アクチノイド物性物理のトピックス日本原子力研究開発機構先端基礎研究センター神戸振作アクチノイド化合物の電子物性は、原子力技術の基礎として重要であるばかりでなく、物性物理の分野でも最先端の研究主題である。これは５ｆ電子が、金属が持つ遍歴性と絶縁体が持つ局在性のちょうど中間領域の性質を有し、また軌道自由度を持つことがあることに起因する。本発表では、まず最近我々が行った U、Np、Pu 化合物の磁性と超伝導物性の物性物理研究のトッピクスついて簡単に紹介する。物性物理トピックス Np,Pu 化合物超伝導体の新奇超伝導状態１）東北大金研大洗で発見された Np 化合物の超伝導体 NpPd5Al2 や PuRuGa5 では従来の超伝導とは異なった新奇超伝導状態が発現していることが明らかなってきている。新しいタイプの超伝導について議論する。２）２酸化アクチノイド（AnO2）の奇妙な秩序状態 UO2 や PuO2 などの物性は燃料データとしても重要であるが、低温でのその秩序状態は、多重極秩序という新しい磁気秩序状態であることがわかってきて注目されている。ここでは UO2, NpO2, PuO2 の大きく異なる基底状態について議論する。上記のトピックスは、物性物理に関するものである。最近、我々はそれに加えて物性物理的評価法を用いて原子力基礎技術に寄与するいわば学際領域のテーマも東北大金研と原子力機構の幾つかのグループの共同研究として推進しつつある。例えば以下のテーマがあげられる。学際領域トピックス１）巨視的電子物性（比熱、電気伝導度等）と微視的測定核磁気共鳴（NMR）法を用いた２酸化アクチノイド（MOX 含む）の欠陥構造の電子論的解明。この研究はまだ始まったばかりではあるが、大変有望であると思う。J-ACTINET に参加されている若い学生、研究者の方々の新たな参入を強く期待するものである。本発表ではこのテーマの展望と魅力について紹介したい。