事業拡大のための M&A - 経営総合支援サイト入口

事業拡大のための
M&A
経営戦略
Ⅰ M&Aの活用法
1.後継者不在の解消/2.事業をランクアップさせる/3.事業の拡大
Ⅱ M&Aの基礎知識
1.M&Aとは/2.M&Aで発生する税務
Ⅲ M&Aの手法
1.株式譲渡/2.第三者割当増資/3.事業譲渡
4.会社分割/5.合併/6.株式交換/7.資本業務提携
Ⅳ 会社の売却
1.売れる会社の条件/2.買い手の着眼点
Ⅴ 会社の買収
1.成功するM&Aの条件/2.デューデリジェンス
Ⅵ 企業価値評価
1.企業価値評価とは/2.企業価値評価の手法
株式会社ストライクHPより
参考文献:「M&A実務ハンドブック」編書写鈴木義行
事業拡大のためのM&A
経営戦略
Ⅰ M&Aの活用法
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後継者不在の解消のために
経営者の平均年齢が60歳を超えつつある現在、後継者がいないという状況に直面して
いる企業が増えています。この課題を解決する方法として、M&A の活用が増加していま
す。次の経営を引き継ぐ企業を探し出すことに成功すれば、借入金の連帯保証も解消され、
そして経営を次世代に委ねることができます。
M&A によって会社が次の世代へと承継されることで、さらなる発展も期待できます。
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事業をランクアップさせるために
中小企業の中には「新事業を具現化したい。しかし、自社単独では経営資源が足りない」
「軌道に乗った事業をより発展させたい」と考える経営者も少なくありません。
事業をランクアップさせるために必要なのは資金や多様な人材、経営ノウハウです。
特に最近では、人材の不足が最も深刻な問題となっています。
M&A はそれらを効率的に結び付けます。短期間のうちに会社を成長させ、社会的な価
値を向上させことができるといえます。
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経営の選択と集中を進めて企業価値を向上させるために
企業が成長するには、競争力がなくなった事業や不得意な事業、将来的に必要性が乏し
い事業を合理的に整理し、競争力のある事業、得意な事業、戦略的な必要性が高い事業に
投資を集中させていく必要があります。
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事業を短期間で拡大するために
短期間で売上を伸ばしたい。自社に不足している人材や技術を取り込みたい。新規事業
に参入したい。このような目的に対し、M&Aは適しています。
すでに存在している営業基盤や技術、人材を取り込むことができるので、リスクが格段
に低くなるばかりでなく、時間も短縮でき、競合他社に一歩先んじることができます。自
社単独の場合よりも短期間で事業展開が可能となります。
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事業拡大のためのM&A
経営戦略
Ⅱ M&Aの基礎知識
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M&Aとは
M&A は英語の Mergers(合併)and Acquisitions(買収)の略です。一般的にM&A
とは「会社もしくは経営権の取得」を意味します。
つまり、M&A とは、複数の企業を一つの企業に統合したり(合併)、ある企業が他の企
業の株式や事業を買い取ったりする事(買収)をいいます。企業の合併や買収だけでなく、
事業譲渡や資本業務提携を含めた広い意味での企業間提携の総称として使われています。
また M&A は、自社に不足している経営資源(ヒト、モノ、カネ、技術、情報など)を
おぎない、事業の拡大や再構築を行うための経営戦略のひとつです。
手法
株主が受取る対価
会社の組織
資産負債、諸契約、
雇用の承継
株主への課税
株式譲渡
現金
存続する
変更なし
あり(譲渡所得税)
第三者割当増資
なし
存続する
変更なし
なし
事業譲渡
なし
会社は残るが譲渡さ
れるお行の運営会 再契約が必要
社は変わる
なし
株式交換
相手企業の株式
存続する
変更なし
一定の要件を満たせ
ば、なし
合併
相手企業の株式
消滅する
合併企業が直接承
継
いってい
新たに組織される
承継される(分割さ あり(譲渡所得税)
れる事業にかかる部 (みなし配当譲渡課
分)
税)
会社分割
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株式その他の資産
M&Aで発生する税務
M&A にかかる税金のなかで注意が必要なのが「所得税」と「法人税」です。
中小企業の M&A で多く使われる手法は、「株式譲渡」、「事業譲渡」、「第三者割当増資」
ですが、M&A の手法によって誰が税金を納めるのかが異なります。
●株式取得に関する税務
株式を譲渡したときの課税(譲渡所得課税)は一律 20%(所得税 15%※、住民税 5%)
