カオリン粘土の一面剪断試験と周面摩擦特性

カオリン粘土の一面剪断試験 と周面摩擦特性
Direct Shear Box Test on Kaolin Clay and Characteristic of Side Friction
○古 谷 保・ 有 吉充 ・ 黒田 清 一郎 ・ 奥山 武 彦
Tamotsu Furuya, Mitsuru Ariyoshi, Seiichiro Kuroda, Takehiko Okuyama
剪
1.はじめに
3
断
市 販 の カ オ リン 粘 土 (土 粒 子密 度 2.738g/cm 、
液性限界 41.3% 、塑性指数 16.8 )を用いて、正規
応
圧密及び過圧密の供試体を作成し、圧密定圧排
反力側 φ=32゜
力
補正 φ=29゜
水試験及び定体積一面剪断試験を行い周面摩擦
載荷側 φ=27゜
特性を検討した。
垂
2.一面剪断試験機と試験法
直
応
力
2
図-1 定圧排水試験(過圧密、196kN/m 圧
2
用 い た 試 験 機 及 び 試 験 法 は 文 献 1 )に 示 し た 方
密、98kN/m 剪断)のベクトルカーブ
法と同じである。
5-1
体
4-1
積
3.圧密定圧排水試験(定圧試験)の特徴
2
3-1
変
2
2-1
化
図 -1 は 、196kN/m の垂直応力で圧密し 、98kN/m
1-1
の垂直応力で定圧試験を行った時の例である。
2
載荷側と反力側の垂直応力に 20 ~ 25 kN/m 程の
剪
差がある。定圧試験では、剪断速度が遅いこと
もあって、ワセリン等で剪断箱内面の摩擦を減
図-2
断
歪
定圧試験における剪断歪-体積変化曲線
らしても摩擦を除去しきれなかった。
図 -2 は 、 五 段 階 の 過 圧 密 比 ( 表 -1 ) に 対 す る
剪
供試体について、剪断歪と体積変化の関係を示
断
した図である 。過圧密比が大きくなるにつれて 、
応
φ=31゜
載荷側
力
剪断開始後に体積が幾分膨張するが、最大剪断
強度が発揮される前に体積減少の傾向を示して
いる。今回試験した程度の過圧密粘土の定圧試
験では、周面摩擦は試験中常に一方向であり、
2)
下箱の周面摩擦力の向きの逆転 は起こらない。
垂
図 -3
応
力
2
2
圧密、98kN/m 剪断)のベクトルカーブ
補正 φ=33゜
載荷側 φ=38゜
反力側 φ=30゜
断
応
力
定 体 積 試 験 で は 、 図 -3 の 例 の よ う に 、 周 面 摩
直
定体積試験(過圧密、 196kN/m
剪
4.定体積試験の特徴
補正
反力側
擦 が 軽 減 さ れ る 場 合 と 、 図 -4 の 例 の よ う に 、 載
荷側と反力側にかなりの差が生じ、載荷側より
も反力側の垂直応力の方が大きくなる場合があ
った。
垂
直
応
力
2
図-4 定体積試験(正規圧密、196kN/m 圧密、
2
196kN/m 剪断)のベクトル カーブ
農村工 学研究所 、 National Institude for Rural Engineering 、 土の静 力学的性質、 Statical caracteristics of soil
5.試験結果と考察
試験について、図 -5 に補正垂直応力のベクト
ルカーブ、図 -6 に反力側垂直応力のベクトル
剪 断 応 力
正規圧密と過圧密供試体の定圧及び定体積
φ
5-1
30゜
2-1, 3-1, 4-1
3-1
1-1 kg
2-1
正規圧密強度
2-2
1-1
カーブ、図 -7 に載荷側垂直応力のベクトルカ
ーブで整理した結果をそれぞれ示す(表 -1 参
照 )。
補 正 垂 直 応 力
図 -5 では補正垂直応力の場合で、ベクトル
図-5 補正垂直応力のベクトルカーブ
カーブの包絡線を強度とすることで、正規圧
密強度は定圧、定体積試験ともにほぼ良い一
φ
5-1
剪
致を示している。また過圧密供試体の定体積
2-1, 3-1, 4-1
1-1
3-1
2-1
力
る 。定圧試験の結果では 、過圧密比 4 までは 、
断 応
試験の結果はわずかに大きな強度となってい
31゜
正規圧密強度との差はほとんどないが、過圧
1-1
2-2
密比 5 の場合はいくぶん大きくなった。
図 -6 は反力側の垂直応力の場合で、垂直応
反 力
側 垂 直 応
力
2
力 98kN/m の 定体 積試 験が大 きく ずれ たが、
図-6 反力側垂直応力のベクトルカーブ
その他の結果はほどほどの直線性を示してい
る。過圧密供試体の傾向は図 -5 の場合と同様
である。
φ
5-1
1-1
応
2-1
力
2
応力 98kN/m の定体積試験が図 -6 の場合と逆
゜
2-1, 3-1, 4-1
断
場合で、全体に大変バラツキが大きい。垂直
剪
これに対して、図 -7 は載荷側の垂直応力の
3-1
2-2
1-1
に大きくずれている。
周面摩擦を上下供試体の厚さで比例配分し
て補正し、剪断面の平均垂直応力を推定する
方法は 、定圧試験では過圧密粘土においても 、
載
定体積試験では、載荷側と反力側の応力が
ほとんど同じになる場合と、載荷側よりも反
力側の垂直応力の方が大きくなる場合があ
り、周面摩擦による垂直応力の挙動について
は、さらに検討が必要である。
垂
直
応
力
図-7 載荷側垂直応力のベクトルカーブ
第一段階の簡易な修正法として妥当であると
思われる。
荷
表-1 図-5, 6, 7 の記号の説明
記号
圧密時と剪断時の垂直応力
1-1
98kN/m
2
2
圧密、 98kN/m
2
2-1
196kN/m
3-1
294kN/m
4-1
5-1
2-2
2
2
392kN/m
2
490kN/m
2
196kN/m
2
圧密、98kN/m
2
圧密、98kN/m
2
圧密、98kN/m
2
圧密、98kN/m
2
圧密、196kN/m
剪断
剪断
剪断
剪断
剪断
剪断
参 考 文献
1) 有 吉 充 ・ 古 谷 保 ・ 奥 山 武 彦 ・ 黒 田 清 一 郎 : 正 規 圧 密 カ オ リ ン 粘 土 の 一 面 剪 断 定 圧 排 水
試験 と 定体 積 試験 の 比較 、 平成 18年度 農 業土 木 学会 大 会講 演 要旨 集 、2006
2 ) 古 谷 保 ・ 小 倉 力 :「 反 力 計 測 型 一 面 剪 断 試 験 機 」 に お け る 周 面 摩 擦 の 補 正 法 と 斜 面 安
定問 題 への 適 用、 農 工研 技 報第 197 号 、 p.25-37 、 1999