山村 行弘 Yamamura Yukihiro 弁護士。第一東京弁護士会所属 一般民事・刑事事件、知的財産、法律相談などを手がける。 協力:萩谷雅和(萩谷法律事務所) 第 45 回 身寄りのない人が亡くなったら? 相談者の 気持ち 身寄りのない近所のお年寄りが亡くなりました。アパート暮らしでしたが、葬 儀や埋葬、家財道具の処分などはどうするのでしょうか? 遺言書はありません。 被相続人が死亡して、相続が なお、引取者のいない死体については、死亡地 開始されたけれども、相続人が の市町村長が埋葬または火葬を行うこととされ ています (墓地・埋葬等に関する法律9条)。 いるのかいないのか明らかでない状態を 「相続 管理人選任の公告から2カ月以内に相続人が 人不存在」といいます。相続人不存在の場合、 相続財産は、相続開始の時点から相続財産法人 現れなかったときは、管理人において遅滞なく という一種の財団法人となります (民法 951条) 。 相続債権者や受遺者に対して2カ月以上の期間 そして、利害関係人または検察官の請求によっ を定めて請求の申出をするよう公告を行い ( 民 て、家庭裁判所は相続財産管理人 (以下、 管理人) 法 957 条 )、申出があった場合は相続財産の中か を選任します (同法 952 条1項) 。ここにいう利 ら弁済を行います。弁済は相続財産中の現金や 害関係人とは、被相続人の債権者等をいい、ア 預貯金をもって行いますが、それらが不足する パートの大家が、滞納された賃料等を回収する 場合は、不動産や動産等の資産を競売や任意売 ために本請求を行うことなどが考えられます。 却の方法で換価し弁済に充てることとなります。 家庭裁判所は、管理人を選任したときは、その この清算の後、まだ財産が残っていれば、家 旨を官報によって遅滞なく公告します (同法 952 庭裁判所は6カ月以上の期間を定めて、改めて 条2項) 。選任された管理人は、相続財産の管理 相続人捜索の公告を行い (同法 958 条) 、この期 行為を行いますが、本件のように被相続人がア 間内に相続人が現れない場合は、相続人不存在 パートの賃借人だった場合は、当該アパートの が確定し、相続人や受遺者の権利は失効します 賃貸借契約を解約することになるでしょう。祭 (同法 958 条の2) 。なお、上記期間満了後3カ 祀法事費用については、管理行為に当たりませ 月以内に、特別縁故者からの請求があれば、家 んが、家庭裁判所の許可を得て管理人がこれを 庭裁判所は、清算後残存すべき財産の全部また 支出します。例えば、被相続人の近隣者等が喪主 は一部をその者に分与することができます(同 となって葬儀や埋葬を行った場合、それにかかっ 法 958 条の3) 。そして残った相続財産は、国 た費用を相続財産から支出することになります。 庫に帰属することになります (同法 959 条)。 さい し 2016.2 国民生活 34
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