であるのに対し、給与所得は累進課税(所得税 5%~45%)です。
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事業拡大のためのM&A
経営戦略
株式譲渡金額がある程度大きい場合は株式譲渡による税金は給与所得に課される税金に比
べ少なくなります。
●適格組織再編税制
合併、会社分割及び株式交換・移転のいずれも、税務上は原則として時価での譲渡とみ
なして評価損益課税がなされます。しかし、一定の条件を満たしている場合、時価ではな
く簿価で譲渡を行ったものとみなし、評価損益の計上を繰り延べることができます。
●のれんの取り扱い
税務上、非適格組織再編が行われる場合に限り、取得した資産と負債の差額の時価相当
額を「のれん」として資産計上し、償却していきます。
上記以外にも、次のような項目が挙げられます。
M&Aが適格もしくは非適格であるかにより、取り扱いが異なりますので、充分に留意
する必要があります。
・株式交換及び株式移転にかかる税務
・事業譲渡に関する法人税法の取り扱い
・合併の税務
・会社分割の税務
・消費税の取り扱い
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Ⅲ M&Aの手法
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M&Aの手法
M&Aの代表的な手法のメリット・デメリットを確認します。
■代表的な手法
①株式譲渡
②第三者割当増資
③事業譲渡
④株式交換
⑤合併
⑥会社分割
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株式譲渡
株式譲渡とは、株式を相手方に譲渡することで経営権を譲渡する方法。会社名や会社が
持っている債権債務、契約関係等は全て引き継がれるため、対外的には株主が変わった以
外に大きな変化はなく、取引先や従業員が安心できるようなしっかりとした相手先が買い
手企業となった場合、しかるべき引継ぎがなされれば事業がそのまま承継できる可能性が
高いといえる。(「マイペディア」より)
メリット
・M&A の手続が簡単で早い。
・法律上は別組織なので、別組織として運営できる。
・会社が有する資産、契約等を引き継ぐことができる。
・譲渡益に対する税率が低い。
デメリット
・不要な資産、簿外債務等があった場合でも引き継がなければならない。
・優良企業を買収する場合、連結財務諸表上ののれん償却費が税務上、損金算入でき
ない。
・買収資金の準備が必要である。
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●譲渡人の税務
【個人の場合】
• 申告分離課税方式で、税率は 20%(所得税 15%、地方税 5%)
•
所得税額等の計算
【法人の場合】
• 法人が株式を譲渡し、
譲渡益を計上した場合には、他の益金と同様に益金算入する。
※株式譲渡は、スキーム構築の上で役員退職金の支給や事前の配当の実施を行うケースが
あるので、株式譲渡に関する税務知識だけでなく、関係する税務知識についても十分に確
認を行う必要があります。
●株式の譲渡制限
•
譲渡制限株式:譲渡による株式の取得について定款で会社の承認を要する旨の記載
のある会社の株式のこと。
•
譲渡の可否は、取締役会設置会社では取締役会の決議、それ以外の会社は株主総会
の普通決議によって承認される。
未公開会社や同族会社といった会社で、会社にとって好ましくない者が株主になる
ことを防止することが目的。
譲渡制限株式を他に譲渡しようとする株主は、会社に対して、その他人が譲渡制限
株式を取得することについて承認するか否かを決定するよう会社に請求することが
できる。
•
•
3
第三者割当増資
株主であるかを問わず、特定の第三者に新株引受権を与える第三者割当によって増資を
行うこと。この増資によって会社の自己資本を充実させ、財務内容を健全化することがで
きる。(「デジタル大辞泉」より)
買収企業との関係は、出資比率により異なりますが、役員の派遣を伴うケースが中小企
業 M&A では多く見られます。
また第三者割当増資は、株式譲渡と同じく株式を取得する方法(株式取得)ですが、第
三者割当増資は既存の株主と買収企業の株主が共に経営をしていくため、100%の完全買
収は出来ません。
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経営戦略
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●買手企業
メリット
・M&A の手続が簡単で早い。時間を買うメリットがある。
・売手企業に欠損金がある場合、買収企業から生じる利益に対して有効利用でき、節
税メリットがある。
・再売却の際の手続が容易
デメリット
•買収資金の調達が必要。
•簿外債務があった場合、最終的に買手企業が負担せざるを得ない。
•買収価額のうちのれん相当額については償却できないため、のれん償却の節税メリ
ットが生じない。
