隣家の犬を散歩させているとき、 よその犬にけがを

山村 行弘
Yamamura Yukihiro
弁護士。第一東京弁護士会所属
一般民事・刑事事件、知的財産、法律相談などを手がける。
協力:萩谷雅和(萩谷法律事務所)
第
44 回
隣家の犬を散歩させているとき、
よその犬にけがをさせてしまったら?
相談者の
気持ち
隣人の体調を気遣い、自分から申し出て隣家で飼っている犬を散歩させました。
ところが、散歩の途中でよその犬に飛びつき、けがをさせてしまいました。私
は責任を問われるのでしょうか?
散歩させていたところ、よその犬に飛びつき、
結論からいうと、責任を問わ
れる可能性があります。動物の
けがをさせたということですので、718 条1項
占有者は、その動物が他人の権利・法益を侵害
あるいは同条 2 項に基づき、損害を賠償する責
したとき、これによって生じた損害を賠償する
任を負うことになります。
責任を負います
(民法 718 条1項本文)。また、
もっとも、同条1項ただし書は、動物の占有
動物の占有者に代わってその動物を管理する者
者が動物の種類および性質に従い
「相当の注意」
(保管者)も、同様の責任を負います
(同条2項)
。
をもってその管理をしたことを立証した場合は、
その責任を免れる旨を規定しています。
このような民法 718 条に基づく動物占有者・
この
「相当の注意」
の有無は、
占有者の職業や、
保管者の責任は、自己の支配下にある動物がし
しつけ
た加害につき、その占有者・保管者が動物の管
動物保管の熟知度、動物の躾の程度、加害時の
理に必要な注意を怠ったことを理由に負う責任
措置、被害者側の対応なども総合して判断され
です。
ます。
ここにいう「占有者」
とは、動物を事実上支配
本件は散歩中の事故ですが、散歩中は、万一
する者をいい、「保管者」
とは、運送契約、寄託
犬が興奮した際にも、これを十分に制御できる
契約、賃貸借契約、使用貸借契約などにより、
ように注意を払う必要があります。また、既に
占有者から動物の保管を引き受けた者をいうと
咬み癖のあるような犬の場合は、口輪を施す等
考えられています。
の処置を講ずる義務があるでしょう。
か
また、「損害」
は、動物が人を咬んだ場合のよ
このような相当の注意を払ったことが立証さ
れた場合は、責任を免れることができます。
うに、他人の人体に加えた損害だけでなく、物
また、
責任を免れることができない場合でも、
を壊したり、他人の飼育する動物を殺傷した場
合のように、他人の所有物などに加えた損害も
被害者側の犬の管理にも過失があったような場
含まれます。
合は、加害者と被害者双方の過失割合を勘案し
て、
加害者の責任が軽減されることになります。
本件では、隣家で飼っている犬を預かって、
2016.1
国民生活
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