「畳」業界の複雑なロット・在庫管理を 他業種の基幹システム応用で解決

株式会社北一商店
「畳」業界の複雑なロット・在庫管理を
他業種の基幹システム応用で解決
タブレットPCを駆使し業務のIT化に挑む
導入の狙い
畳資材のロット管理
倉庫別在庫管理の精度向上
受注処理の業務効率化
導入システム
鋼材卸売業向けシステム『PowerSteel』
『たよれーる マネージドネットワーク
サービス
(MNS)
2Uハウジング』
タブレットPC『Microsoft Surface』
『たよれーる どこでもコネクトリモート
/コネクトライン』
可視化経営支援システム『顧客創造日報』
導入効果
品目、生産者、生産地、仕入れ日別で
の畳材料のロット管理を実現した
精度の高い倉庫別在庫管理により、
棚卸しの作業時間を大幅に削減した
受注処理の対応スピードが向上した
IT化に対する社員の意識改革に成功した
—USER
P R O F I L E ———————————————————
株式会社北一商店
●業種:畳の資材卸・製造業
●事業内容:畳に関する物品の卸・小売業
/室内装飾、敷物、荒物雑貨の卸・小売
業/室内装飾品、畳、敷物の取り付け、
敷込等の工事請負/製畳、製床業
●従業員数:20名
(2015年3月現在)
畳の良さを広め、畳業界の活性化にむけて斬新な畳づくりに挑戦し続けている
株式会社北一商店は、1916年創業の畳資材卸・製造企業だ。畳資材を畳問屋
に卸す商社機能のほか、業界の活性化に向け、自ら斬新な畳製品を開発するメー
カーとしての側面も持っている。畳資材卸業では、畳資材のトレーサビリティ
(ロッ
ト管理)や在庫管理が業務課題だった。そこで、全くの他業種だが管理形態の似
ている鋼材卸売業向けシステム『PowerSteel』をカスタマイズすることで課題
を解決。また、データセンターとタブレットPCの活用で、受注処理の効率化にも
成功した。
畳業界のパイオニア
『さらり畳』で伝統産業の活性化に挑む
ンに掲げ、開発した新たな畳商品は斬
1916年創業の株式会社北一商店
ニーズを捉えた北一商店の畳は、多く
(以下、北一商店)は、畳表や畳縁等
基幹システムやタブレットPCなどの導入で、IT化を
進める株式会社北一商店
2015年3月取材
「畳の可能性を、もっと。」をスローガ
新なアイデアのものが多い。時代の
の注目を浴びている。
の資材を畳問屋に卸す専門商社とし
そのきっかけとなった代表的な商
ての役割を担う企業だ。しかし最近で
品が、2003年に株式会社伊藤園と
は、新たな畳商品を開発するなどメー
提 携し共 同 開 発した『 さらり畳 』だ。
カーとしての事業にも積極的に取り組
伊藤園では、飲料製品『お〜いお茶』
んでいる。
の製造過程で排出される茶殻が年間
1
株式会社北一商店
約50,000トンにも及ぶ。しかし、この
表取締役社長の山形 鉄志氏は語る。
茶殻にはカテキンなどの有用成分が
こうした思いから、北一商店は「畳
含まれており、伊藤園と北一商店はこ
業界のパイオニア」として、新商品の
の茶殻の消臭効果に目を付けた。茶
開発に社員一丸となって取り組み、斬
殻と木材チップとを組みあわせたイン
新な畳づくりに挑戦し続けている。
シュレーションボード(軟質繊維板)を
畳床に使用することで、消臭効果の高
サイクルによる未利用資源の有効活
業界特有の複雑なロット・在庫管理を
他業種向け基幹システムで解決
用に貢献した功績が称えられ、第20
「畳」という日本の伝統産業を盛り
回地球環境大賞(環境大臣賞)をはじ
立てる北一商店では、業務のIT化にも
めとする数々の賞を獲得するなど、エ
積極的に取り組んでいる。
コ商品としても評価が高い。
「これまで、在 庫 管 理は手 作 業で
最近では、
『さらり畳 』を改良した、
行っていたため管理精度が低く、受注
い畳づくりに成功したのだ。茶殻のリ
『さらり畳 RUG STYLE』を発表。フ
書の書き方も統一されていないなど、
ローリングの部屋でも使える80c m
業務が標準化されていませんでした。
角の置き畳で、和室に敷き詰めるとい
職人気質がいまだに残る業界ですが、
う畳のイメージを覆した画期的な商品
今後の事業成長のためには、業務の
だ。畳床には茶殻配合のインシュレー
効率化と標準化が必要不可欠だった
ションボードに加え、自動車の座席に
のです」
と、山形氏は当時を振り返る。
も利用される3Dクッションを採用。従
北一商店は、過去にも基幹システム
来の畳よりも弾力性があり、座り心地
の開発に取り組んだことがあったが、
に配慮している。この『さらり畳 RUG
肝心のシステム自体は完成に至らな