●売手企業
メリット
•M&A の手続が簡単で早い。
•信用力の高い企業から出資を受けることで、信用力が増し、資金調達、事業展開に
有利にはたらく。
•会社に資金が入るので M&A と資金調達が同時に実現される。
デメリット
•買手企業にとっては常に一部取得となるので完全買収を望む買手企業には不向き。
●売手企業の株主
メリット
・売手企業の株主としての経営権は失わない。
デメリット
・現金を手にすることができない。
第三者割当増資において会計処理上留意すべき点
●買手企業の場合
買手企業にとっては第三者割当増資による M&A の会計処理も基本的には株式買取によ
る M&A の会計処理と同じになります。
これは買手企業にとっては売手企業の株主にお金を払うのか、それとも売手企業そのも
のにお金を入れるのかという違いだけで、お金を払って株式を取得することに変わりはな
いからです。
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事業拡大のためのM&A
経営戦略
●売手企業の場合
株式売却による M&A では売手企業そのものではなく売手企業の株主に会計処理の必要
がありましたが、第三者割当増資の場合には逆に売手企業そのものに会計処理が必要にな
ってきます。
売手企業から見れば、M&A とはいってもあくまで増資なわけですから、通常の増資の
会計処理をします。
このとき、新株式を発行しますが、新株発行に要した費用は『新株発行費』と呼ばれ、
以下の会計処理が選択できます。
(1)『新株発行費』として資産に計上し、3 年以内に均等額以上を償却する。
(2)一時に経費として処理する。
一般的には(2)にしたがい、一時の費用として処理することが多いようです。また、
(1)
の経理処理を選択する会社は金融機関などに苦しい会社と見られてしまうケースがありま
すので、留意が必要です。
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事業譲渡
事業譲渡とは、会社ごと売買するのではなく、会社の中身のうち、必要な事業に関連す
る資産・負債のみを売買する M&A の手法のこと。売り手企業(売却企業)のオーナーは、
譲渡した事業に対する支配権を完全に失う。店舗や工場といった土地建物などの有形固定
資産や売掛金・在庫などの流動資産だけでなく、営業権(のれん)人材、ノウハウといっ
た無形資産も譲渡対象となるため、買い手企業(買収企業)は必要な資産のみを譲り受け
ることができる。売り手企業は、同一市町村内では同一営業を再開することができなくな
るという法律(会社法)上の制約(競業避止義務)を受ける。また買い手企業にとっては、
契約で引き継ぐと謳われている債務以外は、原則として引き継ぐ必要がないため、簿外債
務などが発覚しても負担する必要はない。
(㈱シクミカ運営「会計用語キーワード辞典」より)
メリット
•簿外資産、簿外負債を引き継がない。
•買収価額のうちのれん相当額について償却ができるため、節税メリットがある。
•引き継ぐ従業員、契約を限定することができる。
•一部の事業のみを譲渡することができる。
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デメリット
•個別の資産、取引ごとに譲渡の手続を行わなければならないため、手続が煩雑。
•取引先との契約等がうまく引き継げないリスクがある。
•免許、許認可等の取り直しが必要である。
•譲渡益に対して、法人税が課される。
●譲渡人の税務
• 事業譲渡の法人税法上の取り扱いは、原則として通常の売買と同じ。
•
譲渡益は他の所得と合算され、申告所得がある場合には、法人税、住民税の課税関
係が生じる。
●株式譲渡との相違
• 税務上のリスクの承継 ・・・事業譲渡の場合は引き継がない。
• 資産調整勘定:譲渡会社の資産・負債は時価で譲渡するため、譲渡対価と時価純資
産に差額が生じる場合は「資産調整勘定」を計上する。
• 減価償却費の処理
• 消費税 ・・・譲渡資産を時価で取得するために消費税が生じる。
• 不動産取得税 ・・・不動産を取得する際の不動産取得税、登録免許税が生じる。
●取締役会
• 重要な財産の処分及び譲受けに該当する場合には、取締役会の決議が必要(会社法
362 条 4 項)となります。
●株主総会
次の場合には株主総会決議が必要(会社法 467 条)となります。
• 事業の全部の事業の全部の譲渡、事業の重要な一部の譲渡
• 事業全部の譲受
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会社分割
会社分割とは、会社の事業の一部または全部を分離し、他社に渡したり、新会社を作る
ことを会社分割という。
会社分割は、分割の方法である「新設分割」
「吸収分割」と株式の割当先が「分社方分割」
か「分割型分割」で4種類のバリエーションが生まれる。
(㈱シクミカ運営「会計用語キー
ワード辞典」より)
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メリット
