卒後研修会 大阪大学薬学研究科 辻 川 和 丈 がんは 1981 年以来

卒後研修会
大阪大学薬学研究科
辻
川 和 丈
がんは 1981 年以来わが国における死亡原因のトップを占める疾患である。2015 年の人
口動態統計年間推計によれば死亡者数 1,302,000 人のうち、悪性新生物、がんが死因のトッ
プを占め 370,000 人となっている。よってこのがんに対する有望な治療薬の早期創製研究
が薬学の重要な使命となっている。がんに対する治療薬として抗がん剤が使用されている
が、大きな副作用が問題である。この副作用を軽減し、有効性が期待される患者さんをあ
らかじめ選んで効果的に治療することを目指し、がんで特徴的な発現をする分子の機能を
制御する分子標的治療薬が開発されてきた。分子標的治療薬としては、低分子化合物だけ
ではなく抗体も医薬として使用されている。免疫系ががん細胞を特異的に認識して攻撃で
きれば、がんの発生や進行を抑えることができると期待できる。しかし一方で、がん細胞
も免疫系を抑制する術を編み出している。そこでこのがん細胞の術を封じることができれ
ば免疫系による効果的治療が可能になると考えられて創製された最新のがん免疫療法が、
免疫チェックポイント阻害薬である。このように低分子化合物や抗体によるがんの治療薬
開発がなされてきたが、死亡者数からもまだまだ十分とは言えず、新たなコンセプトに基
づく治療薬の開発が期待されている。この期待に副うべく次世代のがん治療薬として核酸
の応用が探られている。本研究会では、このようながん治療薬の最前線について紹介する。