 そこで、オーストラリア債券とニュージーランド債券の投資環境についてインタビューを行いま したので、2回に分けてご紹介します。 第1回のテーマは「オーストラリア債券の投資環境」です。 オーストラリア拠点運用責任者 アンソニー・カーカム氏 為替動向について 今後、豪ドル・円レート(図1赤線)は上昇しやすい 環境にあると考えています。 2015年後半以降、豪ドルの対米ドルレート(図1青線)は 1豪ドル=0.7米ドル台前半を中心としたレンジ相場が続きま した。それ以前は、豪州準備銀行(RBA)は豪ドル高を牽制し ていましたが、レンジ相場に入って以降は「豪ドルは適正水準 にある」旨の表現に変化したことから、現在の豪ドル・米ドル レートはRBAにとって心地よい水準にあると推察されます。 また米ドル・円レートについては、今年に入り急速に円高が 進んだ反動や、日米の金融政策の方向性の違い(日本:緩 和志向、米国:引き締め志向)から再び米ドル高・円安の圧 力が高まると考えられるため、豪ドル・円レート(図1赤線)は 豪ドル高・円安に推移しやすい環境にあると考えられます。 1.05 対円レート(左軸) 100 1.00 95 0.95 90 0.90 85 0.85 豪ドル高 80 0.80 79.6 75 0.75 豪ドル安 70 0.722 0.70 対米ドルレート(右軸) 65 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 0.65 2016/1 (年/月) (出所)ブルームバーグ (期間)2014年1月初~2016年5月20日 図2:豪州準備銀行(RBA)の政策金利とインフレ率 (%) 5.0 4月27日に公表された、2016年第1四半期の基調インフ レ率はプラス1.6%と、RBAのインフレ目標値を大きく下回りま した(図2赤線)。そしてRBAは5月3日、政策金利を1年ぶり に0.25%引き下げて過去最低の1.75%としました(図2青 線)。利下げによる景気刺激効果により、基調インフレ率を 再び高めることを狙いとしています。 4.5 今後は、7月下旬に公表予定の基調インフレ率(4-6月 期)の結果次第ではもう一段の利下げの可能性もあります。 2.5 一方、米国のFOMC議事録において、米国が6月にも利上 げを行う可能性について言及がありました。一般に通貨安は 輸入物価の上昇圧力となり、インフレ率の上昇を招くと考え られます。米国の利上げ期待から米ドル高(豪ドル安)の圧 力が高まれば、市場におけるRBAの利下げ見通しが後退す る可能性があると考えています。 (米ドル) 105 金融政策について 5月3日、RBAは政策金利を0.25%引き下げ、過去 最低の1.75%としました。利下げにより景気を刺激し、 基調インフレ率を高めることを意図しています。 図1: 豪ドル相場の推移 ( 円) オーストラリア 政策金利 4.0 3.5 3.0 2.0 インフレ目標 レンジ(2~3%) 1.5 基調インフレ率 (前年比) 1.75% 2016年1‐3月期 1.6% 1.0 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) (出所)豪州準備銀行(RBA)、豪州政府統計局(ABS) (期間)基調インフレ率:2009年1‐3月期~2016年1‐3月期 政策金利:2009年1月1日~2016年5月20日 ●当資料は、説明資料としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」)が作成した資料です。●当資料は、当社が各種 データに基づいて作成したものですが、その情報の確実性、完結性を保証するものではありません。●当資料に記載された過去の成績は、 将来の成績を予測あるいは保証するものではありません。また記載されている見解、目標等は、将来の成果を保証するものではなく、また予 告なく変更されることがあります。●この書面及びここに記載された情報・商品に関する権利は当社に帰属します。したがって、当社の書面に よる同意なくして、その全部もしくは一部を複製し又その他の方法で配布することはご遠慮ください。●当資料は情報提供を目的としてのみ作 成されたもので、証券の売買の勧誘を目的としたものではありません。 1 2016年5月24日 図3:実質GDP成長率の見通し 経済動向について 単位:% 足もとの景気は堅調です。豪州準備銀行(RBA)は 2016年の成長率の見通しを上方修正しました。 内需の継続的な拡大を背景に、2017年・18年は 3%程度で安定した成長となる見通しです。 