低酸素状態でのマクロファージにおけるAGE-RAGEシグナリングとEgr

Diabetes, 2010, January
Hyperglycemia-Induced Reactive Oxygen Species
Increase Expression of the Receptor for Advanced
Glycation End Products (RAGE) and RAGE
Ligands
高血糖により誘導される活性酸素種はRAGEと
RAGEリガンドの発現を増加させる
2015/01/05
M1 瀧井靖歩
背景と目的
 高血糖状態ではミトコンドリアの電子伝達系においてROS産生が増加する。
(Diabetes, 2005)
 高血糖により誘導されたROSが細胞内でのAGEs産生を促進する。
(Nature, 2001)
High Glucose
ROS
?
RAGE
?
RAGE Ligand
AGEs
高血糖により誘導されるROSがRAGEおよびRAGEリガンドの発現に
与える影響を評価した。
高血糖によるROS産生のメカニズム
High Glucose
ROS
GAPDH
H+
H+
H+
Ⅰ
e-
Ⅲ
e-
Ⅳ
CoQ
Ⅱ
e-
AGEs
H+
H+
Cyt C
eFADH2
FAD
NAD+
NADH
+
H+
H2O
O2
ATP ADP+Pi
ATP
synthase
Heat
UCP-1
高血糖によるROS産生のメカニズム
High Glucose
ROS
GAPDH
H+
H+
H+
Ⅰ
e-
Ⅲ
e-
Ⅳ
CoQ
Ⅱ
e-
AGEs
H+
H+
Cyt C
eFADH2
H2O
FAD
NAD+
NADH
+
H+
H2O+O2
eMn-SOD
・ー
O2
O2
ATP ADP+Pi
O2
ATP
synthase
Heat
UCP-1
ROSによるAGEs産生増加のメカニズム
PARP : poly(ADP-ribose) polymerase
ADPR : ADP ribose
NA : nicotinic acid
High Glucose
High Glucose
ROS
ROS
DNA
GAPDH
PARP
ADPR
AGEs
NAD+
NA
GAPDH
GAPDH
ROSによるAGEs産生増加のメカニズム
High Glucose
Glucose
Glucose-6-P
ROS
GLO1 (Glyoxalase 1)
α-オキソアルデヒドを分解する
酵素。
Methylglyoxal (MG)
H
CH3
O
O
Fructose-6-P
GAPDH
GLO1
Glycelaldehyde-3P
AGEs
Methylglyoxal ↑ →AGEs ↑
NAD+
GAPDH
NADH
1,3-Bisphosphoglycerate
背景と目的
 高血糖状態ではミトコンドリアの電子伝達系においてROS産生が増加する。
(Diabetes, 2005)
 高血糖により誘導されたROSが細胞内でのAGEs産生を促進する。
(Nature, 2001)
 転写因子SP3のコリプレッサーであるmSin3AのMG修飾が、血管内皮細胞における
Angiopoietin2の発現を促進する。 (J. Biol. Chem., 2007)
High Glucose
High Glucose
ROS
MG
?
RAGE
?
RAGE Ligand
mSin3A
AGEs
SP3
MG-mSin3A
Angiopoietin2
高血糖により誘導されるROSがRAGEおよびRAGEリガンドの発現に
与える影響を評価した。
高血糖がRAGEとRAGEリガンドの発現に与える影響
ヒト大動脈内皮細胞
(HAEC)を低/高グルコース
下で5日間培養
(A) RT-PCR, (B)ウェスタンブロットを用いて、
RAGEおよびRAGEリガンドの発現量を評価
Low Glucose (LG) → 5 mM, High Glucose (HG) → 30 mM
HGでRAGEとRAGEリガンドの発現が促進した
高血糖がRAGEとRAGEリガンドの発現に与える影響
HAECをLG/HGで5日間培養
培養上清中のHMGB1をELISAで定量
HGでRAGEリガンドの発現が促進 した
高血糖がROS産生に与える影響
HAECをLG/HGで5日間培養
細胞内ROS産生量をCM-H2DCFDAを
用いて定量
HGでROS産生が促進 → UCP1, SOD2, GLO1過剰発現により抑制された
高血糖が細胞内でのAGEsの形成に与える影響
HAECをLG/HGで5日間培養
細胞内メチルグリオキサール (MG)AGEsをウェスタンブロットにて定量
HGでAGEs産生が促進 → UCP1, SOD2, GLO1過剰発現により抑制された
高血糖がGLO1の活性と発現に与える影響
HAECをLG/HGで
D-F) 24時間培養
G-I) 5日間培養
Glyoxalase1 (GLO1)の活性と
タンパク質発現量を評価
HGでGLO1の活性と発現が抑制→UCP1, SOD2, GLO1過剰発現により改善
RAGEとRAGEリガンドの発現にGLO1が与える影響
