カルミ 木のもとハ汁も鱠もさくら哉 細谷亮太 松尾芭蕉 が、リズム、音、調べ、どれをとってもさすが 俳聖芭蕉とうなってしまいます。 三百年の後でも、この﹁かるみ﹂はとても大 切な俳句の目標となっています。 深見けん二 た ま た ま、 春 の 句 を 探 し て い た ら、 こ れ が ﹁かるみ﹂という句にあたりました。 その上へ又一枚の春の波 びらが散ってくる中で、お酒を飲み句を作って のエンジニアでした。高浜虚子の直弟子です。 俳人。東大︵当時は東京帝国大学︶の工学部卒 この作者については以前もとりあげているの 今から三百年余り前のお花見の宴の風景です。 で簡単な紹介にとどめます。一九二二年生れの 桜の花の満開の下でお吸い物にも鱠にも桜の花 いるのです。芭蕉は、この句について﹁かるみ です。このような句に出会うと本当にうれしく 平易な言葉だけを使っての気迫のこもった名句 をしたり﹂と言ったと伝わっています。 ﹁かるみ﹂というのは芭蕉が晩年になって至 った作句の心がまえです。日常の眼にしたなん 掲句についてみてみましょう。眼の前に広が る春の海、それをじーっと観察して乾坤一擲、 でもない風景を気取らないわかりやすい言葉を なります。 ︵聖路加国際病院 顧問︶ 使って、魂を込めた一句を作るというのが﹁か このさくらの句、誰でも作れそうに思えます るみ﹂と考えられます。 138 CLINICIAN Ê16 NO. 648 (578)
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