地歴公民(倫理,政経) <全体分析> 一橋大学 (前期) 1/2 試験時間 120 分 解答形式 論述式・記述式 分量・難易(前年比較) 分量(減少・変化なし・増加) 難易(易化・変化なし・難化) 大問数は昨年度と変わらずで、3題であった。Ⅰ、Ⅱ、Ⅲとも総字数が 400 字ずつで、実質的に昨年度と変わら なかった。難易も変化なし。 出題の特徴 例年と同様、Ⅰが倫理分野、Ⅱが政治分野、Ⅲが経済分野からの出題である。Ⅲに関しては、昨年度と同様に、 図表を使った問題が出題された。ただし、今年度は図表の読取り問題ではなく、物価と失業率の関係を問う経済の 原理的な知識を問うものとなっている。 その他トピックス 倫理分野は、昨年度と同様、今年度も西洋の近現代思想を取り上げたものであった。 <大問分析> 番号 出題形式 出題分野・テーマ コメント(設問内容・答案作成上のポイントなど) 難易度 問1は、アダム・スミスの言う「フェアプレイ」の意味を、本文中 に説明のある「共感」や「利己心」という語を用いて的確に論述で アダム・スミスの倫理 きるかどうかがポイント。また、スミスの理論的独自性については、 論述式 思想 「共感」が、マンデヴィルの虚栄心やルソーの憐憫とは異なり、自 Ⅰ (300 字) ( 「フェアプレイ」と 標準 生的に社会秩序を形成していく人間本性として捉えられているこ (100 字) 「公平な観察者」 ) とを指摘する必要がある。問2は、 「公平な観察者」が、各人の心 の中にあって、自己の言動を判定し規制する公平な第三者を意味す ることを指摘できるかどうかがポイントである。 問1は、選挙原則を羅列するのではなく、現在の日本で選挙に関し て課題となっていることをまず想起し、これに合わせて取り上げる 選挙原則をセレクトするという手順で考える必要がある。そうしな 論述式 いと、字数がオーバーするだけでなく、論述全体に整合性をもたせ 選挙原則と衆議院の Ⅱ (200 字) ることができないだろう。問2は、比例代表選挙と小選挙区選挙の やや易 選挙制度 (200 字) 制度上の違いや長所・短所を論述させる問題であり、基本的な知識 で対応可能である。どの程度得点できるかは、指定された字数の範 囲内で、全体のバランスをとりつつ論述できるかどうかにあるだろ う。 問1は、教科書で説明されている「名目」と「実質」の概念から推 論することにより正解の解答が作成できる。問2は、 「貨幣錯覚」 という言葉を知らなくても、最初のAの「労働者は物価上昇よりも 自分の賃金上昇を敏感に感じる」や「失業率が下がる」という発言 と、2番目のAの「労働者の事情に着目して考えてみると、ある程 度納得がいきますよ」という発言から、また、問1で「実質賃金」 が取り上げられていることから、名目賃金の上昇→労働供給の増大 記述式 →失業率の低下という論理の筋道をつけることができるであろう。 (50 字) なお、 「労働者の事情」だけでなく企業の側の事情も考慮に入れた Ⅲ 論述式 物価と失業率 やや難 解答も可能である。別解としてその例を示しておく。問3は、賃金 (100 字) が上昇したという「貨幣錯覚から醒めた」 、つまり、実質賃金が実 (250 字) はそれほど上昇していないということに気付いたということであ るから、問2と逆の事態が生じるということになる。すなわち、現 在の賃金水準が低すぎることへの不満足→現在の賃金水準の労働 提供の拒否・名目賃金の引上げ要求の拡大→失業率の上昇、という 流れである。 「社会経済に与えうる影響」に関しては、失業率上昇・ 物価上昇により、労働者の生活水準が悪化することを指摘できるこ とがポイントとなる。 ※難易度は5段階「難・やや難・標準・やや易・易」で、当該大学の全統模試入試ランキングを基準として判断しています。 © 河合塾 2016 年 地歴公民(倫理,政経) 一橋大学 (前期) 2/2 <学習対策> 一橋大学では、難問・奇問というタイプではないが、教科書レベルの知識だけでは解答が難しい問題も出題される。しか し、その場合でも基礎となる知識は教科書にある。これをきちんと押さえることが受験対策の第一歩である。そのうえで、過 去の入試問題などを教材に使って、指定字数を意識しながら論理的な文章を書くトレーニングを積んでいこう。そして、今 日話題となっている社会的な事象にも関心をもち、知識を広げていくとよいだろう。 © 河合塾 2016 年
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