Market Flash USD/JPY 目先の追加利上げと将来の米景気減速 2016年10月6日(木) 第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 藤代 宏一 TEL 03-5221-4523 【海外経済指標他】 ・9月ISM非製造業景況指数は57.1とポジティブ・サプライズ。市場予想(53.0)を大幅に上回り、8月 から5.7pt改善。内訳は事業活動(51.8→60.3)、新規受注(51.4→60.0)、雇用(50.7→57.2)が目覚し い改善を記録。入荷遅延(51.5→51.0)は小幅に低下したものの、ヘッドラインは15年10月に次ぐ高水準 へ回帰した。ISM製造業やPMIなど関連指標の動きを踏まえると出来過ぎの印象が強く、季節調整を 疑いたくなるが、それを割り引いても米経済が9月に機首をもたげ始めた可能性を示唆している。 ・9月米総合PMIは52.3と速報値から0.3pt上方修正され、8月から0.8pt改善。内訳は、新規受注(52.6 →51.8)、雇用(51.7→51.4)、受注残(50.8→50.5)が低下したものの、複合性生産(51.5→52.0)が 改善。9月のPMIはGDP成長率の前期比年率+1.0%に整合するレベルと、決して堅調とはいえないが、 それでも3Q平均の51.9は2Qのそれを0.4pt上回っており、ダウンサイドリスクは後退している。 ISM非製造業 60 60 日本PMI(Markit) 58 製造業PMI 56 55 54 52 50 50 48 45 46 44 40 サービス業PMI 42 40 35 07 08 09 10 11 12 13 14 15 10 11 12 (備考)Markitにより作成 16 (備考)Thomson Reutersにより作成 13 14 15 16 【海外株式市場・外国為替相場・債券市場】 ・前日の米国株は反落。原油価格反発を受けてエネルギー株が堅調に推移したほか、長期金利の上昇が金融 株の追い風に。WTI原油は49.83㌦(+1.14㌦)で引け。原油在庫の調整進展が好感されている。 ・前日のG10 通貨はJPYの弱さが目立った反面、欧州通貨が全般的に堅調。GBPは31年ぶり安値を付けた反動、 EUR、CHF等はECBのテーパリング観測を背景に買い優勢。そうしたなか、USD/JPYは103.5に上伸。 ・前日の米10年金利は1.702%(+1.6bp)で引け。ISM非製造業の強い結果を受けて米債市場は売り優勢に。 欧州債市場(10年)は総じて軟調。ECBが緩和縮小を模索との観測報道を材料に、ドイツ(▲0.005%、+ 4.9bp)、イタリア(1.361%、+5.5bp)、スペイン(1.036%、+5.9bp)、ポルトガル(3.457%、+ 7.1bp)が揃って大幅に金利上昇。周縁3ヶ国加重平均の対独スプレッドはワイドニング。 【国内株式市場・アジアオセアニア経済指標・注目点】 ・日本株はUSD/JPY上昇を受けて4日続伸して寄り付いた後、17000手前でもみ合い(10:00)。 ・昨日発表の9月日経サービス業PMIは48.2と8月から1.4pt悪化。この指標の調査対象企業に小売業が入 っていない点は要注意だが、ここ1ヶ月程度の悪天候が消費を含めた生活関連サービスに影響した可能性 があるだろう。総合PMIは48.9へと0.9pt悪化した。 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 1 60 日本PMI(Markit) 58 製造業PMI 56 54 52 50 48 46 44 サービス業PMI 42 40 10 11 12 (備考)Markitにより作成 13 14 15 16 <USD/JPY7日続伸#FED追加利上げ#> ・USD/JPYは7日続伸して5日の米国時間には103.5まで水準を切り上げた。ここ数日、米経済指標が相次い で市場予想を上回ったことで、12月FOMCにおける追加利上げの可能性がますます高まり、場合によっては 11月FOMCに前倒しとの見方も浮上している。マーケットインパクトの強いISMは製造業、非製造業がと もに好調で、速報性に優れた消費者信頼感指数、新規失業保険申請件数、自動車販売台数も好調を維持。 それを受けて、市場予想との乖離を反映するエコノミックサプライズ指数はゼロ近傍で下げ止まり、反転 上昇の兆しをみせている。11月FOMC(1-2日)は大統領選を翌週に控えていることもあって、さすがに政 策変更は見送られると予想されるが、7日発表の9月雇用統計でよほどのネガティブ・サプライズがなけ れば、12月の利上げ織り込み度合いが一気に高まるだろう(現在は11月:23.6%、12月:62.1%)。 ・もっとも、USD/JPY が 105 を上抜けて年初来の下落を取り戻しにかかる可能性は低い。米経済は複数回の 利上げに耐えられるほど堅調とは言えず、直近3四半期平均の実質GDP成長率は前期比年率で僅か+ 1.0%と、2%弱とされる潜在成長率を大幅に下回っている。ブレイナード理事を筆頭にハト派のFEDメ ンバーが主張するよう、2013-15 年にかけて進んだ USD 高が既に相当な引き締め効果をもたらしており、 もはや複数回かつ断続的な利上げが正当化される状況ではない。USD/JPY は目先の利上げと将来の米景気 減速を同時に織り込む展開が続くと予想され、しばらくは 100±5 での推移が続こう。 米 実質GDP成長率 (前期比年率、%) 8 80 6 60 エコノミックサプライズ指数(米国) 40 4 20 2 0 0 -20 -2 -40 -60 -4 -80 -6 -100 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016 (備考)Thomson Reutersにより作成 太線:4四半期平均 14 15 (備考)Thomson Reutersにより作成 16 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 2
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