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全日教連
要望結果報告
要望結果報告
(発行
平成27年6月29日)
第6次中央要請行動
文教予算等に関する要望
文部科学省
要望日時 平成27年6月23日(火) 15:00~15:30
回答者 【大臣官房】
大臣官房審議官(初等中等教育局担当)
【初等中等教育局】
初等中等教育企画課
教育制度改革室 義務教育改革係長
財務課 給与企画係長
財務課 定数企画係長
【生涯学習政策局】
情報教育課 庶務係(併)ICT環境整備係長
要望者 【全日本教職員連盟】
委 員 長
岩野 伸哉
副委員長
吉田 浩之
矢代 浩己
執行委員
安本
薫
単位団体専従
町田 賢一
事務局長
古川 俊裕
事務局次長
郡司 隆文
香田
勝頼
小坂
朝之
井上
真登
中岡
司
氏
岩岡
松下
廣石
寛人
大海
孝
氏
氏
氏
壬生
篤志
氏
西川
達也
傍島
賢一
要望(全日教連)
1 教育諸課題に対応するために、教職員定数の改善を図ること
(1) 新たな教職員定数改善計画を策定し、義務標準法の改正を伴った、計画的・安定的な基礎定数の充実を
図ること
(2) 今日的な教育課題に対応するため、加配定数の更なる充実を図ること
(3) 小学校高学年における専科指導を推進し、専科教員の大幅な増員を図ること
(4) チーム学校実現のための外部人材の登用が、教職員数の縮減につながることのないようにすること
2 教育における地域間の格差を是正するために、義務教育に係る各費用を含めた義務教育費については、全
額国庫負担とすること
3 人材確保法の初心に立ち返り、教職員を目指す優秀な人材を確保するため、優遇部分の大幅な拡充を図る
こと
4 土曜日の教育活動の充実においては、学校と地域の役割分担を明確にし、平日における授業の過密化の解
消を図り、児童生徒や教職員の負担を軽減することで教育の質の向上を図る視点からの制度設計を行うこと
5 学校においてICTを効果的に利活用する学習・教育環境整備においては、人的・物的環境を整備するよう各
自治体に指導するとともに、地域間格差が生じないよう必要に応じて財政的支援を行うこと
6 全国どの学校においても道徳教育の充実が図られるようにすること
(1) 「特別の教科 道徳」が実施されるまでの間も、道徳教育の要としての「道徳の時間」が実施されてい
ない自治体に対し、指導を行うこと
(2) 「特別の教科 道徳」については、指導内容や目標を明確化し、評価の在り方等について慎重に議論を
重ね、学校現場に混乱を来さないような実効性のある制度設計を行うこと
7 60歳超の教職員の勤務においては、勤務の特殊性を踏まえ、職務内容の見直し、再任用者の定数外で
の任用やそれに伴う予算の確保等を見据え、現行制度の検証を行うこと
8 自然災害等から子供たちの命を守る体制を構築すること
(1) 学校施設における地域の防災拠点としての機能強化を図ること
(2) 学校安全管理や安全指導に関する職務を担当し、災害発生時には機動的な活動ができる安全担当教職員
(仮称)を専任配置すること
9 教育専門職に相応しい給与・勤務条件を確立すること
(1) 教員のキャリアの複線化を実現するため、副校長・主幹教諭・指導教諭の配置を更に促進すること
(2) 特2級となっている主幹教諭・指導教諭を3級とし、完全な5級制の給与体系にすること
10 児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた特別支援教育の充実を図ること
(1) 関係諸機関との連絡調整や担任及び保護者との連携等、学校における特別支援教育の中心的役割が果た
せるよう、特別支援教育コーディネーターを専任化すること
(2) 通級による指導実施状況調査結果に基づき、障害のある児童生徒一人一人に対する支援の質を一層充実
させるための教職員の更なる配置を行うこと
11 小中一貫教育においては、校種間の接続に関する課題に対して十分機能するよう、各学校や地域の実情に
応じた教職員の確保や配置等の環境整備を行うこと
12 教員免許更新制が教職員の資質・能力の向上につながるよう、制度の課題分析と改善を行うこと
(1) 受講にあたっては、費用は国が負担し手続きを簡素化すること
(2) 選択領域においては受講者が自ら意欲を持って学べるような講習内容の在り方を検討すること
(3) 免許状有効期間の現職研修を制度に組み入れる等、常に自己研鑽に努めている教員には新たな負担を強
いることがないようにすること
13 教職員の精神疾患による休職者の増加等の問題について、予防対策についての周知を徹底するとともに、
復職後の経過観察等も含む復職支援プログラムを実効あるものとするために、学校及び医療機関をはじめと
する関係機関が連携を密に図るための環境整備を行うこと
14 休職事由に介護を含めるとともに、職務に対する情熱がありながら中長期的な介護が必要な状況にある教
職員に対し、その身分保障について検討を行うこと
回答(文部科学省)
●要望1について
学校現場を取り巻く課題が複雑化・困難化する中で、時代の変化に対応した新しい教育に取り組ま
なければならない状況を十分踏まえ、教育環境の充実を図ることが重要である。文部科学省としては
