地歴公民(世界史) 一橋大学 (前期) 1/3 Ⅰ 5 10 15 20 25 アリストテレスは「人間はポリス的動物である」と述べ たように,都市国家ポリスを人間生活の基盤にすえた。 ポリスにおいては農地を所有し自費で武装する戦士が, 平等な市民からなる共同体の構成員として,民主政に参 5 10 15 加した。市民が政治活動に専念できたのは,家事労働や 農作業・鉱山労働などに使役された奴隷が生産活動を担 ったからであり,政治に対して経済は副次的存在であっ た。一方で聖トマスは商工業者が中核をなす中世都市を 人間社会の中心と捉えた。都市は商業の復活をうけて交 通の要衝に成立し,国王や領主から特許状を得て自治権 を得た。都市の参政権は商人ギルドを支配する大商人が 独占し,やがて手工業者の同職ギルドが参政権を得る場 合もあったが,徒弟制度の下でギルド員は親方に限定さ れており,各種の階級が存在する身分制社会であった。 ゆえに聖トマスは経済を重視して都市の面を論じ,アリ ストテレスは政治を重視して国家の面を論じた。 © 河合塾 2016 年 地歴公民(世界史) 一橋大学 (前期) 2/3 Ⅱ 5 10 15 20 25 王権神授説を信奉しフランス絶対王政の最盛期を現出し たルイ 14 世は,ユグノーに信仰の自由を認めたナントの 王令を廃止し,カトリックによる信仰の統一を実現しよ うとした。その結果,ユグノーの商工業者が多く新教国 5 10 15 に亡命したが,ブランデンブルク=プロイセンは,彼ら を積極的に受け入れて経済成長を遂げ,スペイン継承戦 争でオーストリアを支援し王号を認められた。これらが フランス大聖堂建設の背景である。その後プロイセンは ,フリードリヒ2世の時代にオーストリア継承戦争でオ ーストリアからシュレジエンを獲得し,七年戦争でその 領有を確定した。また第1回ポーランド分割を主導して 領域を拡大した。これによりカトリック教徒のポーラン ド人を支配下に含むことになった。フリードリヒ2世は ,同時に啓蒙専制君主として信教の自由を認める改革を 行ったため,ポーランド人のカトリック信仰が容認され た。これらが聖ヘートヴィヒ聖堂建設の背景となった。 © 河合塾 2016 年 地歴公民(世界史) 一橋大学 (前期) 3/3 Ⅲ 5 10 15 20 25 朝鮮半島は,第二次世界大戦終結で日本の支配から解放 されたが,冷戦を背景に北緯 38 度線を境として,南にア メリカ,北にソ連が進駐して分割管理した。1948 年に南 では李承晩を大統領に韓国,北では金日成を首相とする 5 北朝鮮が成立し,それぞれアメリカ・ソ連の支援を受け た。1950 年に北朝鮮が統一をめざして韓国に侵攻し,朝 鮮戦争が勃発した。国連安保理が北朝鮮を侵略国と断定 し,アメリカ軍中心の国連軍が派遣され韓国を支援する 一方,ソ連と同盟関係にあった中国は人民義勇軍を派遣 10 して北朝鮮を支援し,東西対立が現実の戦争となって現 れた。1953 年に休戦が成立したが,半島北半を共産党政 権が維持したことで,中国では共産党および毛沢東の支 配体制が確立し,また台湾解放よりも中ソ同盟の強化に よるアメリカとの対決が優先された。台湾は,アメリカ 15 が中国への対抗上蔣介石と結び,米華相互防衛条約など 反共の重要拠点となったため,国民党独裁が確立した。 © 河合塾 2016 年
© Copyright 2024 ExpyDoc