KAMIYAMA Reports「ECB 訪問と欧州のムード」

 ご参考資料
2016 年 7 月 5 日
51 ECB 訪問と欧州のムード
チーフ・ストラテジスト
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神山 直樹 ECB ではマイナス金利が長く続くと想定されていない!?
厳しい金融規制は経済に悪影響を与えるのか、銀行がやるべきことも
まさかの Brexit だが、明るい兆しもある
ECB ではマイナス金利が長く続くと想定されていない!?
6 月 21 日、ドイツ、フランクフルトにある ECB(欧州中央銀行)を訪問し、実務担当者から直接話を聞く機会を得た。
対話の中で印象に残ったことは、金融政策は実体経済のサポート役であり持続的成長への橋渡しの役目を担ってい
るにすぎない、との感触を得たことだった。さらに、マイナス金利政策が未来永劫続くと想定されていない。財政拡大で
総需要を拡大し、労働市場改革などで供給サイドの調整に取り組んでいることなどから、金融政策だけに依存してい
るということではないからだ。過剰貯蓄が続いて投資機会がいつまでも見いだせない、とはみていないともいえる。中
央銀行としては、過剰貯蓄は時間の経過とともに解消するだろうとみているが、各国政府が他の政策も動員して、その
時間を短縮して欲しいと考えているようであった。
実際、マイナス金利の政策効果はあるのだ
ろうか。政策金利が下がっても融資金利が下
がるとは限らないし、国による違いもあること
は ECB スタッフも認識している。これらが、実
体経済と金融政策を切り離す恐れがある。し
かし、傾向として、住宅ローンの負担軽減が消
費拡大をもたらすことができたと考えているよ
うだ。
さらに、14 年後半以降の金融・量的緩和政
策で融資金利が政策金利に連動して下がるよ
うになった。これは、各国政府がそれぞれ金融
行政改革などの必要な対応を行なった成果だ
とみている。具体例を挙げれば、補助金よりも
減税を優先するなど、政府の政策がより成長
支援的な構成に変化したケースや、減税と労
働市場改革を組み合わせたケースである。
厳しい金融規制は経済に悪影響を与えるのか、銀行がやるべきことも
基本的に、金融危機以降、金融機関に対する監督(大手銀行は ECB が直接監督)が厳しくなったことは否定できな
い。包括的な改革の厳格化だ。規制については、欧州債務危機でソブリン債(政府や政府機関などが発行・保証する
債券)が、国によって信用リスクが低下し「ソブリン」ではなくなるなどの大きな変化があり、銀行規制当局は厳格化が
■当資料は、日興アセットマネジメントが投資環境などについてお伝えすることなどを目的として作成した資料であり、特定ファンドの勧誘資料で
はありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。■投資信託は、値動きのある資
産(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがありま
す。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。
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KAMIYAMA REPORTS
VOL. 51
行き過ぎかどうかを調べているが、いまのところ強い結論を得ていない。また、金融規制の対象は、銀行の不良債権
の監視などから、広義の金融機関(保険、投信など銀行以外の金融)まで広げるなど、多様化させているという。
現在、銀行監督に関して幾つかの政策を提示しているとのことだった。(1)証券化商品の安全性を高めることにより、
生命保険会社などからの投資をしやすくすること、(2)中小企業が市場を通じて資金調達をしやすくすること、(3)ECB
による主要銀行への監督と、各国で対応している主要ではない銀行への監督を調和させることだ。また、国ごとに異な
る預金保険の調和も図っている。
さらに、銀行は利益率改善のためにいくつかやれることがあると考えているようだ。合併がさらに起こってもよい。特
にクロスボーダーでビジネス機会を作ることが可能だとみている。また、銀行はスタッフが多すぎる傾向にあり、支店網
も多すぎるなど、費用削減余地がある。今後、オンラインやテクノロジーの活用で、費用削減が実現することを期待し
ているとのことだった。
まさかの Brexit だが、明るい兆しもある
6 月 22~23 日のロンドンの金融関係者とのミーティングでは、Brexit(英国の EU 離脱)の可能性が取り上げられた。
ほとんどのケースで Brexit が起こることは想定されていなかったので、起きてしまったときの反動は大きかったと思わ
れる。
(参考)主要通貨(対円)の推移
反 EU の動きは、経済の論理よりも、身近な共同体
(地域社会)を大事にする考えに近いため、経済の観点
からは不安が強まる。確かに、英国については経済の
構造的変化といえそうだが、通貨ユーロがなかったころ
に欧州が経済的に発展できなかったわけではない。そ
の意味で、Brexit は循環的な問題とみることもできる。
つまり、今後永遠に欧州の成長率が低下したままとなる
わけではないだろう。
(2015年7月1日~2016年7月1日)
(円)
米ドル
200
190
180
170
160
150
140
130
120
110
100
英ポンド
ユーロ
円安
円高
15/7
15/9
15/11
16/1
16/3
16/5
16/7(年/月)
9 月ごろまでは金融政策などで対応する可能性があ
ると考えられ、10~12 月にかけて政治的な安定と交渉
の方向性が見えてくれば、金融市場は落ち着くだろう。
(信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)
上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。
欧州については、明るい兆しもある、とのコメントもあった。例えば、スペインやイタリア、フランスなどで労働市場改
革が進んだと考えられる。労働コスト削減など、もっとやるべきことはありそうだが、全体的に欧州危機をきっかけに取
り組んできた生産性の改善は進んでいるようだ。ただし、期待したほど速くないという意見もあった。また、欧州全体と
してヒト(労働)の移動が盛んになったことも効率改善につながっており、例を挙げれば、若く高い教育を受けた人がス
ペインからドイツに移るようなことが、以前よりも活発になっているとのことだった。
当面は Brexit の影響で、欧州から目が離せない状況が続くと思われる。欧州の経済回復が進んできた中で、危機
時に比べて余裕があることを確認した上で、不確実性に対して政策対応ができるかどうかを、引き続き注目していく。
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産(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがありま
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