•会社の部門ごと事業ごとに譲渡分割できる。
•分割の実施に際して、資金準備の必要がない。
•契約関係を包括的に承継することができる。
•資産、負債の移動に際して消費税が発生しない。
デメリット
•不要な資産、簿外債務等があった場合でも引き継がなければならない。
•許認可によっては引き継げない許認可がある。
•税務の取り扱いが複雑。
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合併
メリット
•合併の実施に際して、資金準備の必要がない。
•契約関係を包括的に承継することができる。
•企業規模が拡大し、スケールメリットが受けられる。
•営業権相当額について償却ができるため、節税メリットがある。
デメリット
•不要な資産、簿外債務等があった場合でも引き継がなければならない。
•売り手企業の株主が新たに株主として加わるため、同族経営からの脱却が求められ
るケースがある。
•売り手企業の株主が取得した株式の現金化が困難。
●合併の手続
①取締役会
• 合併は組織上重要な行為であるため取締役会で承認が必要。
②株主総会
• 原則:特別決議
• 例外:株主総会決議の省略可能
簡易合併(合併の対価が存続会社の純資産の 20%以下の場合)
略式合併
③債権者保護手続
•
効力発生日の 1 ヶ月前までに官報公告及び個別催告が必要。一定の場合には個別催
告を省略可能。
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株式交換
他の会社を100%子会社にするために、他社の株式と自社の株式を交換することを株
式交換という。
完全親会社と完全子会社をつくるための制度として商法に規定されている。
株式交換において完全親会社と完全子会社の株主に会計処理が発生する。
(㈱シクミカ運営「会計用語キーワード辞典」より)
メリット
•株式交換の実施に際して、現金交付をしない場合は資金準備の必要がない。
•子会社化することになるため、法人としては別法人として運営することができる。
•スクイーズアウトにより、株主全員が賛成しない場合でも 100%子会社化すること
が可能。
デメリット
•不要な資産、簿外債務等も引き継がなければならない。
•手続きが株式譲渡に比べると煩雑。
•買収価格のうちのれん相当額について償却できず、節税メリットに乏しい。
•買収企業が非公開会社の場合、株式の現金化が難しい。
●株式交換の手続
①取締役会
• 株式交換は組織上重要な行為であるため取締役会で承認が必要。
②株主総会
• 原則:特別決議
• 例外:株主総会決議の省略可能
簡易株式交換(株式交換の対価が完全親会社の純資産の 20%以下の場合)
略式株式交換
③債権者保護手続
• 原則:債権者保護手続きは不要。
• 例外:完全親会社株式以外の金銭等を交付する場合には、官報公告、個別催告が必
要となる場合がある。
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資本・業務提携
資本提携とは、資本参加を伴う業務提携をいいます。増資の引き受けなどにより、一定
の株式を持つことで、単なる業務提携(アライアンス)に比べ、より強い関係を作ること
ができます。
大企業と同じように、魅力的な中堅・中小企業があれば、取引先などから「資本提携し
たい」という提案を受けるケースもあります。これも M&A のひとつととらえることがで
きます(広義の M&A)。
資本を受け入れる側にとっても、商圏の拡大や商品の共同開発など、成長の種を自社の
経営資源のみとするのではなく、他社との協力関係を構築することによって、より発展さ
せることができます。
メリット
業務提携は簡単に提携したり解約することができますが、資本提携では、経営に参画し
てもらったり、財務面で支援してもらうなど、より強力な関係を構築することができ、)
M&A に近い効果が得られます。
デメリット
資本を受け入れ株主になってもらうことは、経営に一定の参加権を与えることになるた
め、機密情報などの情報開示も含め、どの程度の出資比率とするか、社内戦略上、明確
にする必要があります。
●資本・業務提携における注意点
株主は、原則として所有する株式の割合に応じて、株主総会で議決権を行使できます。
例えば、議決権の 3%以上を取得した場合、帳簿閲覧権を行使することが出来ます。
議決権の過半数を取得すれば、取締役の選任・解任や配当の決定などの可否が可能とな
り、議決権の 2/3 以上を取得すれば、M&A や定款変更の可否が可能となります。
一定割合以上の議決権を保有する株主には「少数株主権」という権利が会社法上認めら
れており、また原則として、議決権の 20%~50%未満を所有する場合は、
「持分法適用会
社」となります。
提携を行う際には、「どの程度の出資比率を与えるか」「相手企業と長期に渡り関係を維
持できるか」といった点に注意する必要があります。
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Ⅳ 会社の売却
