P1. 30%流域影響率を用いた道路建設周辺の地下水低下の評価 Evaluation of the groundwater drawdown around road construction by using the 30% influence rate of the groundwater flow range ○木村隆行,高田正治,渡辺俊一,高津順,今田真治(エイト日本技術開発) 1.はじめに 道路建設にともなう丘陵地での周辺地下水への影響評価は,事前の段階では,高橋の手法で影 響圏を設定することが多い.しかし,その影響圏からはずれる領域でもしばしば影響を生じる. 木村 2)によれば,井戸や沢水の流域が,高橋の手法の影響圏に 30%以上分布する場合には影 響の可能性があり,30%未満では影響がないとされている.今回,3 次元浸透流解析の事例か ら,流域影響率 30%未満では,流量変化率が 82%程度保持されており,実用上の影響は少ない ことが考えられたので報告する. 2.高橋の手法による流域影響率の検討 図-1 に示すように,高橋の手法の影響圏と,周辺井戸や沢の観測地点の流域を,一般的地質 (深成岩,中古生層等)の 10 現場で整理した.各観測点の流域のうち,高橋の手法の影響圏 が占める面積割合を,流域影響率Eとした.また,図-2 に示すように,断面上で道路センター からの水平距離Rと比高Hを整理した. これら値と観測による影響の有無の結果を,関連づけて整理し,評価指標を検討したものが, 図-3 および 4 である.図-3 は,影響確率P(当データでの影響した観測点に対する割合)が, 道路センターからの距離R(m)と相関があり,同様に,流域影響率Eに対する影響確率は, 図-4 のようになった.図-4 では流域影響率 30%未満では影響は認められなかった.この場合の 影響とは,現実的に補償対象となるような影響を生じたと判定された場合である. 高橋の手法による影響圏 井戸流域 地形線 距離 R 井戸 比高マイナス 道路センター 切土 トンネル 比高プラス 地形線 距離 影響のあった井戸 図 -1 H R 井戸 影響のなかった井戸 平面モデル 図-2 断面モデル図 H 100 100% 90 90% P= -0.0014R + 0.8 R= 0.92 80% 80 % 70 60% 50% 影響確率 P 影響確率 P % 70% 40% 30% 20% 10% 60 50 40 30 20 10 0% 0 100 200 300 センターからの距離 図-3 400 R 500 600 0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (m) 流域影響率 R-P 相関図 図-4 E % E-P 相関図 3.3 次元浸透流解析による流域影響率と流量の比較 図-5 に示す 3 次元浸透流解析を行なった現場で,高橋の手法の影響圏を重ね,各沢の流量変 化を,トンネル施工前と施工後で比較した.各流域における高橋の手法の面積Aと流量減少量 △Q を図-6 に示したが,両者は相関があり,1km2 につき 1097m3/day の減少が認められた. また,その流量変化率 Q と流域影響率 E を図-8 に示したが,流域影響率 30%未満では流量 は 82%以上保持されており,顕著な影響は認められなかった.図-7 に示すように,高橋の手法 の境界より,地下水位のピークが内側にくるためと考えられ,断面モデルでの動水勾配比率の ラインの下にデータが分布する. 通常の場合井戸の適正揚水量の変化率は帯水層厚変化率より多少敏感ではあるが,少なくと も流域影響率 30%では水量が 30%減少ではなく,18%程度の減少になることが想定され,そ の程度では実用上の問題は生じていなかったと考えられた. 4000 (m3/day) 3500 △Q 高橋の手法による影響範囲 △Q= 1097A R= 0.954 3000 2500 2000 流量減少量 1500 1000 500 0 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 流域内影響圏面積 A (km2) 図-5 3 次元モデル平面 図-6 流域面積-流量減少量相関図 3.0 水位ピーク 高橋の手法範囲 動水勾配比率 R R=i1/i0 当初動水勾配 i0 2 次元での勾配比率 トンネル 低下時の動水勾配 i1 図-7 水位断面モデル 100% 断面で想定した動水勾配比率 R 90% R^(3/2) 80% 70% 流量変化率 Qr (%) 60% 50% 40% 30% 20% Qr = -0.583E3 + 0.331E2 - 0.655E + 1 R = 0.980 10% 0% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 流域影響率 図-8 E 流域影響率 E-流量変化率相関図 図-7 で示す動く勾配の比率を図-8 の R で示した.R=i1/i0 である.その場合,3 次元浸透流 解析で得たデータを包括するラインとなった.平行流であればその比率と考えられるが,谷筋 などでは 3 次元的に集水されてくるので,その 3 次元効果を考慮し,(3/2)で累乗すると,デ ータの中心位置に分布し,相関式ラインとほぼ一致した. 4.まとめ 事前調査の段階で調査計画を立案する場合,通常,得られる情報は地形だけであることが多 い.そのような場合,どの範囲まで利水調査を行えばよいのか,明確な指標がないのが現状で ある.当検討により,一般的地質の場合,高橋の解析で得られる影響面積が流域の 30%未満で あれば,流量は 82%以上保持されていると推定され,実用上の影響範囲の設定に有効な目安に なることが判明した.3 次元浸透流解析で,同じ 30%の影響にならない理由は,高橋の手法の エリア境界が,影響を生じた時の地下水等高線のピークにならず,内側にピークが生じている ためと考えられた. 今後,更にデータを集積し,より適正な評価手法の構築を進めていきたい. 文献 1)(社)日本トンネル技術協会:トンネル施工に伴う湧水渇水に関する調査研究(その2) 報告書,pp142,1983.2 2)木村隆行,永井隆:道路建設にともなう地下水低下の事前評価手法,日本応用地質学会, 平成 15 年度研究発表会講演論文集,pp213-216,2003.10 3) 木村隆行,永井隆,その他:道路建設にともなう地下水低下の評価手法,日本応用地質学 会中国四国支部研究発表会,pp7-10,2003.10
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