Economic Indicators 定例経済指標レポート

Global Market Outlook
粘る日本株
2016年6月17日(金)
第一生命経済研究所 経済調査部
藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
本日付けの当レポートで日経平均株価の予想を15000円、USD/JPYを100円とした。2016年入り後の
USD/JPY下落を主因にアナリストの予想EPSは既に下向きのカーブを描き始めており、今後も反転増益が
見込めないため、予想を引き下げる。もっとも、前回の減益局面の入り口にあたる2007年後半と比較した
場合、今回の業績悪化はマイルドになると判断され、その分、株価も粘り強さが期待できる。また、世界
的な低金利の下、株式の相対的な魅力が高まっていることもサポート要因である。
TOPIX予想EPS
120
110
100
90
80
70
60
50
40
30
05 06 07 08 09 10 11
(備考)Thomson Reutersにより作成
12
13
14
15
16
USD/JPYが100に下落するとの予想を前提にした場合、2012年以降の両者の関係から導出される日経平均
のレベルは14000円である。15000円というレベルはやや楽観的な印象を受けるかもしれない。因みに6月
16日のUSD/JPY104、日経平均15434円という組み合わせも近似線の上方に位置しているので、従来の関係を
基にすると、日経平均が出来過ぎているということになる。ただし、筆者は以下の理由により、日本株が
USD/JPYの下落にある程度、持ち堪える展開が続くと考えている(現在の近似線より上方に位置する展開)。
日経平均株価・USD/JPY
22000
日経平均株価・USD/JPY
130
20000
120
18000
USD/JPY(右)
21000
19000
17000
110
日経平均株価
15000
100
13000
90
11000
80
9000
7000
12
13
14
(備考)Thomson Reutersにより作成
70
15
16
(N225)
15000&100
6/16
16000
14000
12000
10000
y = 240.12x - 9974.1
R² = 0.9686
(USD/JPY)
8000
75 80 85 90 95 100 105 110 115 120 125
(備考)Thomson Reutersにより作成 2012年以降
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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先ず一点目に配当利回りに着目した資金流入が期待できる。この間、米10年金利が昨年末時点の2.3%から
1.6%へと水準を切り下げ、日本とドイツの10年金利がマイナス圏に沈むのをよそに、TOPIXの予想配当利回
りは年初来2.3%~2.7%で推移してきた。格段に高い水準とは言えないが、2%前半の配当利回りは、その
相対的な魅力が高まっていると言えるだろう。別の視点で2%前半が如何に“高利回り”であるかを付け加
えておく。2%台前半の利回りを確保する必要がある場合、米債であれば30年債までデュレーションを拡大
する必要があり、10年債でクレジットリスクをとるならばイタリア、スペイン(1%台後半)では足らず、
タイ、マレーシア、ポーランド、ポルトガル(2%~3.5%程度)まで触手を伸ばす必要がある。当然のこと
ながら、現実の世界では表面上の利回りだけで投資判断は下されず、流動性リスク、ホームカントリーバイ
アス(外国のアセットよりも自国のアセットの方が情報取得が容易なので同等の投資対象なら自国のアセッ
トの方が投資しやすい)などの要素も加わる。これら資産が“主食”になるとは考えにくい。行き場を失っ
た資金が債券の代替投資先として、日本株に流入してくる可能性があるだろう。
(%)
3
TOPIX予想配当利回り
2.8
2.6
2.4
2.2
2
1.8
1.6
10
11
12
13
(備考)Thomson Reutersにより作成
14
15
16
もう一つの視点として、市場が日本企業の円高耐久力を過小評価している可能性がある。日本企業はリー
マン・ショック後の急激な円高を経験して、為替変動の影響を受け易い製品を中心に現地生産に切り替えて
きた。故に、2012年秋から3年に及ぶ円安局面でも輸出数量は(海外需要見合いでしか)増加しなかったの
だが、今度はその裏返しで(海外需要見合いでしか)輸出数量が減少しない可能性が指摘できよう。前回円
高局面と比較して企業収益の落ち込みは緩やかなものになると予想され、企業業績の底堅さが株価を下支え
するだろう。また、前回の減益局面では予想PERが18倍程度と比較的高水準から低下したのに対して、今
回は10-13倍台という低水準で減益局面を迎えた。バリュエーション面から見ても今回の減益局面の方が状況
は悪くない。
日経平均株価
24000
22000
20000
18000
16000
14000
12000
10000
筆者予想
8000
10
11
12
13
(備考)Thomson Reutersにより作成
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本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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