1 行列

線形代数 1 資料 No. 1
担当:松田 晴英
行列
1
表計算ソフトウェアのように,いくつかの数に対して,同じ計算をする場合,いくつかの
数をひとつのまとまりとして取り扱うと便利なことがあります。ここでは,こうした,いく
つかの数をひとつのまとまりとして扱う手法を学びます。
1.1
行列とその成分
次の表は,2 つの家電店 P,Q での製品の売上個数を月別にまとめたものです。
4月
P店
Q店
テレビ
6
1
冷蔵庫
2
2
洗濯機
5
3
5月
P店
Q店
テレビ
0
8
冷蔵庫
9
6
洗濯機
7
1
これらの表から,数値だけを抜き出して,月別にカッコでまとめると,次のとおりです。
[
]
[
]
6 2 5
0 9 7
,
1 2 3
8 6 1
このように,数や文字を長方形状に並べて,左右を [ ] や ( ) などのカッコでくくったも
のを行列 (matrix) といい,各々の数や文字を行列の成分 (element) といいます。
行列において,成分の横の並びを行といい,上から順に,第 1 行,第 2 行,. . . といいま
す。また,成分の縦の並びを列といい,左から順に,第 1 列,第 2 列,. . . といいます。行
の個数が全部で m 個,列の個数が全部で n 個の行列を m 行 n 列の行列,m × n(型) 行列,
(m, n) 行列などといいます。また,第 i 行と第 j 列の交点にある成分を,その行列の (i, j)
成分といいます。
行列は,例えば,次のように,アルファベットの大文字 A,B などで表すことがあります。
[
]
[
]
6 2 5
0 9 7
A=
,
B=
1 2 3
8 6 1
また,行列の成分は,小文字で表すことがあります。
例題 1.1. 上の 4 月の売上個数を示す行列は,2 × 3 型行列で,
[
]
第 1 行··· 6 2 5
第 2 行··· 1 2 3
..
..
..
.
.
.
第 第 第
1 2 3
列 列 列
(1, 3) 成分は 5,(2, 1) 成分は 1 である。
[
]
1 2 3 4
練習問題 1.1. 行列 A =
について,次の問に答えよ。
5 6 7 8
(1) × 型行列である。
(4) (2, 1) 成分は である。
(2) 第 2 行を書き出せ。
(5) 7 は ( , ) 成分である。
(3) 第 3 列を書き出せ。
1.2
行列の表し方
A を m × n 型行列とします。このとき,A の成分を aij のように,添え字によって,その
成分が存在する行と列を示すことがあります。


a11
 a21
A=
 ...
a12
a22
..
.
···
···
..
.
a1n
a2n 
.. 
. 
am1 am2 · · · amn
これを簡単に,A = [aij ],A = [aij ]m×n などと表すこともあります。
例題 1.2. 3 × 4 型行列は,次のように表される。各成分には,2 つの添え字があり,左側の
添え字がその成分を含む行を表し,右側の添え字が列を表している。


a11 a12 a13 a14
 a21 a22 a23 a24 
a31 a32 a33 a34
練習問題 1.2. 上の表記にしたがって,3 × 2 型行列を書き表せ。
1.3
行列の相等
2 つの行列において,行の個数と列の個数がそれぞれ一致するとき,これら 2 つの行列は
同じ型であるといいます。
また,行列 A と B が同じ型で,しかも,A と B の成分が対応する位置ごとに互いに等し
いとき,A と B は等しいといい,A = B と表します。
[
]
[
]
[
]
1 x 3
1 2
1 2 3
,B =
,C =
について,A も B も 2 × 3 型行列な
例題 1.3. A =
4 5 6
4 5 6
4 5
ので,A と B は同じ型であり,x = 2 のとき,A = B である。x ̸= 2 のとき,A ̸= B であ
る。また,C は 2 × 2 行列であり,A や B と同じ型でないので,A ̸= C ,B ̸= C である。
練習問題 1.3. 各問において,等式が成り立つように,x,y の値を定めよ。
] [
]
[
] [
]
[
y 2
1 x 3
1 2y + 1
3
x+1 2
=
(2)
=
(1)
−3 y
−3 5
4 5 y
4
5
1−x
今日のまとめ :教科書 1∼4 ページの一部
復習問題 :教科書 5 ページの 1.(1)∼(4),4
次回 :教科書 1∼4 ページの残り,6∼7 ページ