HAECにshRNAを導入し
GLO1をノックダウン
LG/HGで
5日間培養
(A) RT-PCR, (B)ウェスタンブロットを用いて、
RAGEおよびRAGEリガンドの発現量を評価
GLO1ノックダウンによって、RAGEおよびRAGEリガンドの発現が上昇した
細胞内でのAGEsの形成にGLO1が与える影響
HAECにshRNAを導入し
GLO1をノックダウン
LG/HGで
5日間培養
細胞内メチルグリオキサール (MG)AGEsをウェスタンブロットにて定量
GLO1ノックダウンによって、細胞内でのAGEs産生が促進した
NF-κBとGLO1がRAGEの発現に与える影響
HAECにsiRNAを導入し
NF-κB p65をノックダウン
LG/HGで
5日間培養
RAGE発現量をRT-PCRで評価
NF-κB p65ノックダウンによって、HG下でのRAGEの発現上昇が抑制された
NF-κBとGLO1がRAGEの発現に与える影響
HAECにアデノウイルスベクター
を導入しGLO1を過剰発現
LG/HGで
5日間培養
NF-κB p65特異的抗体で
クロマチン免疫沈降した後、
RAGEプロモーター配列を
RT-PCRにて定量
クロマチン免疫沈降 (ChIP)について
GLO1の過剰発現によってHG下でのNF-κBのRAGEプロモーター領域への結合が
抑制された
AP-1とGLO1がRAGEリガンドの発現に与える影響
HAECを用いて、
C) AP-1をノックダウン
D) GLO1を過剰発現
LG/HGで
5日間培養
C) RAGE リガンド発現量を評価
D) AP-1とRAGEリガンド
プロモーター領域の結合を評価
 AP-1ノックダウンによって、HG下でのRAGEリガンドの発現上昇が抑制された
 GLO1の過剰発現によって、HG下でのAP-1のRAGEリガンドプロモーター領域
への結合が抑制された
C57/BL6マウスからの細胞の単離
C57/BL6マウスの大動脈組織から、
Laser Capture Microdissection
(LCM)法を用いて、血管内皮細胞
と血管平滑筋細胞を単離
A) vWF (血管内皮細胞のマーカー)
B) α-actin (血管平滑筋細胞のマーカー)
の遺伝子発現をRT-PCRにて評価
組織中から、血管内皮細胞と血管平滑筋細胞が単離されたことが確認された
マウスにおけるROS産生およびAGEs産生にMnTBAPが与える影響
C57/BL6マウス
WT
STZ
STZ/MnTBAP
5 days
4 weeks
Vehicle
STZ
STZ
7 days
Vehicle
Vehicle
MnTBAP
C,D) 3-nitrotyrosineを定量
E,F) MG-AGEsを定量
MnTBAP :SOD様活性を有するMn複合体酵素
糖尿病によって促進されるROS産生およびAGEs産生がMnTBAPによって改善した
マウスの大動脈内皮細胞におけるRAGEおよび内因性RAGEリガンド
の発現にMnTBAPが与える影響
マウスの大動脈から
血管内皮細胞を単離
RAGEおよびRAGEリガンドのmRNA発現を評価
糖尿病によって促進される血管内皮細胞でのRAGEおよびRAGEリガンド発現が
MnTBAPによって改善した
まとめ
High Glucose
ROS
MG
GLO1
MG-AGEs
NF-κB
AP-1
高血糖により誘導されるROSが
RAGE
RAGEリガンド
の発現を促進した。
RAGE
RAGE Ligand
GLO1が
このメカニズムに対して、
抑制的に働くことが示された。
High Glucose
ROS
MG
GLO1
(Mit)
MG-AGEs
NF-κB
RAGE
ROS
AP-1
RAGE Ligand
(Nox)
RAGEについて
RAGE (Receptor for Advanced Glycation End Products)
●
AGEs (Advanced Glycation End Products, 最終糖化産物)の受容体として発見された、
膜貫通型レセプター。
●
AGEs以外にも内因性のタンパク質もリガンドとして認識する。
●
リガンド結合により、炎症やアポトーシスなど様々な反応を誘導する。
●
細胞内ドメインがmDia-1と相互作用することにより、シグナルを伝達する。
( J. Biol. Chem., 2008)
Ligand
RAGE
mDia-1
シグナル伝達
RAGEリガンドについて
AGEs
CML
還元糖とタンパク質などのアミノ基の反応により生成する。
O
OH
C
還元糖
+
タンパク質
AGEs
HN
CH2
Lys
non-AGEs ligand
HMGB-1 (High Mobility Group Box 1)
p53やNF-κBなどの転写因子の機能発現に関わるDNA結合タンパク質。
マクロファージや壊死細胞から放出され、RAGEやTLRのリガンドとして作用する。
S100ファミリータンパク質
脊椎動物に特有のタンパク質。カルシウム結合ドメインを持ち、細胞内カルシウ
ムイオン濃度を一定に保つバッファーとして働く。