中央情勢報告

全日教連
全日教連
中央情勢報告
中央情勢報告
No.15
発行
平成27年10月23日
子供の命を守るため、児童相談所の体制強化を!
=子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第11次報告)~厚生労働省~
厚生労働省社会保障審議会児童部会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会は、10月8日、
平成25年4月1日から平成26年3月31日までの間に、子ども虐待による死亡事例として厚生労働省が
各都道府県を通じて把握した63例(69人)、重症事例(死亡に至らなかった事例)18例(18人)につ
いて分析等を実施し、明らかになった課題を受けて報告をまとめた。厚生労働省は、本報告の提言を
受け、児童虐待防止策をより一層推進していくとともに、地方公共団体、関係団体及び関係者に周知
を図り、本報告の実現に向けた取組を進めるとしている。
子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第11次報告)(全日教連要約・抜粋)
死亡事例の分析
○ 心中以外の虐待死
・死亡した子どもの年齢は、0歳が44.4%と最も多く、0歳から2歳までを合わせると66.7%
・虐待の種類は、身体的虐待が58.3%、ネグレクトが25.0%
・主たる加害者は、「実母」が44.4%と最も多く、次いで「実父」が22.2%
○ 心中による虐待死
・主たる加害者は、「実母」が54.5%と最も多く、次いで「実父」が27.3%
○ 関係機関の関与
児童相談所 市町村(虐待対応担当部署) 要保護児童対策地域協議会
心中以外の虐待死事例
36.1%
27.8%
22.2%
心中による虐待死事例
14.8%
14.8%
7.4%
○ 心中以外の虐待死事例が発生した市町村の要保護児童対策地域協議会の進行管理会議における
1回あたりの平均検討事例数は102.1例で、会議の平均時間は2.9時間
○ 児童相談所担当職員の受け待ち事例数(平成25年度)
・1人あたり平均109.1件であり、そのうち虐待事例として担当している事例数は平均65.0件
課題と提言
○ 地方公共団体への提言
・虐待の発生予防につながる子育て支援サービス等の着実な実施
・虐待のリスク要因等に関するスクリーニングの適切な実施と結果を踏まえた迅速な支援の実施
・児童相談所及び市町村職員の相談援助技術の向上
・複数の関係機関が関与していた事例における連携のあり方
・要保護児童対策地域協議会の効果的な運営
・専門職の積極的な採用や人事ローテーションの工夫による経験者の効果的な配置
・民間団体との連携や外部の専門家の活用による専門性の向上
・業務量に見合った職員配置数の確保
○ 国への提言
・虐待の早期発見及び早期対応のための広報・啓発の着実な実施
・児童相談所と市町村が、初期対応において連携しながら適切な支援を行うための体制整備
・地方公共団体における人員の確保の推進
・職員の専門性が担保、蓄積されるような制度の工夫
・要保護児童対策地域協議会の活用の徹底と同協議会設置の促進
・虐待死事例等の再発防止を目的とした検証の積極的実施と検証結果の活用促進
(詳細は:http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000099920.html)
児童相談所での児童虐待相談対応件数自体は平成25年度に73,802件、平成26年度は88,931件(速報
値)と増加の一途をたどっている。今回の調査は、平成25年度において、子供虐待により死亡事故に
至ったケース(63事例)についての報告であるが、そのような重篤な事案についても関係機関が関与
していた割合が4割にも満たない状況である。また、児童相談所担当職員の受け待ち事例数(平成25
年度)は一人あたり平均109.1件と依然として極めて多いことが覗える。
全日教連は、 子供たちを取り巻く様々な課題が増加の一途をたどる現状を踏まえ、それらに適切
に対処するため、国に対し、児童相談所の機能強化、職員の増員と専門性の向上、地域の実情を踏
まえた施設の増設を都道府県等に指導するとともに財政的な支援を図ることを訴えていく。