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売れる会社の条件
会社が売れる条件について確認していきます。
●安定した利益を出す実力がある
会社の買い手にとって、買収後の投資回収がどうなるかは非常に重要です。これまで安
定して利益を上げてきた実績があり、今後もそれを続ける実力のある会社は、先の見通し
が立てやすいので非常に有利といえます。
●事業の将来性
将来有望な事業を早い段階で買えるということは、買い手にとって魅力的です。
“金の卵”
としてアピールすることができれば、買い手探しや買収交渉を有利に進めることができま
す。
●買い手にとっての相乗効果
新たに会社を買い取ることにより、既存の事業と相乗効果が生じることを期待します。
当事者では気付かなくても意外な組み合わせによる効果が見込まれて、予想していなかっ
たような買い手がつくこともあります。
●手に入りにくい“何か”を持っている
利益の出ている事業であっても、売れている店であっても、金の卵のような商品を持っ
ていても、第三者が容易に参入することができれば、わざわざ会社を買い取る必要はあり
ません。
逆に後から手に入れることの難しい、あるいは時間やコストのかかる、そういった経営
資源を有しているならば、それを必要とする人は会社ごと買い取ることを考えます。
(例)
• 固定客・店舗網・代理店網などの販売ネットワーク
• 優良な取引先等とのネットワーク
• 新規取得の困難な施設、設備等
• 独占販売権・商標権・特許権・事業者免許等の権利や資格
• 社内に蓄積された高度な技術やノウハウ
• 優秀な技術者、販売員などの人材
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事業拡大のためのM&A
経営戦略
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買い手の着眼点
売れる会社、つまり買い手がつく会社であるためには買い手の見方を知っておく必要が
あります。買い手企業は対象企業の事業内容が自社の戦略にマッチしているかどうかは当
然として、他にも以下の点を見てきます。
●買収金額
M&A の最大の交渉条件です。売り手としては高く売りたい、買い手は安く買いたい、
というのはごく自然なことです。
売り手にとっては『企業価値 = 理論的価値 + 心理的価値』となっているのに対し、買い
手は『企業価値 = 理論的価値』と認識しているのです。
●取引先との関係
決算書の内容は買い手が買収を決断する際にも、買収金額の交渉の際にも大きく影響し
てきます。買い手が特に注目するのは次のようなポイントです。
• 資金繰りの状況
• 不明瞭なコストの有無
• オーナーやその一族への報酬
• 役員報酬や従業員への給与
• 借入れと担保の状況
• 不動産や有価証券等の有無とその時価
• 在庫の状況
• 手形や売掛金、貸付金などの債権の状況
• 帳簿に載っていない負債等の有無
●株主構成
中小企業においても、株式が分散していることがあります。オーナーが実質的にすべて
の株式をコントロールできれば問題はありませんが、そうでない場合買い手は、買収が思
うように進められなかったり、買収後に好ましくない株主が残るという恐れを持ちます。
買い手は会社の株主構成について検討してきます。
●オーナーの人物像
条件的に折り合ったとしても、互いの信頼関係が築けなければ M&A はまとまりません。
また、中小企業においてはオーナーの存在が大きいことから、買収後も何らかの形で一定
期間前オーナーが残ることを求められるケースも多く見られます。
買い手は、時には M&A の交渉相手として、また時にはビジネスパートナーとして、売
り手のオーナーが信頼できる人物かを見てきます。
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Ⅴ 会社の買収
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成功するM&Aの条件
●成長のための M&A
右肩上がりの成長が望めない現在、無理に売上を伸ばそうと採算を度外視した値引販売
や強引な営業方法では企業イメージをダウンさせてしまう恐れもあります。自社の販路を
活用して顧客を増やし業績を伸ばすことはもちろん重要ですが、それだけでは成長拡大の
スピード感に物足りなさを感じる経営者も多いと思います。
M&A を活用して他社の営業基盤を取得すれば、一気に売上高を 2 倍、3 倍に伸ばすこ
とも可能となります。
●新規事業参入のための M&A
いつの時代でも成長事業は存在します。自社の主力事業が今後大きく成長する見込みが
ない場合、事業が比較的順調なうちに次の事業の柱として成長事業への参入を図りたいと
思うのは経営者であれば誰しも考えるところです。
しかし、ノウハウのない事業を自前で立ち上げるのはリスクが非常に高く、失敗すれば
せっかく順調に進んでいる現在の事業にまで影響を及ぼしかねません。
また自前主義に固執してモタモタしていた結果、時機(タイミング)を逸して後発企業に
