「マグノリグナン」の浸透力をさらに高める技術開発に成功 - カネボウ化粧品

2007 年 12 月 12 日
美白有効成分「マグノリグナン」の浸透力をさらに高める技術開発に成功
来春発売の薬用美白化粧品に応用予定
株式会社カネボウ化粧品
カネボウ化粧品・製品開発研究所は、城西大学薬学部・薬粧品動態制御学講座(杉林堅
次教授)との共同開発により、このたび、美白有効成分「マグノリグナン」の浸透力をさ
らに高める「高浸透処方」の開発に成功しました。これにより、「マグノリグナン」を従来
の2倍浸透させることが可能になり、ヒトへの有用性評価においても高い美白効果を得ら
れることが確認できました。
なお、本件は 2008 年3月に開催される薬学会第 128 年会にて発表を予定しています。
「シミゾーン」はメラニンがつくられやすく、表皮が厚くなっている!
カネボウ化粧品ではシミ部位の肌内部に着目した解析を進めてきました。これまでにも
シミ部位では基底層のメラノサイト数が多く、真皮には肥満細胞も多く存在し、メラニン
がつくられやすい状態になっていることを確認しています。今回、メラノサイト付近に、
メラニンを含んだ細胞が留まった状態で存在していることも確認できました(写真1)。加え
て新たに、シミ部位は正常部位に比べ、角層が厚く表皮全体も肥厚した状態にあることを
発見しました(グラフ1)。カネボウ化粧品では、このように正常部位とは異なる環境にある、
真皮∼角層までのシミ部位全体を「シミゾーン」と名付け(図1)、美白の新たなターゲッ
トとしました。
(グラフ1)
(写真1)
正常部位
シミ部位
表皮
角層
基底層
(図1)
角層
角層
正常部位とは異なる環境
にある真皮∼角層全体を
「シミゾーン」と定義
「高浸透処方」の確立まで
そして、表皮全体が肥厚したシミゾーンにも美白有効成分をより効果的に浸透させ、高
い美白効果を得られる方法がないかと考え、 チロシナーゼタンパク質の成熟阻害
効果を
有する美白有効成分「マグノリグナン」を、より速く、より多く肌に浸透させるための処
方を探究。このたび、「高浸透処方」の開発に成功しました。
マグノリグナンは高い美白効果を有しますが、製剤中での安定性を保つことが難しい成
分でもあります。そのため商品化の際には、マグノリグナンの安定性と美白効果の両立を
最大限に考慮して処方を組んでいました。しかし今回、シミゾーンの表皮が正常部位に比
べて厚いことがわかったことにより、もともと美白有効成分が浸透しにくい環境にあると
考えられるため、シミゾーンにおいて高い美白効果を得るためには、さらに浸透力を高め
ることが必要であるとの考えに至りました。
マグノリグナンを製剤に配合するには、溶解するために物性の近い油剤が必要となりま
す。そこで目指したのが、マグノリグナンと油剤の最適な
組み合わせ
と
配合バラン
ス 。①より多くのマグノリグナンを肌に届けるために新たな油剤の探索を行い、②皮膚へ
のマグノリグナンの放出量を高めるために、選択した油剤とマグノリグナンの配合バラン
スを調整する、という2ステップで処方を検討しました。
まず、数ある油剤の中からマグノリグナンと物性の近い油剤を選択、それらの候補油剤
を用いて浸透性を評価した結果、ジエステル系の油剤の一種に、マグノリグナンをより多
く肌に届ける効果を見出しました。続いて、この油剤とマグノリグナンの配合バランスを
検討。製剤中でマグノリグナンが安定して存在することができる限界の配合バランスに調
整しました。これにより、製剤中では絶妙な安定性を維持しながらも、肌に塗布すると製
剤から放出されるようにマグノリグナンが肌に浸透する「高浸透処方」が確立しました。
3次元皮膚培養モデルを用いた皮膚透過実験で
(グラフ2)<皮膚透過実験による比較>
も、高浸透処方は、一般的な処方に比べ、マグノ
リグナンの透過量が多くなっていることがわかり
ました(グラフ2)。さらに、このデータから薬物動
高浸透処方
多
態解析を行った結果、透過係数、つまり浸透力が
約 2 倍になっていることがわかりました。前述の
透過量
一般的な処方
研究により、シミゾーンにおいては、表皮が厚く、
また基底層のメラノサイトも多いことがわかって
いますが、今回確立した高浸透処方により、シミ
ゾーンの環境においても高い美白効果を得られる
ことが十分期待できます。
少
10
20
30
時間
ヒトでも高い美白効果を確認
さらに、高浸透処方を採用したマグノリグナン配合の薬用美白化粧品での2ヶ月間連用
試験を実施。連用前と比較すると、2ヶ月後は、メラニン指数(グラフ3)、肌の明るさを示
すL*値(グラフ4)ともに優位に改善が認められました。また、色素沈着部位と隣接部位の
色差についても、小さくなり、シミが目立たなくなっていることも確認(グラフ5)できま
した。
(グラフ3)
<メラニン指数の連用変化>
美容液
美容液(⊿L)
隣接部の色差の連用変化>
美容液(L*)
<肌の明るさの連用変化>
520
6.5
65
515
510
**
500
5
61
⊿L
505
6
5.5
**
63
L*
メラニン指数
(グラフ5)
<色素沈着部位と
(グラフ4)
495
59
490
**
**
485
480
**
3
2.5
2
55
連用前
正常部
2ヵ月後
隣接部
色素沈着
*
4
3.5
57
475
4.5
連用前
正常部
2ヶ月連用後
隣接部
色素沈着
連用前
2ヶ月連用後
⊿L(色素沈着-隣接)
さらに高いレベルでの「総合的な美白アプローチ」が可能に
カネボウ化粧品は、「総合的な美白アプローチ」として、メラニン生成抑制をはじめ、メ
ラニン生成に関与する様々なプロセスに着目した総合的な美白研究に取り組み、多くの成
果をあげています。
今回確立した「高浸透処方」と従来からの研究成果を組み合わせることで、さらに高い
レベルでの「総合的な美白アプローチ」が可能になります。カネボウ化粧品は、同処方を
応用した薬用美白化粧品を、来春にも商品化する予定です。