ユニクロの経営戦略 経営学部 経営学科 2年 加藤 目次 1. 2. 3. 4. 5. はじめに 会社概要 経営戦略 失敗例 経営戦略 成功例 まとめ・展望 1. はじめに 近年、さまざまなアパレル企業が増えているなかで日本では圧倒的に名の知れているア パレル企業であるユニクロ。また、世界におけるポジションは、以下の表で示されている。 企業名(主なブランド名) 国 決算期 2015 年 1 月 売上高 前期比(%) 売上高 (Billions (現地通貨 (兆円) of ベース) dollar) インディテックス(ZARA) スペイン 2.46 20.32 +8.3 H&M スウェーデ 2014 年 11 月 2.17 ン 17.94 +17.8 Gap 米国 2015 年 1 月 1.99 16.43 +1.8 ファーストリテイリング (ユニクロ) 日本 2015 年 8 月 1.68 13.87 +21.6 L ブランズ 米国 2015 年 1 月 1.38 11.45 +6.3 PVH(Calvin Klein,Tommy Hilfiger) 米国 2015 年 2 月 0.99 8.24 +0.7 ラルフローレン 米国 2015 年 3 月 0.92 7.62 +2.3 (注)各社のアニュアルレポートより作成。2015 年 8 月末時点の為替レートで算出($1=¥121.18) 出所:http://www.fastretailing.com/jp/ir/direction/position.html ご覧の通り、世界でも ZARA や H&M などに続く第 4 位というとても高いポジションに いる。また、前期比では他社を圧倒する、+21.6%という高い伸び率を示している。では、 なぜユニクロは日本のアパレル業界では圧倒的なシェアを誇り、世界においても高い位置 2 にまで成長することができたのか、ユニクロの経営戦略について調べていきたいと思う。 2. 会社概要 まずは会社概要について説明していきたいと思う。1984 年、ユニクロ第一号を広島市中 区に出店。1990 年代に入ると生産基地・中国の工場管理を強化し、SPA 化を進めた。SPA 化とは、ファッション商品の企画、製造、販売を一手にマネジメントする形態のことで、 先ほど出た、ZARA や H&M もこのような手法を取っている。 出所:http://www.fastretailing.com/jp/group/strategy/uniqlobusiness.html 上図はユニクロのビジネスモデルである。一部、外部が関わっているところはあるもの の、ほとんどの工程を一貫して自社が行うことで、顧客ニーズをより的確につかむことを 可能にし、販売状況に応じた機動的な生産調整や賃料や人件費を抑えた経営を行うことが できる。その後、2000 年代に入ると海外進出の第一歩としてイギリスのロンドンに出店。 さらにその後アメリカや中国などの世界各国に進出を果たし、2015 年 11 月時点で国内に 844 店舗、海外に 864 店舗を展開する大企業となった。 3. 経営戦略 失敗例 先ほど述べたように、今となっては国内だけでなく海外にも多くの店舗を出店するまで に成長したユニクロだが、この成長の過程の中には多くの失敗を経験してきた。 3 ・「スポクロ」「ファミクロ」 ・野菜事業 ・海外進出 この 3 つの失敗例をここでは挙げてみようと思う。 1 つ目が「スポクロ」 「ファミクロ」である。これは 1997 年から 1998 年にユニクロが新 しく立ち上げた店舗のことで「スポクロ」は主に 10~30 代の男性をターゲットにジャージ やトレーナーなどのスポーツ服を販売する店舗で、「ファミクロ」は主に 20~30 代の母親 をターゲットに、子供服や婦人服を販売する店舗だったのだが、それぞれ販売している商 品がユニクロとは少し違うだけで、結局ユニクロとの明らかな違いがない上、ユニクロ事 業の拡張の一環として位置づけられていたが専門店としては業績が思わしくなく、衣料ブ ランドをユニクロに一本化するために撤退した。 2 つ目が野菜事業である。これはユニクロが 2002 年 9 月に子会社エフアール・フーズを 設立し、柳井社長が、「スーパーカーのような野菜をカローラ並みの価格」で提供すること で、長期的にはユニクロと並ぶ事業に育てようとしたのだが、農産物の安定的な商品供給 とコスト・在庫管理の難しさに、物流・情報システムの不備も加わって、当初の目標を実 現することは出来ず 1、3 年で約 28 億円の赤字が出てしまった。 3 つ目は海外進出である。2001 年にユニクロは海外進出の第一歩としてイギリスのロン ドンに出店を果たす。一時は 21 店舗まで拡大したが巨額の赤字を計上し多くの店舗を閉鎖 することとなった。原因は文化の違いだった。まず初めにイギリスでのユニクロの経営は イギリス最大手の小売チェーンであるマークス・アンド・スペンサーで経験を積んだ人を 社長にして、イギリス流の経営をやろうと大きな本部を作って、そこからすべての指示を 出すという方針だったが、本部の経費がかかり過ぎたのと、階級制度のような意識があり、 店長は店長、販売員は販売員と分けて考えていたため、ユニクロの、店長も販売員も本部 も一緒になって「全員で経営していく」という方針に合わなかったのだ。中国でも最初は うまくいかなかった。原因は中国に合わせようとしたからだ。進出した 2002 年当時、中国 はまだ消費者の所得が低かったので、価格を下げようとして素材を安価な中国製にしたり して、安く作って売ったがそれが評価されなかった。価格=品質と考えている人が中国で は多いので、こんな値段では品質が良くないに決まっていると思われたのだ 2。 このように大企業の現在の成功の裏にはこれらの多くの失敗を経験してきたことにある のだと思う。 4. 経営戦略 成功例 ではそのような失敗を乗り越えどのように成功を果たしたのか、ユニクロの成功例とし 1 2 http://www.csconsult.co.jp/teigen/teigen.html 柳井、田原(2010)。 