山村 行弘 暮らしの法律 Yamamura Yukihiro 弁護士。第一東京弁護士会所属。 一般民事・刑事事件、知的財産、法律相談などを手がける。 協力:萩谷雅和(萩谷法律事務所) 第 49回 借家の入居者が 駐車スペースを貸すのは? 相談者の気持ち 借家住まいですが、敷地内の空いている駐車スペースを 1 日単位で貸し出しています。大家から注意されましたが、 貸してはいけないのでしょうか? ただ、無断で転貸をしたからといって、賃貸 居住に使用するために家屋 を借り、その家屋の敷地に駐 人が直ちに賃貸借契約を解除できるかというと、 車スペースがある場合は、そ そうとは限りません。前述のとおり、賃貸借が の駐車スペースについても、 当事者の個人的信頼を基礎とする継続的法律関 建物賃貸借契約の目的に含まれているものと考 係であることからすると、賃借人が賃貸人の承 えられます。 諾なく第三者に賃借物の使用収益をさせた場合 このように、居住用の建物賃貸借契約の目的 においても、賃借人の当該行為が賃貸人に対す に含まれている駐車スペースを、賃借人が第三 る背信的行為と認めるに足らない特段の事情が 者に貸し出すことは、たとえそれが1日単位で ある場合においては、民法 612 条の解除権は発 あったとしても、転貸に当たるものと言えるで 生しないものと解されています (最高裁昭和28 年 しょう。転貸について、民法 612 条は、賃借人 9 月 25 日判決) 。 は、賃貸人の承諾を得なければ、賃借物を転貸 簡単に言うと、借主の転貸が貸主に対して背 することができず、これに違反して承諾を得る 信的でないと言える場合は、貸主は転貸を理由 ことなく第三者に賃借物を使用・収益させた場 に賃貸借契約を解除することができないという 合は、賃貸人は、契約の解除をすることができ ことです。なお、転貸が背信的でないことは、 る旨規定しています。賃貸借は当事者の個人的 借主側で主張・立証する必要があります。 信頼関係を基礎とする継続的法律関係であり、 本件では、 居住用の建物賃貸借契約において、 そのことに照らすと、賃借人が賃貸人の承諾な その敷地の駐車スペースを第三者に転貸すると しに第三者に賃借物を使用収益させることは契 いうものであり、しかもその転貸は、収益を目 約の本質に反することになります。そこで、こ 的とするものと考えられますので、これを背信 のような行為のあったときには賃貸借関係を継 的でないと主張することは、極めて難しいもの 続することのできない背信的行為があったもの と言えるでしょう。大家の承諾が得られない以 として賃貸人において一方的に賃貸借関係を終 上、転貸はやめるべきです。 了させることができることを規定したのです。 2016.6 36
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