Economic Indicators 定例経済指標レポート

Market Flash
ブラジルにお中元
2016年7月8日(金)
第一生命経済研究所 経済調査部
主任エコノミスト 藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
【海外経済指標他】
・米新規失業保険申請件数は25.4万件と前週から1.6万件減少。4週移動平均は26.5万件に減少し、景気後退
後の最低付近に再接近。もっとも、前年比の変化率に目を転じると2015年央以降は鈍化傾向にあり、労働
市場の改善ペースがスローダウンしていることを示唆している。
・6月ADP雇用統計によると民間雇用者数は+17.2万人。5月分は16.8万人へと0.5万人下方修正された。
BLS雇用統計が市場予想(民間部門雇用者数+17.0万人)を満たすことを示唆しているが、このところ
ADP雇用統計は予測精度が落ちている。
新規失業保険申請件数
(千件)
(前年比、%)
雇用者数・新規失業保険申請件数
6
(前年比、%)
-50
400
4
-30
失業保険(右)
370
-10
2
10
340
0
改善
310
-2
280
30
雇用者数
50
-4
70
悪化
250
12
13
14
15
-6
16
80
85
90
95
00
05
10
(備考)Thomson Reutersにより作成 3ヶ月平均の前年比
(備考)Thomson Reutersにより作成。太線:4週移動平均
90
15
【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】
・前日の米国株は反落。当初、堅調に推移していた米国株は原油価格下落を横目に売り優勢に転じた。WT
I原油は45.14㌦(▲2.29㌦)で引け。週間石油在庫統計で原油在庫の減少幅が市場予想に届かなかったほ
か、EUR/USD、GBP/USDの下落がUSD建て原油価格の割高感に繋がった。
・前日のG10 通貨はNZDが最強でそれにJPYが続き、反対にNOK、SEKの弱さが目立った。NZDの強さはRBNZス
ペンサー副総裁が住宅市場の加熱に言及し、利下げに否定的な見解を示したことが背景。他方、GBPの急落
は一服したが、それでも弱さは続き一時1.29割れ、欧州通貨も売りが優勢。そうしたなか、USD/JPYは再び
101を割れた。
・前日の米10年金利は1.385%(+1.7bp)で引け。米債市場は当初、堅調な米指標を受けて軟調に推移して
いたが、その後は原油価格下落を横目に買い戻しが優勢。欧州債市場はやや軟調。イギリス(0.781%、+
1.6bp)、ドイツ(▲0.170%、+0.6bp)は絶対水準の見直しもあって低下基調が一服、この日はイタリア
の銀行セクターに対する警戒も一服し周縁国市場も穏やか。イタリア(1.243%、±0.0bp)、スペイン
(1.181%、+0.7bp)、ポルトガル(3.075%、+2.4bp)は何れも小動き。3ヶ国加重平均の対独スプレ
ッドは横ばい。
【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】
・日本株は2日続落の後とあって買い戻し優勢。USD/JPYの安定もプラス材料。
・5月毎月勤労統計によると現金給与総額は前年比▲0.2%と市場予想(+0.5%)に反して減少。2015年6
月以来の前年比マイナスだが、当時は振れの大きい特別給与の不可解な減少によって下押しされていたの
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
1
に対し、今回は最重要項目の所定内給与が▲0.1%と弱く失望的。所定内給与は2015年中に明確な上昇を記
録した後、足もとでは0%近傍まで伸びが鈍化している。他方、マクロ賃金(常用雇用者数×一人当たり
賃金)は雇用者数の増加を主背景に堅調な伸びを維持。企業が、総人件費の拡大を抑えつつも、人手不足
を解消すべく雇用者数を増やしている様子が見て取れる。
・今晩発表の6月米雇用統計、NFPのコンセンサスは18.0万人、民間部門では17.0万人となっている。5
月雇用統計の+3.8万人という数値は米通信大手のストの影響で4万人弱、数字が下押しされていたため、
実勢よりも弱めの数値が示されていた可能性が濃厚。6月はその反動により実勢より高めの数値が出そう
だ。市場予想を満たせば、一先ず労働市場に対する不安は後退するだろう。
・しかしながら、そうした下で6月分も市場予想を下回った場合、米国経済及びFEDの利上げについてシ
ナリオ修正が進む可能性が高い。筆者は、企業収益が前年比減益となる下、既に設備投資が抑制されてお
り、そうした企業支出の減少傾向が、雇用コストの増加抑制ないしは削減に波及する可能性を指摘してき
た。雇用統計の弱さが一過性のものではないことが確認された場合、労働市場の回復期待が後退し、米国
経済の成長軌道が下方修正され、それに伴いFEDの利上げシナリオも見直しが進むだろう。筆者は、F
FレートがFEDの示すターミナルレートである3%に届く前に利上げサイクルが終了するとみており、
2017年後半には利下げが意識されるとの基本観を抱いているが、6月雇用統計が失望的な結果に終わった
場合、このような見方が広がるだろう。そうなれば、USD/JPYが下落基調を辿り、一部の資源・新興国通貨
が堅調に推移するという最近の傾向が長期化しそうだ。6月23日のBREXIT騒動は、先進国中銀の緩和期待
を通じて新興国通貨(特にBRL)に追い風となったが、今度は米雇用統計が新興国通貨の追い風になる可能
千
性がある。五輪開催を目前に控えたブラジルは思わぬ「お中元」を手にするかもしれない。
(10億㌦)
75
コア資本財受注
(前年比、%)
米 企業利益・雇用
40
(前年比、%)
8
70
30
65
20
60
10
2
55
0
0
50
-10
雇用者数
(右)
6
4
-2
企業利益
-20
45
05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
(備考)Thomson Reutersにより作成 太線:3ヶ月平均
(対USD、%)
10
16
-4
80
85
90
95
00
05
10
15
(備考)Thomson Reutersにより作成 企業利益:太線は4四半期平均
主要31通貨パフォーマンス(6/1-7/7)
5
0
-5
-10
日本円
ブラジル レアル
ニュージーランド ドル
南アフリカ ランド
コロンビア ペソ
インドネシア ルピア
ロシア ルーブル
チリ ペソ
韓国 ウォン
オーストラリア ドル
マレーシア リンギ
ペルー ソル
シンガポール ドル
台湾 ドル
スイス フラン
カナダ ドル
香港ドル
トルコ リラ
インド ルピー
イスラエル シェケル
ユーロ
チェコ コルナ
デンマーク クローネ
中国元
メキシコ ペソ
ハンガリー フォリント
ポーランド ズロチ
ノルウェー クローネ
スウェーデン クローナ
アルゼンチン ペソ
英ポンド
-15
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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