下水道財政の課題と制度議論の方向性・・経営戦略の重要性

新・地方自治ニュース 2015 No.7 (2015 年7月 10 日)
下水道財政の課題と制度議論の方向性・・経営戦略の重要性
総務省下水道財政のあり方研究会が最終報告に向けたスケルトン整理を6月下旬に行った。下水道
財政が都市部・非都市部を問わず新たな段階に入ることを受け昨年来続けて来た議論のまとめである。
下水道財政は 2006 年度の地方財政措置において、料金収入で賄うことを基本としてきた分流式下水
道の汚水資本費へ公費負担を認め、処理区域内人口密度に応じて財政措置を講じる大きな見直しを行
った。これにより、過疎地等人口密度が低い地域を中心に汚水資本費単価が大幅に抑制されたものの、
依然として汚水処理原価が高い水準で推移し、平均 3,000 円/20 ㎥を上回る使用料単価となってい
る。一方、都市部等人口密度が高い地域は、経費回収率が高い水準となっている反面、施設整備が早
かった分、施設老朽化が進んでいるため、更新投資需要増加の時期に入りつつある。そうした中で、
総務省ではすべての地方自治体に対して中長期的な経営の基本計画である「経営戦略」の策定を求め
てきた。この経営戦略に関して今回の取りまとめでは、資本費の高い地方自治体に関しては、①大幅
な人口減少が見込まれる地域が多いこと、②汚水整備について引き続き新規投資を計画している自治
体が多いこと、③適切な汚水処理施設の選択、処理場の統合や広域化によるコストの抑制等に取り組
む必要性が高いこと、等から、下水道サービスの持続性を確保するため「経営戦略」の策定を高資本
費対策に係る地方財政措置に当たって要件とすることが適当であるとしている。
また、現行制度では高資本費対策は供用開始後 30 年未満の事業を対象としているものの、①自然
条件や地理的条件等により、構造的に資本費単価の高い地域で下水道サービスの提供が広がってきて
いること、②供用開始後 30 年を経過しても資本費が高い水準のまま推移している地方自治体が多い
こと、③建設改良地方債の元金償還金と減価償却費の差額分に資本費平準化債を充当し、後年度に資
本費の負担を繰り延べる制度がすでに導入されているものの、必ずしも 30 年程度で資本費が低下し
ていないこと等から供用開始後 30 年未満を要件とすることは実態に合わなくなってきていること等
により、高資本費対策について供用開始後 30 年未満の事業を対象とする要件については、撤廃を含
め見直しを検討すべきであるとしている。なお、資本費に係る地方交付税措置額と一般会計からの繰
入金とを比較すると、人口密度が高い地域を中心に繰入金に対する地方交付税措置額の割合が高くな
っていることが指摘されている。これは大都市及びその周辺地域の多くが公害防止対策事業計画の対
象地域(以下、公害防止対象地域という)となっており、当該地域の下水道事業に係る地方債につい
ては、通常よりも高い地方交付税措置率(元利償還金の 50%)である公害防止対策事業債を充当して
いることによるものと考えられる。下水道事業に充当される公害防止事業債の地方財政措置は、2006
年度の地方財政措置の見直しで、①公害防止事業対象地域とそれ以外の地域との間で下水道事業に係
る地方財政措置の水準に大きな差が生じていること、②公害防止事業対象地域は大都市及びその周辺
の地域が多く下水道事業についても、本来、料金収入で回収できる部分が大きいこと、③公害防止事
業対象地域における下水道の普及率が相当程度高まってきており、下水道事業そのものも都市だけで
なく幅広い地域で実施される公共サービスであること等を踏まえ、残事業の内容等を精査しつつ地方
財政措置のあり方を検討すべきとしている。
また、必要に応じて、積立金や料金徴収のあり方を検討し、将来の費用の急増に備えることも指摘
されている。各地方公営企業は条例又は議決により特定の目的のために積立を行うことが可能である。
但し、減債積立金、建設改良積立金等が将来の資産老朽化に向けた資金積立てに活用されている例は
少ない。今後の更新・老朽化対策事業等の急増に備え、各地方自治体が円滑に積立てを行うことがで
きるよう考え方や必要額の算出方法等のガイドラインを示し、経営戦略と整合性を持った新たな積立
金の類型を位置づける方向で検討することが望ましいとしている。
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