山村 行弘 Yamamura Yukihiro 弁護士。第一東京弁護士会所属 一般民事・刑事事件、知的財産、法律相談などを手がける。 協力:萩谷雅和(萩谷法律事務所) 第 48 回 試用期間中に休職したら? 相談者の 気持ち 就職したものの、仕事と人間関係に疲れて3カ月でうつ病になりました。入社 後半年間は試用期間になっていますが、この期間中に休職した場合、解雇され てしまうのでしょうか? 入社後一定期間を試用期間と より、または試用中の勤務状態等により、当初 して、この間に労働者を評価し 知ることができず、また知ることが期待できな て本採用するかどうか決めるという場合があり いような事実を知るに至った場合において、そ ます。この試用期間については、就業規則に、 のような事実に照らしその者を引き続き当該企 その期間や延長の可能性、会社の解雇権等が規 業に雇用しておくのが適当でないと判断するこ 定されているのが一般的です。 とが、解約権留保の趣旨、目的に徴して、客観 この試用期間の法的な性質については、当初 的に相当であると認められる場合には、さきに から労働契約は成立していますが、試用期間中 留保した解約権を行使することができるが、そ は使用者に労働者の不適格性を理由とする解約 の程度に至らない場合には、これを行使するこ 権が留保されているものと考えられています。 とはできない」と判示しています (最高裁昭和 つまり、試用期間付きの契約は、採用決定の当初 48 年 12 月 12 日判決) 。 には労働者の資質・性格・能力などの適格性の 本件は、試用期間中の最初の3カ月で、仕事 有無に関する事項について資料を十分に収集す と職場の人間関係が原因でうつ病になったとい ることができないため、後日における実験観察 うものです。前述のとおり、試用期間は、労働 に基づく最終決定を留保する趣旨の契約です。 者の適格性を判断するための期間ですので、う つ病の原因に会社側によるパワハラやいじめ等 このように、解約権が留保されていますが、 会社側が本採用を拒否したり試用期間途中で解 があった場合は別ですが、そのような事情はな 雇するためには、それが解雇である以上、客観 く、単純に上記の原因だけでうつ病となり、休 的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当と 職となったのであれば、不適格であるとの判断 言える必要があります。ただし、本採用後の解 がなされる可能性が高いものと言えます。した 雇と比較すると、若干緩く解されています。 がって、このような場合、本採用を拒否された り、休職期間が満了した時点で解雇となる可能 この点が問題となった事案において、 判例は、 性が高いものと言えるでしょう。 「企業者が、採用決定後における調査の結果に 2016.5 国民生活 35
© Copyright 2024 ExpyDoc