いじめへの対応や特別支援教育等、学校が対応しなければならない教育課題が大幅に増加しており、
これまで以上にきめ細かい対応が必要となると考えている。また、グローバル社会に対応する主体的
・協働的な学びであるアクティブラーニングを実施するための指導体制の充実が必要であること等を
踏まえ、教職員定数の戦略的充実が必要であると考えている。特に加配定数については、全日教連を
はじめ全国知事会等、多くの団体から拡充の要望を頂戴しており、これらも十分踏まえ、義務標準法
改正も含めた様々な方策について、来年度概算要求に向けて具体的に検討していきたい。
●要望3について
教員給与については、教員に優れた人材を確保するため、人材確保法により一般の公務員の給与水
準に比較して必要な優遇措置が講じられなければならないとされている。新学習指導要領の実施やい
じめ問題等への対応等、学校を取り巻く環境は大きく変わってきており、国際的に見ても我が国の教
員は多忙であることが明らかになっている。教育再生実行会議の第5次提言、第7次提言においても、
「人材確保法の初心に立ち返り教師の処遇を確保する」と提言されており、今後とも優秀な教員を確
保していくためには、人材確保法の精神を踏まえて教員の職責に見合った処遇の確保が必要と考えて
いる。
●要望5について
教育においてICTを活用することは、子供たちの学習への興味・関心を高め、分かりやすい授業や
子供たちの主体的な学びを実現する上で効果的であり、確かな学力の育成に資するものと考えている。
教育の情報化については第2期教育振興基本計画に定めた目標水準を達成するために平成26年度から
平成29年度まで、単年度約1,678億円の地方財政措置を講じることとされている。そのため、文部科
学省においては、各教育委員会に対する当該措置内容の通知、各種会議での説明、パンフレットの作
成配布、自治体別のICT環境整備状況の公表等により、自治体におけるICT環境の整備の取組を促して
きたところだ。また、ICTを活用した教育の取組については地域間で差異が生じていることから、平
成27年度の予算においては大学と連携し研修プログラムを策定する自治体への支援、ICTを活用した
カリキュラムを策定する自治体への支援、あるいはICT環境の整備等に際し助言を行うアドバイザー
の派遣等に係る経費を計上し、自治体の状況に応じた予算を講じることとしている。文部科学省とし
てはこれまでの取組による成果を生かしながら、今後とも教育におけるICT活用を積極的に推進した
いと考えている。
●要望11について
小中一貫教育については改正学校教育法等が4月17日に議決され、来年度4月1日から義務教育学
校の制度が開始される。義務教育学校においては、義務教育学校の前期課程及び後期課程は現行の小
学校及び中学校に準じた教育が行われる。学級編成及び教職員定数の標準についても現行の小学校及
び中学校とそれぞれ同等に算定をすることとしている。義務教育学校は一つの学校であり、校長は一
人となる。一方で学校段階間の接続を円滑にマネジメントするために副校長、または教頭を一人加算
している。従って小学校、中学校が義務教育学校に移行する場合には、教職員定数は同数となる。ま
た、現行の小学校、中学校と同様に、小学校の専科指導等、指導方法の工夫改善や、教育指導上特別
な配慮が必要な児童生徒への対応、あるいは主幹教諭の配置に伴うマネジメント機能強化等に対する
加配措置を講じることとしている。併せて、退職教員等のサポートスタッフの配置も進めることとし
ている。文部科学省としては、これらの施策を通じて、義務教育学校の教育環境の充実に努めていく。
意見及び回答
●教職員の定数改善について
【全日教連】
財政審は、少子化等により子供の数が減るからそれに合わせ教員の数も減らすという単純な教職員数の
削減を示した。これに対し、加配定数の削減を阻止すると言うことだけで終わらないようにしていただき
たい。現場の実態を踏まえ、具体的にきちんとした戦略の上で、加配定数及び義務標準法の改正を伴った、
計画的・安定的な基礎定数の充実の実現を要望する。
【文部科学省】
今回の財政審における加配定数の削減はこれまで無かった切り口である。約69万人の教職員定数がある
中で、約63万人が基礎定数、6万4千人が加配定数であり、10対1の割合で措置されている。その6万4
千人の加配定数を今後10年間で4,200人減らすというのが財務省の考え方である。考え方としては、1学
級当たりの加配定数の割合は6万4千人の加配を今後維持したら上がっていく。一学級当たりの加配の割
合を一定にすれば加配定数を4,200人減らせるという算定である。そうすると加配の教職員定数は6万を
切ることになる。これは極めて機械的な説明である。各都道府県の定数措置の中で約9割は加配定数を様
々な形で使っている。これらは国庫負担上の加配であり、加配定数が削減されると、全額、各都道府県の
予算で措置することとなり、各自治体は、財政上耐えられない。一方、基礎定数は削減することができな
い。今回の財務省の定数削減の考え方は非常に機械的なもので、文部科学省としては具体的に反論するこ
とができたと考えている。
【全日教連】
5月に自民党の教育再生実行本部から「チーム学校」について提言がなされた。教員を中心として多様
