展覧会の構成 Ⅰ 海の神様、こんぴらさん 金刀比羅宮をめぐる信仰の形成と変遷は多様な歴史に彩られていますが、とりわけ「海の 神様」として厚い崇敬を受けてきました。 しわく 戦国時代より瀬戸内の塩飽諸島を拠点として活躍した塩飽水軍が熱心に信仰し、そのうち 瀬戸内一帯の海運・漁労関係者の間で水難除けの神様として知られるようになり、江戸時代 に入ると全国航路の発達にともなって、日本中にその名は広まりました。 船乗りたちが加護を願って海に放った流し樽や、船模型、船絵馬などからは人々の素朴で 一途な信仰心が感じられます。これらの民俗資料から、海の神様こんぴらさんと民衆との深 いつながりを紹介します。 えまやとうべえ 繪馬屋藤兵ヱ えま ふなえま 「絵馬・船絵馬」 明治 21 年(1888)奉納 明治初年から大正初めにかけて知ら れた絵馬師で、大阪黒金橋北詰に店 舗を構えた「絵馬藤」の有数の大作。 在来の廻船に洋式船も混じる、群船 を描いた珍しい絵馬です。 ふなもけい おもてひがきかいせんこんぴらまる 「船模型・表菱垣廻船金比羅丸」 寛政 8 年(1796)奉納 船大工として有名であった市左衛 門の製作で、構造的にも寸法的にも正 確、細密につくられた第一級の模型。 金刀比羅宮が有する船模型は 41 点 (重 要民俗文化財指定品)におよび、ひと つの寺社にこれほど多くのすぐれた 船模型が奉納されているのは全国に も類例がありません。
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