景気循環研究所レポート 景気の先行き判断が改善、設備投資は回復へ 2016 年 10 月 12 日 設備投資が回復に向かいつつある。設備投資の先行指標である機械受注 7-9 月期の機械受注は内閣 府見通しを上回る見込み (船舶・電力を除く民需、以下も同様)は 6 月(前月比 8.3%増)、7 月(同 4.9%増)と 2 ヵ月連続で増加した後、直近 8 月に同 2.2%減少したが、 7-8 月平均の受注額は 4-6 月期(月平均)を 8.9%上回った。内閣府は、 主要機械メーカーの受注見通しをもとに、7-9 月期の受注額を前期比 5.2%増と見込んでいたが、実際の受注額は内閣府見通しを上回る可能性 が出てきた。 企業経営者はこれまで、景気の先行き不透明感を背景に、設備投資に慎 景気の先行き不透明感が 重な姿勢を続けてきた。しかし、夏場以降、景気の先行き不透明感は徐々 後退 に後退しつつある。景気ウォッチャー調査の「景気の先行き判断 DI(企 業関連)」は、6 月をボトムに 3 ヵ月連続で上昇している(季節調整値、 図 1)。直近 9 月の景気判断の理由をみると、 「秋になり、工事の問い合わ せが増加している。特に新築工事の受注が増えている(東北・建設業)」、 「自動車メーカーの輸出増加で、良くなる(北関東・輸送用機械器具製造 業)」、「全体的には輸入原材料の価格が下がっており、在庫との調整によ って原材料の平均価格は 3 ヵ月後から下がってくる。必然的に収益力が良 嶋中 雄二 景気循環研究所長 鹿野 達史 景気循環研究所副所長 シニアエコノミスト 宮嵜 過去をみると、景気の先行き判断 DI(企業関連)は、機械受注の前年 比の動きに 3 ヵ月程度、先行する傾向がある(図 1)。機械受注は足元で 前年比プラスに転じているが、同 DI の動きから判断すると、機械受注は 年末にかけて、増加ペースを加速させる可能性が高い。 図 1. 機械受注は今後持ち直しの動きを強める見通し 浩 シニアエコノミスト 03-6627-5132 miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp 福田 くなる傾向が期待できる(北陸・食料品製造業) 」などが指摘されている。 70 (前年比、%) (DI) 80 景気の先行き判断DI・企業関連(3ヵ月先行、左目盛) 60 60 圭亮 50 40 シニアエコノミスト 03-6627-5133 40 20 fukuda-keisuke@sc.mufg.jp 30 0 20 -20 本レポートは、嶋中雄二の見方に基づき、宮嵜・ 福田が執筆を担当しています。 景気循環研究所 東京都千代田区大手町 1-9-2 大手町フィナンシャルシティ グランキューブ 10 機械受注(船舶・電力を除く民需、右目盛) -40 -60 0 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (年、月次) (注)景気の先行き判断DI・企業関連は季節調整値。 (資料)内閣府「機械受注統計調査」「景気ウォッチャー調査」をもとに三菱UFJモルガン・ スタンレー証券景気循環研究所作成 1 2016 年 10 月 12 日 積極的な財政・金融 なお、景気ウォッチャーの景気判断理由に挙げられていた「建設工事の増 政策が景況見通しの 加」に関しては、積極的な財政・金融政策が国内需要の喚起に繋がった可能 改善に貢献 性がある。年明け以降、住宅ローンの低下などを背景に、住宅投資が増加基 調で推移しているうえ、耐久財消費も、住宅購入に伴う買い替え需要もあっ て堅調に推移している(図 2)。一方、15 年度補正予算(16 年 1 月 20 日成 立)の執行は、16 年 1-3 月期以降の各種建設工事の増加に貢献したが、今後 は 28 兆円超の大規模経済対策の第 1 弾と位置付けられる 16 年度第 2 次補正 予算(10 月 11 日成立)が、16 年度下期以降の国内需要を押し上げよう。 中国向け輸出の復調 輸出については、長らく停滞していた中国向け輸出に回復の動きがみられ も設備投資回復の追 る。中国における好調な住宅投資は、日本と同様に、耐久消費財の買い替え い風に 需要を喚起し、日本から中国への輸出を促しつつあるとみられる(図 3)。 中国向け輸出及び国内建設需要の増加を追い風に、企業収益は改善の動きを 強めよう。設備投資は今年度下期以降、回復基調で推移するとみられる。 図 2. 住宅投資と耐久財消費が堅調 増加 30 ① (%ポイント) (年率・兆円) 16 資金需要判断D.I. 住宅ローン(左目盛) 20 GDP住宅投資 (右目盛①) 15 10 14 0 13 -10 12 -20 ② (年率・兆円) 11 GDP耐久財消費(右目盛②) 減少 -30 10 11 12 13 14 10 16(年、四半期) 15 58 54 50 46 42 38 34 (注)資金需要判断D.I.は当研究所季節調整値。GDP住宅投資・耐久財消費は実質ベース。 (資料)日本銀行「主要銀行貸出動向アンケート調査」、内閣府「四半期別 GDP速報」をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成 図 3. 