成り下がり、成長事業として参入したものの大きな収益を挙げることなく結果的に撤退し
てしまう企業もあります。
「M&A は時間を買う行為である」といわれておりますが、これは「スピーディーに事
業参入する」という意味よりも「時機を逃さない」という意味の方が大きいといえます。
●相互補完のための M&A
最近では中小企業でも大企業顔負けの技術力を有している企業も多く見受けられます。
大企業では一定の市場規模が見込めないと研究開発を行わないため、ニッチマーケットに
集中的に経営資源を投入できる機動的な中小企業が大企業を出し抜くという現象が起こり
得ます。
中小企業に共通する弱みとして資金不足、貧弱な販路、管理部門の人材不足が挙げられ
ます。これら双方が持つ弱みを補完するための方策として M&A が有効に活用できます。
大企業は中小企業の持つ技術資産を自社の事業に役立てることができ、中小企業も大企
業との資本提携をテコに更なる飛躍が狙えるなど、まさに WIN-WIN の関係が構築できま
す。
成熟産業の企業同士であっても、お互いに相互補完できることがあれば M&A をするメ
リットがあるといえます。
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事業拡大のためのM&A
経営戦略
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デューデリジェンス
買収監査(デューデリジェンス)とは、買い手が M&A を最終判断するにあたり、公認
会計士や監査法人が会社の実態を把握するために行う企業の精密検査です。通常、売り手
と買い手が最終合意に向けてお互いに協力し合うことを約束する基本合意締結後に行われ
ます。
具体的な作業は、これまで検討の前提となっていた資料(財務諸表や契約書など)の正
確性、資産の実在性などの確認です。
●デューデリジェンスの観点
デューデリジェンスは、次の3つの観点から行います。
①財務調査
②ビジネスマンズ・レビュー(事業調査)
③法務調査
これらの観点から、買い手が対象となる会社の実地調査を行います。この実地調査によ
り事前に知らされていた情報と一致しているかの確認を行います。結果によってはM&A
が中止となることもあります。
各項目における調査は次のとおりとなります。
財務調査……過去データの調査、予測データの調査
事業調査……事業計画の検証、組織・人的資源、資産の機能的側面、業務システム、
取引関係状況
法務調査……外部との契約内容、権利の保全状態、違法行為の有無など
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経営戦略
Ⅵ 企業価値評価
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企業価値評価とは
M&A を検討する際に、「会社をいくら以上で売却すれば安売りではないのか」、あるい
は「買収価額はいくら以下でなければならないか」を知っておかなければなりません。
また、同業他社から合併を持ちかけられた場合など、自社の価値を正確に把握しておか
ないと、不利な合併比率で吸収されるかもしれません。増資の場合も同じです。株価を安
くすると新たな株主に議決権を必要以上に多く取られてしまうばかりか、会社の必要資金
が集まらないことにもなります。
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企業価値評価の手法
M&Aにおける売買金額を決定するうえで、企業価値評価を行います。企業評価の目的
に応じて、企業評価方法を選択することになります。
たとえば、相続をするときの企業評価と、M&A で第三者に会社を譲渡する評価では考
え方が全く異なります。相続税の場合は国税庁が定めている「財産評価基本通達」に従っ
て評価することになりますが、M&A で第三者に売却するときには会社の「のれん」が加
味された評価額でなければ売却には応じられないと思われます。
また評価方法の選択は、M&A の手法(スキーム)によって決めるのでもなく、事業の
特性や成長ステージ、その他企業の取り巻く環境などを鑑み、総合的に判断します。
さらに評価方法は、1 種類のみ採用するとは限りません。1 つだけ適用する「単独法」、
複数の評価方法を組み合わせる「併用法」や「折衷法」などがあります。
企業評価をする際に着目するポイントは、大きく分けて次の 3 つです。
①会社の保有している資産に着目する方法(純資産価額法)
②会社の収益またはキャッシュフローに着目する方法(DCF 法)
③市場価値(相場)に着目する方法(類似会社比準法)
①をアセット(またはコスト)・アプローチ(Asset または Cost Approach)、②をイン
カ ム ・ ア プ ロ ー チ ( Income Approach )、 ③ を マ ー ケ ッ ト ・ ア プ ロ ー チ ( Market
Approach)と呼びます。
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