手がしびれる病気 手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)

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手がしびれる病気
手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)
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手根管症候群とは
正中神経(せいちゅうしんけい)が手くびで圧迫される病気です.正中神経は手の感覚,
親指のふくらみの筋肉を支配する神経です.正中神経は指を動かす 9 本の腱と一緒に,手
くびの部分で手根管(しゅこんかん)という狭い管(くだ)を通過します.手根管の屋根
にあたる横手根靱帯が厚くな
ったり,腱の炎症(腱鞘炎)が
起こることで,正中神経が圧迫
手根管
されるのが病気の原因です.40
代以降に多く,女性と男性の比
は1対2~1対5と言われ,女
性に多い病気です.日常生活や
仕事で手を良く使う人がなり
やすい傾向があります.関節リ
ウマチ,長期間の血液透析,手
くびの骨折,妊娠が原因になる
ことがあります.
症状
手のひら,親指から環指にしびれ,痛みが出現します.手を使った後に症状が強くなっ
たり,しびれや痛みで夜に目が覚めることがあります.進行すると親指の付け根の筋肉が
やせてきます.机の上のコインをつまみにくい,ボタンかけがしにくい,親指と示指の間
が大きく開けないので,湯呑やジョッキを持ちにくいなどの症状が現れます.
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診断
親指から環指の半分に感覚の異常がみられま
す.手くびの X 印の付近を軽くたたくと指先に
電気が走るような痛みを感じます(ティネル徴
候)
.手くびを深く曲げると指がしびれてきます
(ファーレン・テスト)
.
進行例では親指のつけねの筋肉がやせます.
親指と人差し指できれいな丸が作れなくなりま
す.
ファーレン・テスト
胸の前で手の甲を合わせ,手くび
を深く曲げると指先がしびれて
きます.
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右手親指のつけねの筋肉がやせ
(矢印),親指と人差し指できれ
いな丸が作れなくなる.
検査
レントゲン写真では通常は異常ありませんが,手くびの骨の変形が神経圧迫の原因にな
ることがあります.
腫瘍など手根管内に圧迫病変が疑われる場合には MRI 検査を行います.
筋電図検査で神経伝導速度の低下が確認されると診断が確定します.
治療法
初期にはビタミン剤による薬物治療,手の過度の使用を避ける,また,装具を装着して
手くびの安静をとります.痛みが強い場合には,手根管内にステロイド注射を行うことが
あります.
保存治療を行っても症状が良くならない,親指の筋肉がやせている,神経伝導速度が低
下している場合には手術が治療の選択になります.手のひらを3cmほど切開して肥厚し
た横手根靱帯を切って神経の圧迫をとる手術(手根管開放術)を行います.親指の筋肉が
やせて,つまみ動作が困難な患者さんには,つまみ動作をより早期に回復させるために,
手くびで長掌筋という筋肉の腱を痩せた筋肉に縫合する腱移行術を併せて行うことがあり
ます.
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皮膚切開