な専門性を持つスタッフを学校に配置し、学校の教育力・組織力を向上させるという趣旨だが、専門性を
持つスタッフがいても、それらをマネジメントするのは、やはり教員ある。従って外部人材を登用するこ
とで教職員数が減らされることのないようにしていただきたい。
【文部科学省】
27年度概算要求に向けて策定したの10か年「新たな教職員定数改善計画」においても、少子化による自
然減があることを前提の上で、学校にどれだけスタッフを揃えられるかということで計画した。全て維持
しながら他から財源を確保することは現状では難しい。「チーム学校」は先生が中心でやっていくことに
は変わりない。複雑化・困難化する学校現場を取り巻く課題に対応するため、新たな知見を外部から取り
入れる必要がある。どのような人材が学校現場に必要なのかしっかり考えていかなければならない。その
時に外部人材をマネジメントするのは教員であり、教員が中心となって外部人材を活用することがスムー
ズにできるように考えていかなければならない。
【文部科学省】
アクティブラーニング等、新学習指導要領に関する様々な議論が並行して進み、政府の成長戦略の中で
も人材育成について声高に叫ばれ、尚且つ「チーム学校」というものを進めなければならない中で、学校
を新学習指導要領の目指す教育を実行できるような組織にしていかなければならない。いくらアクティブ
ラーニング等を提言してもそれを支える教員の数が減らされてはどうしようもない。今、それらを伝える
チャンスである。今度は文部科学省から数段高い球を投げ返さないといけない。今しか反撃する機会はな
い。財務省が自らを卑下して「機械的」と言っているが、機械的でない部分を我々は打ち返す覚悟である。
応援していただきたい。
●人材確保法の尊重について
【全日教連】
現在、大量退職、大量採用により学校現場では教職員の急激な若返りが進んでいるが、給与水準が高い
都道府県へ人材が流れている現状がある。また、教員という職を敬遠する傾向も見られる。このままでは、
教員の質の確保が難しい。教員が魅力ある職業として多くの優れた人材に志望してもらえるようにしてい
かなければならない。現状では給与が40代で一般行政職に抜かれてしまう。更に昇級抑制のため、55歳超
の教員がモチベーションを維持していくのが難しい現状もある。人材確保法はどういう意図で制定された
のかという初心に返って教職員の処遇を確保すると回答されたが、学校現場の教員が誇りを持ち、胸を張
って、教育専門職だと言える処遇の拡充をしていただきたい。
【文部科学省】
自民党でも現場の教員の処遇をしっかりしていくと議論している。教育再生実行会議でも「人格法の初
心に立ち返り」ということで教員の処遇は確保していくと言っている。それらをしっかり受け止めながら、
進めていきたい。人材確保法制定当時は一般行政職に比べ7%程度の優遇があったが、徐々に目減りをし、
且つ、骨太の方針の影響を受けて、更にそこから義務教育教員等特別手当の縮減が図られている。これら
をなんとか元に戻したいが、情勢が大きく変わらない中で難しい状況にある。御意見を伺いながら今後も
検討を進めていきたい。
【全日教連】
人材確保法の尊重に関しては、教育再生実行会議の中で提言をとりまとめる際、文言の訂正があった。
「人確法の初心に返って」という文言は、従来の「人確法を尊重する」より強い表現に変えていかなくて
ないけないという実行会議の総意である。実行会議の総意であるということは国の総意である。実行会議
の委員も現場の教員も同じ思いである。大変難しい課題だが果敢にチャレンジしていただきたい。
●ICT環境の充実について
【全日教連】
ICTの活用について交付税措置がされ、地域間格差が出ないように各自治体に働きかけがなされている
という回答であったが、自治体の財政によってICT環境に大きな地域間格差があるのが現状である。各市
町村に積極的にICT機器を導入するという方針がなければ進んでいかない。市町村教委にはICT担当が置か
れていないところもある。情報教育担当の指導主事や指導員がいれば、その人を中心にICT環境整備は進
んでいくが、実際は学校現場の教員が学級担任を持ちながら、整備計画を立てている。タブレット端末の
導入が華々しく取り上げられているが、教室には無線LANが導入されていなかったり、ネットワーク等に
不具合が起きたときには教員が対処し授業準備等ができなかったりする状況もある。積極的に学校にICT
を導入しようという担当者配置のための財政的な支援をお願いする。
【文部科学省】
ICT環境の整備については地方財政措置という形で措置している。その地方財政措置を進めるためにパ
ンフレット等を作成し全国に配布している。また、ICT支援員を配置できるように予算上はなっている。I
CT支援員の役割は、技術的な支援や教員の補助的な支援も想定されたものになっているが、十分に周知さ
れていない面もある。引き続き周知を図っていきたい。また、ICT支援員の配置数もあまり多くない。そ
こで、今年度、モデル事業ではあるが、ICT活用教育アドバイザー派遣事業を実施する予定である。地域
としては30地域である。ICT環境の整備を図ろうとする自治体のニーズに応じた専門的なアドバイザーを
派遣する内容である。