数学 4 B ノート1 2015 年 9 月 30 日 抽象ベクトル空間 集合 V がベクトル空間 (実ベクトル空間) であるとは、 0) V の上に加法 + と実数倍が定義されており、 加法に関し、 I-1) (結合法則) (x + y) + z = x + (y + z) for all x, y, z ∈ V I-2) (単位元の存在) ゼロベクトル 0 ∈ V が存在して、任意の x ∈ V に 対して、x + 0 = 0 + x = x をみたす I-3) (逆元の存在) 任意の x ∈ V に対して、x + y = y + x = 0 をみたす y ∈ V が存在する (y = −x であることがあとでわかる) I-4) (交換法則) x + y = y + x for all x, y ∈ V をみたし、実数倍に関して、次をみたすことである II-1) (ab)x = a(bx) for all a, b ∈ R and for all x ∈ V II-2) 1 · x = x for all x ∈ V II-3) (分配法則 1) a(x + y) = ax + ay for all a ∈ R and for all x, y ∈ V II-4) (分配法則 2) (a + b)x = ax + bx for all a, b ∈ R and for all x ∈ V 注:V に加法と複素数倍が定義され、上と同じ公理をみたすとき、V を複素 ベクトル空間とよぶ。より一般に、k を加法、減法、乗法、0 を除く除法ができ る集合 (体とよぶ) とするとき、V に加法と k の元に関する乗法が定義され、上 と同じ公理をみたすとき、V を k ベクトル空間とよぶ。最近では応用上、k と して有限体を考えることも重要になってきた。有限体とは、たとえば p を素数 とするとき、Fp = {0, 1, ..., p − 1} (p = 0 と思って加法と乗法を定義する) のよ うな体である。 例1.実数係数多項式全体を V とすると、V は実ベクトル空間になる。 例2.区間 [a, b] で定義された連続関数全体を V とすると、V は実ベク トル空間になる。 1 ベクトル空間 V の元 u1 ,...,un が基底であるとは 1) u1 ,...,un は一次独立である 2) V の任意の元は u1 ,...,un の一次結合で書ける (つまり、V のすべての 元 x は x = Σnk=1 ak uk の型に書ける (ak は実数)、ということ;授業の記 号で書くと、V = Span{u1 , ..., un }) の 2 条件をみたすことを言う。 u1 ,...,un が V の基底であるとき、V の任意の元 x は x = Σnk=1 ak uk の 型に一意的に書ける。また、V の次元は n 次元である、と言い、dim V = n と書く。 例.実数係数 n 次以下の多項式全体を V とすると、V は n + 1 次元実 ベクトル空間になる。 V , V をふたつのベクトル空間とするとき、写像 f : V −→ V が線型 写像 であるとは、 1) f (x + y) = f (x) + f (y) 2) f (kx) = kf (x) をみたすことと定義する。 dim V = n, dim V = m と仮定する。u1 ,...,un を V の基底、v1 ,...,vm を V の基底とする。 f (uj ) は V の元だから、v1 ,...,vm が V の基底であることから、 f (uj ) = m aij vi i=1 と書ける。このとき、行列 ⎛ ⎜ ⎜ A = (aij ) = ⎜ ⎝ a11 a12 .. .. .. .. am1 am2 .. .. .. .. .. a1n .. .. .. .. .. amn ⎞ ⎟ ⎟ ⎟ ⎠ を基底 u1 ,...,un , v1 ,...,vm に関する f の行列表示 とよぶ。 V = V のとき、つまり V から V への線型写像を V の一次変換 とよぶ。 dim V = n のとき、V の基底 u1 ,...,un を決めると、一次変換 f : V −→ V には n 次正方行列が対応する。 このように、抽象ベクトル空間に対しても、線型写像や一次変換に対応 する行列は、数を成分とする行列である。 2
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