S T Y L E 』は「伝統的な畳をどのよう
かった経緯がある。その理由は、畳業
な部屋でも楽しめる」という商品コン
界特有の事情が関係しているそうだ。
セプトを評価され、
『OMOTENASHI
畳の材料であるイ草は岡山や熊本、
Selection 2014』で金賞を受賞し
藁は米どころの宮城や佐賀というよう
た。この受賞をきっかけに、国内での
に、材料は国内だけでも生産地が品目
需要を喚起し、海外展開を視野に入れ
ごとに多岐にわたる。また国内産だけ
て事業を推進している。
ではなく、中国や台湾など海外産の材
「近年、ライフスタイルの洋式化で
料も多い。そのうえ、同じ生産地や同
和室の数が減少し、畳業界全体が斜陽
じ生産者から仕入れた材料でも、田畑
化したと言われています。実際、最盛期
や買い取り日が違うだけでも品質が異
の平成元年頃と比べると、畳屋自体が
なってくるため、ロットを細かく分けて
15,000軒から8,000軒にまで減り、
管理しなければならないという業界特
畳の市場規模自体も半分になっていま
有の難しさもある。これらを一元的に
す。そこで、私たち北一商店は、消費者
管理する基幹システムをゼロから構築
の皆様に畳の良さを再発見していただ
することは非常に困難だったのだ。
ける新商品をリリースして、畳業界を
そこで北一商店は、当時コピー機の
活性化したいと考えております」
と、代
導入で1996年から取引のあった大
2
代表取締役社長
山形 鉄志氏
「大手企業と違い、私たちのように人数の
少ない中小企業が、
業務のスピードを高め、
お客様に対する満足度を高めるためには、
IT投資を行い、ITを武器として活用すべき
だと思います」
工事部 部長
松永 敬介氏
「営業マンは全国各地の畳問屋さんのもと
を訪問しますが、なかなか頻繁に会えない
お客様も多いため、出荷が遅れると、お客
様の信頼を失いかねません。システムのお
かげで、出荷までの日数が短縮されて、現
場でも非常に助かっています」
データセンターとタブレットPCの活用で、受注の事務処理
のコストが減り、受注から出荷までの日数が最大1週間も
短縮された
塚商会に相談を持ちかけた。
を確認するには、紙伝票の山の中から
「営業で来ていた大塚商会さんの担
経験則で情報を探し当てるような状態
当者は、私たちがシステムについて抱
で、解答に時間がかかることもありま
える悩みをお話しすると真摯に対応し
した。しかし、
『PowerSteel』導入後
てくれました。残念ながら畳業界に特化
は、データをもとに正確に探し出せる
した基幹システムはパッケージ製品と
ようになったので、お客様からの問い
して販売されていませんでしたが、私
合わせにも、迅速かつ正確に対応でき
たちの業務内容をしっかりと把握しても
るようになりました」と、山形氏は導入
らい、他業種の中でも商材管理の考え
効果を実感している。
方が近い、鋼材卸売業向けシステムを
また倉庫別の在庫管理も、以前は
カスタマイズして構築することを提案し
手作業で行っていたため、管理精度が
てくれました」
と、山形氏は大塚商会の
低く、年一度の棚卸し作業は3日間の
臨機応変な対応力を高く評価する。
泊まり込みが当たり前だったという。し
北一商店が導入した、鋼材卸売業向
かし、システム導入後は、畳資材や畳
けシステム『PowerSteel』の最大の
製品の種類、大きさやカラーバリエー
特長は、生産者・田畑別生産地・買い取
ションごとに細かくコードを振り当て
り日別にロット管理できる点だ。細かく
ることで、倉庫別在庫管理も容易にな
ロット管理ができるようになったため、
り、棚卸し作業は通常の業務時間内で
在庫管理の精度アップと共にトレーサ
2日間あれば終わるようになった。在
ビリティ強化にもつながった。
庫管理の精度向上と共に大幅な作業
「利用期間の長い畳という商品の性
時間の短縮も実現したのだ。
質上、商品を納入後、1〜2年経ってか
ら問い合わせが来ることもあります。
システム導入以前は、問い合わせ内容
システム構成イメージ図
データセンターとタブレットPC活用で
受注業務の効率化を実現
I T化に積極的に取り組む北一商店
大塚商会のiDCサービス
は、機器についても随時アップデート
大塚商会iDCサービス
(2Uハウジング)
SMILE BS PowerSteelや
ファイルサーバーとして利用
している。2014年には、Windows
XPのリプレースと
『PowerSteel』の
どこでもコネクトリモート
バージョンアップに合わせて、オンプレ
どこでもコネクトライン
出張先
VPN
どこでもコネクト