中国の住宅投資と日本の対中国輸出数量の推移 (前年比、%) (前年比、%) 120 100 80 60 40 20 0 -20 -40 -60 -80 150 125 100 75 50 25 0 -25 -50 -75 -100 中国の住宅販売床面積(6ヵ月先行、右目盛) 日本の対中国輸出数量(左目盛) 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (年、月次) (資料)財務省「貿易統計」、中国国家統計局資料をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー 証券景気循環研究所作成 (以 上) みやざき ひろし (16.10.12 宮嵜 浩) 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様 ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 2 2016 年 10 月 12 日 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。本 資料で直接あるいは間接に採り上げられている有価証券は、価格の変動や、発行者の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評価 の変化、金利・為替の変動などにより投資元本を割り込むリスクがあります。ここに示したすべての内容は、当社の現時点での判断を示している に過ぎません。本資料は、お客様への情報提供のみを目的としたものであり、特定の有価証券の売買あるいは特定の証券取引の勧誘を目的と したものではありません。本資料にて言及されている投資やサービスはお客様に適切なものであるとは限りません。また、投資等に関するアドバ イスを含んでおりません。当社は、本資料の論旨と一致しない他のレポートを発行している、或いは今後発行する場合があります。本資料でイン ターネットのアドレス等を記載している場合がありますが、当社自身のアドレスが記載されている場合を除き、ウェッブサイト等の内容について当 社は一切責任を負いません。本資料の利用に際してはお客様ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。 当社および関係会社の役職員は、本資料に記載された証券について、ポジションを保有している場合があります。当社および関係会社は、 本資料に記載された証券、同証券に基づくオプション、先物その他の金融派生商品について、買いまたは売りのポジションを有している場合が あり、今後自己勘定で売買を行うことがあります。また、当社および関係会社は、本資料に記載された会社に対して、引受等の投資銀行業務、 その他サービスを提供し、かつ同サービスの勧誘を行う場合があります。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の役員(会社法に規定する取締役、執行役、監査役又はこれらに準ずる者をいう)が、以下の会社の役員 を兼任しております:三菱UFJフィナンシャル・グループ、カブドットコム証券、三菱倉庫。 債券取引には別途手数料はかかりません。手数料相当額はお客様にご提示申し上げる価格に含まれております。 本資料は当社の著作物であり、著作権法により保護されております。当社の事前の承諾なく、本資料の全部もしくは一部を引用または複製、 転送等により使用することを禁じます。 c 2016 Mitsubishi UFJ Morgan Stanley Securities Co., Ltd. All rights reserved. Copyright ◯ 〒100-8127 東京都千代田区大手町 1-9-2 大手町フィナンシャルシティグランキューブ 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 景気循 環研究所 (商号) 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 2336 号 (加入協会) 日本証券業協会・一般社団法人金融先物取引業協会・一般社団法人日本投資顧問業協会・一般社団法人第二種金融商品取 引業協会 本資料は、英国において同国the Prudential Regulation Authorityとthe Financial Conduct Authorityの監督下にあるMitsubishi UFJ Securities International plcが配布致します。また、米国においては、Mitsubishi UFJ Securities (USA),Inc.が配布致します。 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様 ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 3
© Copyright 2024 ExpyDoc