1 Riemann ゼータ関数の解析接続と ζ(−1) = −1/12 につ いて Lorentz 不変性を課す事により a = 1 が要請され,それにより D = 26 が求まる際に, “ζ(−1) = −1/12”という事実を用いた.この文書では,これが本当に正しいという事を 示したい.Riemann ゼータ関数の解析接続の方法は,積分表示を用いたものが一般的か もしれないが,ここでは ζ(s) の漸化式から定義域を広げていく方法を用いることにする. 以下に書くことのほとんどは,参考文献 [1] の内容そのままである. 漸化式を作るために,拡張した 2 項展開を用いる.a ∈ N としたときの 2 項展開は,よ く知られた ∞ ( ) ∑ a k (1 + x) = x k a (1) k=0 であり*1 ,ここで ( ) a a(a − 1) · · · {a − (k − 1)} = k k! (2) は 2 項係数である.そして,x ∈ C が |x| < 1 を満たすならば,一般の a ∈ C に対しても 無限和の形で 2 項展開 (1) が成り立つという事実を用いる. ではこれから,Riemann ゼータ関数 ζ(s) = ∞ ∑ n−s (定義域 Re(s) > 1) n=1 の漸化式を導いてみる. ζ(s) = 1 + 2 −s + = 1 + 2−s + =1+2 −s + ∞ ∑ n=3 ∞ ∑ n=2 ∞ ∑ n=2 *1 n−s (n + 1)−s n −s )−s ( 1 1+ n :::::::::: (a) 無限和の形で書いたが,k > a の項は k = 0 となるので問題ない. 1 (3) ここで,波線部は 1 <1 n (n = 2, 3, · · · ) を満たすので,以下のように 2 項展開することができる. ) ( )k ( )−s ∑ ∞ ( −s 1 1 = 1+ k n n k=0 ) ∞ ( ∑ −s −k = n k k=0 これを用いると,先ほどの式変形の続きは ) ∞ ( ∑ −s −k ζ(s) = 1 + 2 + n n k n=2 k=0 (∞ ) ( ∞ ∑ −s) ∑ = 1 + 2−s + n−s−k k n=2 k=0 (∞ ) ( ) ∞ ∑ −s ∑ = 1 + 2−s + n−s−k − 1 k n=1 k=0 ( ) ∞ ∑ −s = 1 + 2−s + (ζ(s + k) − 1) k −s ∞ ∑ −s k=0 ) ∞ ( ∑ ( ) −s −s ζ(s) = A 1+2 + ζ(s) − A 1 − s(ζ(s + 1) − 1) + (ζ(s + k) − 1) k k=2 ) ∞ ( ∑ −s −s s (ζ(s + 1) − 1) = 2 + (ζ(s + k) − 1) . k k=2 そして, ( ) −s (−s) · (−s − 1) · · · (s − k + 1) = k! k s(s + 1) · · · (s + k − 1) = (−1)k k! と,変数変換 s → s − 1 を行うことで, (s − 1) (ζ(s) − 1) = 2 1−s + ∞ ∑ (−1)k k=2 2 (s − 1)s(s + 1) · · · (s + k − 2) . k! よって,両辺 (s − 1) で割ることで,目標の漸化式 ∞ ∑ 21−s s(s + 1) · · · (s + k − 1) + (−1)k−1 (ζ(s + k) − 1) ζ(s) = 1 + s−1 (k + 1)! (4) k=1 21−s s s(s + 1) =1+ + (ζ(s + 1) − 1) − (ζ(s + 2) − 1) s−1 2 6 s(s + 1)(s + 2) + (ζ(s + 3) − 1) − · · · 24 (5) を得た. この漸化式から,ζ(s) が複素平面全体へ解析接続されていることが分かる.その理由を これから順々に述べていく. まず,右辺の ζ(s + k) の定義域について, Re(s + k) = Re(s) + k ≥ Re(s) + 1 > 1 であるから Re(s) > 0 となり,左辺の ζ(s) が Re(s) > 0 まで解析接続される. 続いて,この広がった定義域の下,右辺の ζ(s + k) の定義域について, Re(s + k) = Re(s) + k ≥ Re(s) + 1 > 0 であるから Re(s) > −1 となり,左辺の ζ(s) が Re(s) > −1 まで解析接続される.従っ て以上の作業を繰り返していくと Re(s) が 1 ずつ広がり,最終的に ζ(s) は複素平面全体 へ解析接続されることが分かった. これで ζ(s) の解析接続が済んだので,問題となっていた s = −1 での ζ(s) の値を上の 漸化式から実際に計算することができるようになった. その前に,予め『lims→1 (s − 1)ζ(s) = 1』を示しておく.漸化式より { (s − 1)ζ(s) = 21−s + (s − 1) 1 + ∞ ∑ (−1)k−1 k=1 } s(s + 1) · · · (s + k − 1) (ζ(s + k) − 1) (k + 1)! この両辺について s → 1 を取ると,右辺第 1 項は lim 21−s = 1. s→1 3 そして {· · · } の中身について ∞ { } ∑ ∑ lim 1 + ··· = 1 + (−1)k−1 s→1 =1+ k=1 ∞ ∑ (−1)k−1 k=1 k! (ζ(k + 1) − 1) (k + 1)! (ζ(k + 1) − 1) k+1 だから { ∑ } lim (s − 1) 1 + · · · = 0. s→1 以上より,左辺が lim (s − 1)ζ(s) = 1 s→1 であると示された. ζ(−1) の計算には ζ(0) の値が必要になる. (5) ζ(0) = 1 + 2 + lim sζ(s + 1) − 0 + 0 − · · · −1 |s→0 {z } =1 =1−2+ =− 1 2 1 2 よって,ζ(−1) の値は 22 −1 −1 + (ζ(0) − 1) − lim (s + 1)ζ(s + 2) + 0 − · · · −2 2 6 s→−1 | {z } =1 ( ) 1 3 1 =1−2− − + 2 2 6 1 =− 12 (5) ζ(−1) = 1 + と求まる. 参考文献 [1] 黒川信重,『リーマン予想を解こう』,技術評論社,2014 年. 4 (6)
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