新規架橋型メソイオン性配位子及び鉄錯体の開発とその化学的性質

第 25 回記念福岡シンポジウム Poster 発表応募用紙
新規架橋型メソイオン性配位子及び鉄錯体の開発とその化学的性質
Novel pincer type 1,2,3-triazole ylidene and iron complexes
岩崎春香、古賀裕二、松原公紀(福岡大理)
鉄は地球上に豊富に存在し、近年パラジウムやロジウムなどの希少金属に替わり触媒反応に用い
られる金属種として注目されている。しかし、鉄は多様な酸化数をもち金属上の不対電子のため配
位子との結合が弱く触媒開発が難しい。さらに、開発された触媒は常磁性体になりやすく NMR 測
定が困難なことから反応機構解明を行った例が少ない。[1] 近年、Bertrand らによってメソイオン
性カルベン(MIC)が報告された。[2] MIC は従来触媒反応に用いられている N-ヘテロ環状カルベン
(NHC)よりも安定で強いσ供与性を有するカルベン配位子である。その中でも 1,2,3-トリアゾール
を基本骨格とした MIC に着目した。1,2,3-トリアゾールは Hüisugen 環化反応によりカルベンへの合
成ルートが確立され、1,3 位に異なる置換基を導入できる。つまり立体的・電子的に考慮した配位
子開発が可能である。
今回、我々は新たに架橋性の 1,2,3-トリアゾールイリデン配位子の開発を行った (Scheme 1) 。
さらにこれらの配位子を用いて数種の鉄錯体の合成に成功した。これらは 1,2,3-トリアゾールイリ
デンを用いた鉄錯体としては初めて例である (Figure 1) 。 [3] 本発表では特に準安定な 18 電子カ
ルボニル錯体を単離したことから、熱的な構造及びスピン状態の変化を実験化学的・理論化学的に
議論する。
Scheme 1 Synthesis of TACM and TACP
Figure 1 Iron complexes bearing TACM and TACP
<参考文献>
1)Sherry, B. D.; Fürstner, A. Acc. Chem. Res. 2008, 41, 1500.
2)Guisado-Barrios, G.; Bouffard, J.; Donnadieu, B.; Bertrand, G. Angew. Chem., Int. Ed. 2010,
49, 4759.
3)Iwasaki, H.; Koga, Y.; Matsubara, K. submitted
発表者紹介
氏名
岩崎
春香(いわさき
所属
福岡大学大学院
学年
博士課程後期 3 年
研究室
松原研究室
はるか)
理学研究科
化学専攻