Market Flash 「市場予想を上回った」が相次ぐ時間帯 2016年12月16日(金) 第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 藤代 宏一 TEL 03-5221-4523 【欧米経済指標他】 ・11月米CPIは前年比+1.7%と10月から0.1%pt加速。エネルギー価格が+1.1%とはっきりとしたプラス 圏に浮上。他方、コアCPIは+2.1%と10月から変わらず。コア財(▲0.6%→▲0.7%)が僅かに鈍化し た一方、コアサービス(+3.0% ※小数点2位以下では加速)が横ばいを維持。牽引役の家賃は+3.9%と 伸びを高めている。 ・12月フィラデルフィア連銀製造業景況指数は+21.5 10月(+7.6)から大幅に改善。ISM換算では55.1 と約2年ぶりの高水準に到達。12月NY連銀製造業景況指数も+9.0と11月(+1.5)から改善し、ISM 換算では48.6と1.4pt上昇。フィリー指数とNY連銀指数をISM換算した上で合成した指数は51.9とへと 0.6pt水準を切り上げた。USD高による業況悪化が懸念されるところだが、12月ISMは堅調な結果となり そうだ。同日発表の12月米製造業PMIも54.2と11月から0.1pt改善しており、こうした見方をサポートし ている。 4 (前年比、%) 米 CPI ISM指数・連銀サーベイ 60 コア 3 ISM 55 2 50 1 45 0 40 フィリー・NY平均 総合 -1 35 10 11 12 13 14 (備考)Thomson Reutersにより作成 15 07 08 09 10 11 12 13 (備考)Thomson Reutersにより作成 16 14 15 16 17 ・12月NAHB住宅市場はポジティブサプライズ。 ヘッドラインは70へと一気に7pt改善し、2005-06年にかけ ての住宅バブル時と同水準に比肩。現状(69→76)、期待(69→78)、購入見込客(47→53)が揃って大 幅に改善した。さすがに出来過ぎの印象があるものの、モーゲージ金利の上昇にも拘らず、住宅指標が力 強く推移していることは心強い。ただし、ローン金利上昇を目の当たりにして駆け込み需要が発生してい る可能性もあり、この点についてはモーゲージ申請指数等との整合性を見極める必要がある。 ・米新規失業保険申請件数は25.4万件と前週から0.4万件減少。4週移動平均では今次サイクルの最低付近に ある。 80 NAHB住宅市場指数 新規失業保険申請件数 (千件) 420 70 390 60 50 360 40 330 30 300 20 270 10 0 00 02 04 06 08 10 (備考Thomson Reutersにより作成 12 14 240 16 12 13 14 15 16 (備考)Thomson Reutersにより作成。太線:4週移動平均 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 1 【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】 ・前日の米国株は反発。米指標の予想比上振れが相次いだが、NYダウの2万突破が視野に入ると利益確定 売りが優勢となり上昇幅縮小。欧州株は総じて堅調。EUR/USD下落が追い風になっている。WTI原油は 50.90㌦(▲0.14㌦)で引け。 ・前日のG10 通貨はUSDの全面高が続いた。FEDのタカ派傾斜がUSD買いを促し、USDは連日の上昇。欧州 通貨が全般的に弱く、最弱のSEKは1.59%、GBPは1.16%、EURは1.16%の下落を記録。USD/JPYは118半ばへ と上伸し、EUR/USDは一時1.04割れとなった。新興国通貨の下落圧力は緩和したが、それでもJPMエマージ ング通貨インデックスは3日続落。ドルインデックスは14年ぶりの高水準を更新した。 ・前日の米10年金利は2.597%(+2.6bp)で引け。FEDのタカ派傾斜が引き続き材料視された。欧州債市 場(10年)は総じて軟調。14日のFOMC結果が反映され、ドイツ(0.365%、+6.4bp)、イタリア(1.826%、 +3.1bp)、スペイン(1.421%、+1.9bp)が揃って金利上昇。他方、ポルトガル(3.774%、▲0.1bp)は ほぼ横ばい。周縁3ヶ国加重平均の対独スプレッドはタイトニング。 【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】 ・日本株は、USD/JPY上昇を受けて欧米株高に追随。もっとも寄り付き後は高値警戒感もあり、上げ幅を縮小 している(09:45)。 ・昨日発表された12月の日経製造業PMIは51.9と11月から0.6pt改善。4ヶ月連続で節目の50を上回った。 内訳は、生産(52.4→53.1)、新規受注(51.1→52.8)、雇用(50.8→52.8)が揃って上昇。その反面、 最終財在庫(49.1→47.1)は低下。生産統計で確認されている「受注・生産・出荷増、在庫減」という製 造業の前向きな動きが続きそうだ。 日本 PMI生産・製造業生産 日本 製造業PMI 60 65 55 PMI生産 60 50 50 45 40 40 35 0 -20 製造業生産 (3ヶ月前比年率、右) -40 35 30 30 15 08 09 10 11 12 13 14 (備考)Thomson Reuters、Markitにより作成 16 40 20 55 45 08 09 10 11 12 13 14 (備考)Thomson Reuters、Markitにより作成 (%) 70 60 -60 15 16 <#米指標予想比上振れ #USD/JPY> ・トランプラリーの持続性を予想するうえで、米エコノミックサプライズ指数に注目。15日発表の米経済指 標が相次いで市場予想を上回ったことが象徴しているとおり、最近はエコノミストの予想が(実勢に対し て)保守的になっている模様で、ポジティブサプライズが起き易い。実際、エコノミスト予想と実績との 乖離を示すエコノミックサプライズ指数は11月入り後に好転し、最新の値は2013年以降で5本の指に入る 高さに位置している。これは文字通り、米指標の予想比上振れが相次いでいることを映し出している。目 下のトランプラリーはこうした経済指標の改善傾向の上で成り立っているという事実を念頭に置いておき たい。 ・こうした局面は一般的にFEDの引き締めバイアスを通じてUSD高に繋がり易い。USD/JPYをみるとエコノ ミックサプライズ指数の反転上昇に平仄に合わせる形で著しい上昇を遂げており、過去と同じパターンが 繰り返されていることが分かる。もっとも、今後はエコノミストの予想が楽観的となる反面、経済指標が ピークアウトに近づくことが予想されるため、経済指標が市場予想に届かないサイクルに入ることが想定 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 2 される。過去のパターンからすると、年明け頃からはエコノミックサプライズ指数が反転低下し、USD/JPY の上昇も一服する可能性が高いとみられる。 80 エコノミックサプライズ指数(米国)(USD/JPY、差) 20 60 USD/JPY(右) 15 40 10 20 5 0 0 -20 -5 -40 -10 -60 -80 -15 寒波の影響で材料視されず サプライズ指数 -20 13 14 15 16 (備考)Thomson Reutersにより作成 USD/JPYは3ヶ月前差 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 3
© Copyright 2024 ExpyDoc