ボックス
インターネット
ミスだった基幹システム用のサーバー
本 社
を、大塚商会のデータセンターで運
用する『たよれーる マネージドネット
ワークサービス(M N S)2Uハウジン
FW
(ファイアウォール)
グ』
に移行した。
「以前はオンプレミスでサーバーを
運用していましたが、停電事故でサー
自席 PC
バーが使えなくなり、復 旧に数日か
あたかも、LANケーブルを延長し
接続しているかのように使用可能
かったことがありました。
『たよれーる
マネージドネットワークサービス 2U
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株式会社北一商店
ハウジング』は、サーバーの運用・管理
張先でも『Microsoft Surface』で
を全て大塚商会さんにお任せできる
取引先の顧客とのやり取りをきめ細か
ので、安心して業務に取り組めるよう
く入力することで経営の見える化を実
になりました」
と山形氏は説明する。
現しているのだ。この『顧客創造日報』
北一商店は導入した基幹システム
は、自動的に顧客情報が蓄積されるた
『 P o w e r S t e e l 』のサーバーを大塚
め、社員同士の情報交換にも効果を
商会のデータセンターへ移行したこ
上げている。
とに合わせ、営業用にタブレットP C
「私たちの顧客は全国各地にいらっ
『Microsoft Surface』を6台導入。
しゃるため、社員が何度も出張して顧客
外出先からでも受注入力が行える体
にお会いすることは現実的ではありま
制を整えた。
せん。以前は、営業部内での情報格差
全国の畳問屋に畳資材を卸してい
や引き継ぎコストが大きいことが課題
る北一商店では、営業社員が常に全
となっていました。しかし、
『顧客創造日
国各地を飛び回っている。以前は、出
報』
の活用により、取引先情報の共有が
張先で成立した受注案件は、出張先
容易になったことで、各顧客のケースス
より戻ってから受注の事務処理を行
タディーを学べるようになり、顧客の引
うか、電話やファクスで社内にいる社
き継ぎもより効率的になりました」
と山
員に処理をお願いしていたという。現
形氏は語る。今後は、蓄積した顧客情報
在では出張先からでも『M i c r o s o f t
をもとに、営業活動の計画を立てること
Surface』
と
『たよれーる どこでもコ
も視野に入れているという。
ネクトリモート』でサーバーへリモート
IT化を推進してきた北一商店だが、
アクセスし、直接受注入力ができるよ
最近では社員たちのI Tに対する意識
うになった。また、データセンター経
も変わり、抵抗感が薄れてきたという。
由で社内のプリンターから納品書が自
「昇給要件にMOS資格取得を加え
動的に出力されるようにしている。
るなど、ITスキルの向上を社員の評価
「基幹システムをデータセンターに
基準に盛り込む予定です」と社員教育
移行し、外部からもアクセスできるよう
にも余念がない。
にしたことで、受注の事務処理のコス
今後の方針としては、畳の販路拡大
トが減り、受注から出荷までの日数が
を目指し、広告・物流などの異業種と
最大1週間も短縮されました。現場の
のコラボレーションを計画していると
営業担当者にも非常に好評です」と、
いう。そのためには、ITによる業務の
山形氏は導入効果を実感している。
さらなる効率化が必須だと山形氏は
考える。
IT活用による経営の効率化と
社員のITリテラシー向上を推進
「大塚商会さんは、私の経営アイデ
アを話せる良き相談相手です。これか
らも大塚商会さんと協力して、今度は
北一商店が導入したタブレットP C
経営のスピードアップについてのアイ
は、マネジメントの面でも大いに活用
デアを実現できると嬉しいです」と山
している。同社では、可視化経営支援
形氏は語る。今後も北一商店と大塚商
システム『顧客創造日報』を導入し、出
会のコラボレーションに注目したい。
株式会社北一商店のホームページ
http://www.kitaichi.co.jp/
・会社名、製品名などは、各社または各団体の商標もしくは登録商標です。
・事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は取材当時のものであり、配付される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。
・この記事は2015年4月に作成されました。
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