5 以前よりは低下したものの、現在でもオーストラリアの金利は 主要先進国の中で相対的に高い水準にあることは魅力だと考 えています(図5)。足もとの長期金利は2.3%となっています。 2.0~3.0 2.5~3.5 今回予想(5月) 2.5~3.5 従来通り (%) 予測 4 2018年 3.0% 3 2 金融危機の影響 2009年 1 0 オーストラリアは「資源セクターが成長の源泉」というイメージを 持たれやすいのですが、実は資源セクターではなく、人口増加 に伴う内需セクターの安定的な拡大が成長を支えています。 低金利や豪ドル安を背景に個人消費や住宅・観光といった内 需が堅調に拡大しており、鉄鉱石などの資源価格が大きく下落 5 したなかでも、GDPの安定成長傾向に変化はみられません。 4 安定した経済成長と財政健全化を計画通り進める ことが、高格付維持のポイントになると考えます。 従来予想(2月) 図4:オーストラリアの実質GDP成長率 また長期的な観点からは、オーストラリア経済は1992年から 2015年まで24年間連続でプラス成長が続いています。 IMFに よる成長率予想も2016年:2.5%、2017年:3.0%、2018年: 3.0%と、堅調な成長が続く見通しです(図4)。 オーストラリア債券の利回りが相対的に高い水準で あることは、依然として魅力的であると考えます。 2017年 (出所)豪州中央銀行(RBA)、5月6日公表値、前年比 利下げがあると、「利下げは景気が悪いからですか?」という ご質問をいただきますが、今回はそうではありません。足もとで 景気は拡大しており、RBAは利下げと同じタイミングで、今年の 実質GDP成長率の見通しを上方修正しています(図3)。 金利・格付の動向について 2016年 1.8% 2000 2004 2008 2012 2016 (年) (出所)ファクトセット (期間)2000年~2018年 ※2016~2018年はIMFによる予測値 図5:主要国の10年国債利回り (%) オーストラリア 3 2.3% 1.8% 2 米国 1 0 -1 2014/1 ドイツ 日本 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1 0.2% -0.1% (年/月) (出所)ブルームバーグ (期間)2014年1月1日~2016年5月20日 図6:一般政府の基礎的現金収支 国債の格付がAAAであることも見逃せません。オーストラリア 2 政府は歳出抑制と景気拡大の見通しを背景に、基礎的現金収 1 支を2016年度のGDP比2.2%の赤字から、2020年度には黒字 0 -1 化する計画を示しています(図6)。 (GDP比、%) 20年度 0.2% -2 一般政府の純債務残高は2017年度のGDP比19.2%をピー 16年度 クに、2024年度には同10.5%まで縮小が見込まれています。 -3 -2.2% -4 米格付会社S&P社は予算案の公表後、オーストラリア国債の (年度) AAA格付を維持しつつ、今後、予算案の詳細を精査する方針 -5 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 を示しています。今後もオーストラリアのAAA格付が維持される 実績 計画 中期計画 かどうかは、公表された予算計画の実現性に焦点が集まると考 (出所)豪財務省 (注)基礎的現金収支は政府系ファンドの えられます。 収支を除いた財政収支。年度は各年7月~翌年6月 ●当資料は、説明資料としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」)が作成した資料です。●当資料は、当社が各種 データに基づいて作成したものですが、その情報の確実性、完結性を保証するものではありません。●当資料に記載された過去の成績は、 将来の成績を予測あるいは保証するものではありません。また記載されている見解、目標等は、将来の成果を保証するものではなく、また予 告なく変更されることがあります。●この書面及びここに記載された情報・商品に関する権利は当社に帰属します。したがって、当社の書面に よる同意なくして、その全部もしくは一部を複製し又その他の方法で配布することはご遠慮ください。●当資料は情報提供を目的としてのみ作 成されたもので、証券の売買の勧誘を目的としたものではありません。 2
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