景気循環研究所レポート 対アジア輸出増が生産回復の追い風に 2016 年 9 月 29 日 アジア NIEs 向け輸出が 14 ヵ月振りのプラスに アジア向け輸出が持ち直しの動きを強めている。対アジア輸出数量指数 は直近 16 年 8 月に前年比 3.3％上昇した。3 ヵ月連続の前年比プラスであ り、かつプラス幅は 15 年 3 月以降で最大となっている。8 月は中国向け （前年比 4.2％上昇）、ASEAN 向け（同 2.5％上昇）、アジア NIEs 向け（同 1.4％上昇）のいずれも前年比で増加したが、なかでもアジア NIEs 向けが 15 年 6 月以来 14 ヵ月振りの前年比プラスとなったことで、対アジア輸出 数量全体が押し上げられた格好である（図 1）。 アジア NIEs は半導体を中心としたハイテク産業の集積地である。世界 世界の半導体需給とアジ ア NIEs 向け輸出の関係 の半導体需給が改善すると、同地域の生産活動が活発化し、日本から同地 域への輸出数量が増加するケースが多い。15 年下期以降、世界の半導体 出荷額は前年割れが続いているが、同出荷額の先行指標である半導体製造 装置 BB レシオ（受注額÷出荷額）は持ち直しの動きに転じている。直近 16 年 8 月の半導体製造装置 BB レシオは 1.18 倍となり、9 ヵ月連続で受注 額が出荷額を上回った。今後は、BB レシオの改善を後追いする形で、日 生産回復の追い風に 本の対アジア NIEs 輸出数量は増加基調を強める可能性が高い（図 1、図 2）。 中国向け輸出数量についても、先行指標である中国の住宅販売床面積の 嶋中 雄二 景気循環研究所長 動きから判断する限り、今後も前年比プラス圏内の推移が予想される（図 鹿野 達史 景気循環研究所副所長 ていたが（図 4）、輸出回復の裾野がアジア NIEs へと広がる中、日本の輸 お も し 3）。アジア向け輸出数量の低迷は、長らく製造業の生産回復の重石となっ 出数量は今後、増加傾向を辿り、鉱工業生産の回復をけん引しよう。 シニアエコノミスト 宮嵜 図 1.アジア NIEs 向け輸出数量と半導体製造装置 BB レシオの推移 浩 シニアエコノミスト 03-6627-5132 60 miyazaki-hiroshi＠sc.mufg.jp 40 福田 圭亮 20 シニアエコノミスト 03-6627-5133 0 fukuda-keisuke＠sc.mufg.jp 本レポートは､嶋中雄二の見方に基づ き､宮嵜･福田が執筆を担当しています｡ （比率） （前年比、％） -20 日本の半導体製造装置 BBレシオ（右目盛） -40 -60 景気循環研究所 東京都千代田区大手町 1-9-2 大手町フィナンシャルシティ グランキューブ 2000 2002 2004 2006 2008 2.0 対アジアNIEs 1.8 輸出数量指数（左目盛） 1.6 1.4 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 2010 2012 2014 2016 （注）直近はともに16年7-8月平均値。BBﾚｼｵは3ヵ月移動平均の受注・販売比率。 （年、四半期） （資料）財務省「貿易統計」、日本半導体製造装置協会資料をもとに三菱UFJモルガン・ スタンレー証券景気循環研究所作成 1 2016 年 9 月 29 日 図 2. 世界半導体出荷額と半導体製造装置 BB レシオの推移 100 （前年比、％） 2.2 80 2.0 世界半導体出荷額（左目盛） 1.8 60 1.6 40 1.4 20 1.2 0 1.0 -20 0.8 0.6 -40 0.4 -60 半導体製造装置BBレシオ（日本、右目盛） 0.2 0.0 -80 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 （年、四半期） （資料）日本半導体製造装置協会、国際半導体製造装置材料協会の資料をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成 図 3. 日本の対中国輸出数量と中国の住宅販売動向 （前年比、％） （前年比、％） 120 100 80 60 40 20 0 -20 -40 -60 -80 150 125 100 75 50 25 0 -25 -50 -75 -100 中国の住宅販売床面積（6ヵ月先行、右目盛） 日本の対中国輸出数量（左目盛） 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 （年、月次） （資料）財務省「貿易統計」、中国国家統計局資料をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー 証券景気循環研究所作成 図 4. 鉱工業生産指数と対アジア輸出数量指数の推移 （10年=100） （10年=100） 140 130 120 対アジア輸出数量指数（右目盛） 120 110 100 110 90 100 80 90 70 80 鉱工業生産指数（左目盛） 60 50 60 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 70 （年、月次） （注）16年8、9月の鉱工業生産指数は製造工業生産予測指数をもとした試算値。 （資料）財務省「貿易統計」、経済産業省「鉱工業指数」をもとに三菱UFJモルガン・ スタンレー証券景気循環研究所作成 （以 上） みやざき ひろし (16.9.29 宮嵜 浩) 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様 ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 2 2016 年 9 月 29 日 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。本 資料で直接あるいは間接に採り上げられている有価証券は、価格の変動や、発行者の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評価 の変化、金利・為替の変動などにより投資元本を割り込むリスクがあります。ここに示したすべての内容は、当社の現時点での判断を示している に過ぎません。本資料は、お客様への情報提供のみを目的としたものであり、特定の有価証券の売買あるいは特定の証券取引の勧誘を目的と したものではありません。本資料にて言及されている投資やサービスはお客様に適切なものであるとは限りません。また、投資等に関するアドバ イスを含んでおりません。当社は、本資料の論旨と一致しない他のレポートを発行している、或いは今後発行する場合があります。本資料でイン ターネットのアドレス等を記載している場合がありますが、当社自身のアドレスが記載されている場合を除き、ウェッブサイト等の内容について当 社は一切責任を負いません。本資料の利用に際してはお客様ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。 当社および関係会社の役職員は、本資料に記載された証券について、ポジションを保有している場合があります。当社および関係会社は、 本資料に記載された証券、同証券に基づくオプション、先物その他の金融派生商品について、買いまたは売りのポジションを有している場合が あり、今後自己勘定で売買を行うことがあります。また、当社および関係会社は、本資料に記載された会社に対して、引受等の投資銀行業務、 その他サービスを提供し、かつ同サービスの勧誘を行う場合があります。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の役員（会社法に規定する取締役、執行役、監査役又はこれらに準ずる者をいう）が、以下の会社の役員 を兼任しております：三菱UFJフィナンシャル・グループ、カブドットコム証券、三菱倉庫。 債券取引には別途手数料はかかりません。手数料相当額はお客様にご提示申し上げる価格に含まれております。 本資料は当社の著作物であり、著作権法により保護されております。当社の事前の承諾なく、本資料の全部もしくは一部を引用または複製、 転送等により使用することを禁じます。 c 2016 Mitsubishi UFJ Morgan Stanley Securities Co., Ltd. All rights reserved. Copyright ◯ 〒100-8127 東京都千代田区大手町 1-9-2 大手町フィナンシャルシティグランキューブ 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 景気循 環研究所 （商号） 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長（金商）第 2336 号 （加入協会） 日本証券業協会・一般社団法人金融先物取引業協会・一般社団法人日本投資顧問業協会・一般社団法人第二種金融商品取 引業協会 本資料は、英国において同国the Prudential Regulation Authorityとthe Financial Conduct Authorityの監督下にあるMitsubishi UFJ Securities International plcが配布致します。また、米国においては、Mitsubishi UFJ Securities (USA),Inc.が配布致します。 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様 ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 3
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