Q: ついつい高配当株に魅力を感じてしまいます。何か

【設問】
2015 年の株式市場を振り返り、特筆すべきイベント・現象について記述しなさい。2016 年
についての見通しも含めること。なお、
「アナリスト・ストラテジスト・株式評論家」とい
った「専門的」立場による語り口、解説内容とすること。これは加点対象となります。
【回答】
2015 年はすでに 5 年以上続いた好調な相場という環境の下、資本市場の全体、資金の動向
という面から FRB (連邦準備銀行) の金利引き上げに向けての動きをどのように予測する
かということ、また、大統領選の前年であること、中国経済の減速、シェールオイルの生産
拡大などの影響をどう消化していくかが年初における課題であった。FRB の動向について
は、世界経済の中での米国経済の復調ぶりがどのように市場に反映されるかということで
もあり、市場参加者の多くは警戒とともに順調な上昇を期待するところであった。
当初、1 月には思いのほか市場が変動したため、機関投資家、ヘッジファンドの中には損失
を抱えたもの、機敏に投資行動を切り替えるものもあったが、この時点での結果をうんぬん
するのは早計であったろう。
その後、原油価格が想定を超えた下落となり、前年までの「原油は 160 ドルを超える」
「200
ドルを超えるのは確実」などという声は消える一方で、その主張を当然としていたもの、少
なくとも行動の指針としていたものがどのようになったのか、続報がないため結果ははっ
きりしない。なお、金価格についても類似のことが起きており、これまで「ドルは紙切れ」
「わたしはゴールドを買っている」などと主張してきた者の投資成果がどのようになって
いるのか定かではない。同じ主張を続けず次の投資行動に移っているものは見受けられる。
また、いわゆる「ドル高」という現象により、一部の企業業績が伸び悩んだが、それらの企
業の経営者にとって株価下落についての格好の excuse となったきらいがある。
中国経済については以前から判明していたことながら、経済成長率の低下が新たな不安材
料として認識されるようになり、夏から秋にかけての低調な市場の大きな要因となった。そ
の後も状況は変わっていないものの、現時点では主要指数のいずれもが夏以前の水準に戻
っている。この問題がどのように市場に消化されたものなのかは不明である。また、
「下が
ったら買いたい」や「中国崩壊で米国市場も崩壊する」などの立場をとっていた向きに利益
をもたらしたかどうかも別問題である。この局面においても多くのファンドや個人投資家
において「機動的な売買」
「機敏な戦略転換」を取る動きがあったようである。ただし、そ
れによって大きな成果を上げたという報道がないことから、
「安く買って高く売る」という
手法を成果につなげることができなかったものと想像される。
多くの市場参加者は「その時はそれが論理的だと思えた」という合理的な行動をとってきた
ところであり、その点において非難されるものではなく、年初より上昇した銘柄、下降した
銘柄、いずれにも現時点で納得のいく説明をすることができよう。ただ、市場では 1 年と言
わず、3 か月前の主張も棄却されるのが通例であるから、さかのぼってその時点での判断が
どうであったか語ることはされないという課題はある。
ヘッジファンドの本年 (2015 年) の成績は、市場平均に達しないものがほとんどという結
果になっていて、毎年の例に比べても少し悪いようであるが、これも通常のことであるため
取り立てて問題とするには当たらないだろう。ヘッジファンドが全体として例年以上に市
場平均を下回ったことは、彼らの各種の手法や投資理念などが機能しなかったことを示し
ているが、その結果に臆しない顧客は多数存在すると思われるため、高度な技法を駆使した
アルファ追求への大胆な挑戦は続くであろう。
2015 年を通じて FRB の政策予測が通奏低音のごとく影響を及ぼしていたといえるだろう
が、世界の通貨の全量が減るわけでもなく、大きなインフレ局面というわけでもないため、
これらについて日々の話題とすること自体が市場全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼし
た可能性は高い。2015 年も、ほとんどの市場参加者は、よく予測し、機敏に行動したとい
えよう。ただし、それらがすべて事前に予測され、結果が出る前にとられた行動であれば大
きな成功をおさめられたはずのところである。
なお、各種予測や市場環境を考慮することなく買い続けていれば市場を打ち負かしていた
はず、ということは原理的に正しいが、種々の制約がある機関投資家やその他の類似した行
動をとる投資家においては実行の難しいところである。
「9 割が負け組」という厳しい世界
では、これもやむを得ない。
2016 年に向けては、先のことであるため予測が難しい。石油価格の下落がプラスをもたら
すことが現れてくるところもある一方、不利益・低評価の続く業界もあると考えられる。
2015 年のはじめに不調が予想された銘柄のうちに大きな上昇があったり、多くの人の期待
を集めていたものが崩落したりということを見て、期待の低いものを買うべきであると考
えるのは一つの考え方である。ただし、それは 2015 年が始まる前にも同じように考えられ
ていたところであるから、やはりストラテジストの多くは「上がる株」
「期待の持てる業界」
を買うことを推奨するであろう。
なお、適切な予測がよい成果をもたらすということを前提とするなら、毎日、毎秒、数百万
回の予測を繰り返せば好結果をもたらすことになるのではないかと考えられるが、残念な
がら現在のところ、それが功を奏したという報告はないものと思われる。
(c) 2016, Hebo-Shobo (Kojin Toshika) Productions
All Rights Reserved.