4 て以下の 4 つが挙げられる。 ・ヒット商品の輩出 ・顧客セグメント ・接客サービス ・ブランド戦略 まず一つ目がヒット商品の輩出である。中でも代表的な商品がフリースとヒートテック である。1998 年、当時 2~3 万枚売ればヒットと言われるフリースを目標 200 万枚、1999 年には 850 万枚でいずれも完売し、2000 年にはフリースを 51 色に展開して 2,600 万枚と いう驚異的セールスを樹立し、この現象は「フリース旋風」と評され、衣料品流通業の革 命を席巻し社会現象を起こした。2004 年にはメンズ向けに発熱・保温・ドライ機能を兼ね 備えた秋冬向けの「暖かインナー」としてヒートテックを発売、翌年にはウィメンズ向け にも販売を開始し瞬く間に人気を呼び、2011 年には累計売上枚数 3 億枚を突破し今なお人 気を博している 3。 次に顧客セグメントである。顧客セグメントとは「お客さんの分類」という意味である が、通常どんな事業でも「どんなお客さんをターゲットにするか」をまず絞り込む。アパ レル企業においては、特定の顧客層にターゲットを絞り、ファッション、テイストを特定 した会社が多いが、ユニクロは、年齢、性別、人種などではターゲット顧客を特定しない。 ユニクロは、男女や年代を問わず幅広い層をターゲットに"みんなの服"というブランドイメ ージを提供している。ユニクロのマーケティング戦略をよく見ると、 「ヒートテック」 「UV カット」といった商品機能のセグメントを軸に戦略を展開していることが分かる。あらゆ る人が着用できる服、つまりベーシックカジュアルを高品質かつ低価格で提供することで 幅広い層から支持を得ているのだ 4。 3 つ目は接客サービスである。ユニクロはヘルプユアセルフ方式を採用している。具体的 に説明すると、お客様がチラシなどの広告を見て、欲しい商品を決め、店内に入ってディ スプレイによって商品をすぐに見つけ、什器や商品についている POP やショーカードに書 いてある情報を理解し、欲しいものをレジまで運び、精算するという販売方式である。つ まりお客様は必要な時にだけスタッフから説明を受けるだけで、基本はお客様自身が自分 の意志で自由に買い物を楽しむことができる、という販売方式なのだ。この販売方式によ って少数のスタッフで店舗運営することができ、コストを最小限に抑えることができるの で、低価格での商品の販売に少なからず貢献していると思う。 最後はブランド戦略である。ブランド戦略とは商品やサービスのコンセプトを特定のユ ーザーに価値があると認識させ、市場でのポジショニングを築くマーケティング戦略のこ 3 4 http://www.uniqlo.com/jp/news/topics/2012101201/ http://www.jmac.co.jp/wisdom/marketing/28_9.html 5 とを言う 5。ではユニクロはどのようなブランド戦略を行ったのか、まず1つに挙げられる のがコラボ商品である。これまで、ジル・サンダーやイネス、ルメール、カリーヌといっ た世界のファッション業界でも大物と呼ばれる人たちとコラボし、商品を販売することで ユニクロのイメージをより上げることに成功した。またCMでは数々の著名人を起用してお り、最近ではテニスの世界ランキング 1 位のジョコビッチと契約を結んだ。またテニスの 錦織圭選手がジーンズやヒートテックのCMに起用したことで、私のアルバイト先のユニク ロでも「錦織圭選手のCMで履いていたジーンズはどこにありますか?」などという質問を しに来られる方も多く、その影響力は計り知れないものだと実際にこの肌で感じることが できた。 5. おわりに 以上から分かる通り、ユニクロは決して成功ばかりでここまでのし上がってきたわけで はないのだ。柳井社長が「10 回新しいことを始めれば 9 回は失敗する」というように何度 も何度も試行錯誤し、失敗を繰り返し経験したことが、成功例で述べたようなフリースや ヒートテックなどの爆発的人気商品の開発や、いかにお客様に満足していただけるか、人々 をどのようにすれば惹きつけられるのかといったブランド戦略の成功に繋がったからこそ、 今のポジションにまで来ることができたのだと思う。 ではこれから先さらにユニクロが飛躍していくにはどうすればよいのか。私は以下の 2 つがカギになると思う。1 つはヒートテックのような大ヒット商品を再び生み出せるかであ る。フリースやヒートテックの発売以後エアリズムなどはヒットしたが、ユニクロの代名 詞となるような商品はまだ出ていない。そういった商品をまた輩出できるかが重要になっ てくると思う。2 つ目は海外でのユニクロの認知度である。会社概要で述べたように現在海 外では 864 店舗展開していると述べたが、実はそのうちの 9 割近くが中国や韓国といった、 アジアでの展開なのだ。なので、より世界中で認知度を上げるには欧米諸国にも多くの店 舗を拡大していくことがカギになると思う。 5 http://wakarukoto.com/?p=16213 6 参考文献 柳内正、田原総一郎「世界で稼ぐ気がないのは、経営者の怠慢だ」 ( 『中央公論』2010 年 11 月号)(http://www.chuokoron.jp/2010/10/post_37.html) 参考 URL ・http://wakarukoto.com/(㈱サイクス) ・http://www.csconsult.co.jp/index.html(C&S Consultants.inc 2004 年 4 月のテーマ) ・http://www.fastretailing.com/jp/(ファーストリテイリング) ・http://www.jmac.co.jp/(㈱日本能率協会コンサルティング) ・http://www.uniqlo.com/jp/(UNIQLO) 7
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