プロトアーキュレイン B の合成研究 (横市大院) 菅原啓、及川雅人 沖縄

プロトアーキュレイン B の合成研究
(横市大院)○菅原啓、及川雅人
沖 縄 県 に 生 息 す る 海 綿 Axynissa aculeata に は 細 胞
毒 性 を 有 す る ペ プ チ ド が 含 ま れ 、 aculeine B と 命 名
さ れ た 1) 。そ の 後 、こ の 海 綿 か ら aculeine B の N 末
端 ア ミ ノ 酸 と し て protoaculeine B ( pACU-B, 1 )
が 単 離 さ れ た 2) 。 Protoaculeine B は 、 L-ト リ プ ト フ
ァン由来と考えられるインドール骨格に対してピペ
リ ジ ン が 縮 合 し て 構 成 さ れ る 三 環 性 骨 格 を 有 す る 新 規 化 合 物 で あ り 、神 経 細 胞 に
対 す る 細 胞 毒 性 が 示 唆 さ れ て い る 。 そ こ で 1) 類 縁 体 合 成 、 お よ び 2) 生 物 活 性
評価を行うことを目的として、我々は合成研究を開始した。
pACU-B (1) は 三 環 性 ア ミ ノ 酸 3 と 長 鎖 ポ リ ア ミ ン ( LCPA ) 4 と に 分 け て そ
れ ぞ れ を 合 成 し 、そ れ ら の 適 切 な 保 護 誘 導 体 の 縮 合 に よ っ て 合 成 で き る と 考 え た
( Scheme 1 )。 前 者 3 は 、 L-ト リ プ ト フ ァ ン を 出 発 原 料 と し て 合 成 す る 計 画 を 立
案 し た 。 こ の 合 成 の 鍵 と な る の は 、 1) イ ン ド ー ル に 縮 環 し た ピ ペ リ ジ ン 環 を い
か に 構 築 す る か 、さ ら に 2) ピ ペ リ ジ ン 環 上 の ア ミ ノ 基 の 立 体 化 学 を い か に 制 御
す る か の 2 点 で あ っ た 。 そ し て 、 L-ト リ プ ト フ ァ ン を 出 発 原 料 と し て 13 段 階 、
総 収 率 13% に て 三 環 性 ア ミ ノ 酸 ( 3 ) の 合 成 を 達 成 し た 3 ) 。立 体 化 学 に 関 し て は 、
単結晶 X 線構造解析により確認した。
Scheme 1 三 環 性 ア ミ ノ 酸 3 の 合 成
次 に 、ポ リ ア ミ ン 鎖 の 導 入 を 検 討 し た 。Scheme 1 の エ ナ ミ ド 化 合 物 2 に 注 目
し 、こ れ に 対 し て ポ リ ア ミ ン 鎖 を 導 入 す る こ と が で き る の で は な い か と 考 え 、α
-テ ト ラ ロ ン 5 を 出 発 原 料 と し て 、ポ リ ア ミ ン 鎖 導 入 の た め の モ デ ル 実 験 を 行 っ
た 。 こ こ で は 、 Scheme 1 に 示 し た ア セ ト ア ミ ド 基 で は な く 、 電 子 吸 引 性 に よ る
反応性向上と穏和な条件で脱保護できるメリット を考慮し、トリフルオロアセ
○すがはらはじめ、おいかわまさと
ト ア ミ ド 基 へ の 変 換 を 検 討 し た 。反 応 条 件 検 討 の 結 果 、TFAA、TESCl、鉄 を DMF
中で反応させることでトリフルオロアセトアミド基により保護されたエナミド
6 へ と 62% 収 率 で 導 く こ と が で き た (Scheme 2) 4 ) 。さ ら に 、エ ナ ミ ド 6 と ポ リ
アミン鎖のアルコール 7 を用いて光延反応させることにより、ポリアミン鎖を
導入することに成功した。
Scheme 2 ポ リ ア ミ ン 鎖 の 導 入
モ デ ル 実 験 に お い て 、ポ リ ア ミ ン 鎖 の 導 入 に 成 功 し た こ と か ら 、三 環 性 オ キ シ
ム 9 か ら ト リ フ ル オ ロ ア セ ト ア ミ ド 基 で 保 護 さ れ た エ ナ ミ ド 10 へ の 変 換 を 試
み た (Scheme 3) 。 モ デ ル 実 験 の 基 質 に お い て は 、 DMF 中 で 反 応 さ せ る こ と で 、
目的のエナミド 6 が得られていた。オキシム 9 に関しては、種々の条件検討
の 結 果 、 ア セ ト ニ ト リ ル 中 で 、 TFAA、 TMSCl、 鉄 を 反 応 さ せ る こ と で 、 良 好 な
収 率 (62%) で エ ナ ミ ド 10 へ と 導 く こ と に 成 功 し た 。こ の エ ナ ミ ド 10 に 対 し
て 、光 延 反 応 に よ る ポ リ ア ミ ン 鎖 の 導 入 を 検 討 し て い る が 、現 在 の と こ ろ 求 め る
11 は 得 ら れ て い な い 。 原 因 と し て ア ミ ノ 酸 側 鎖 に よ る 立 体 障 害 に よ る 影 響 を 考
えている。
Scheme 3 三 環 性 化 合 物 に 対 す る ポ リ ア ミ ン 鎖 の 導 入
現 在 は 、イ ン ド ー ル を 出 発 原 料 と し て 、先 に ポ リ ア ミ ン 鎖 を 導 入 し 、最 後 に ア
ミノ酸側鎖の導入を行うことで目的化合物 1 に誘導することを考え、検討を進
めている。
References
1)
2)
3)
4)
Sakai, R. et al., ChemBioChem, 2011, 12, 2191.
Sakai, R. et al., Org. Lett., 2014, 16, 3090-3093.
Ohtsuka, K. et al., 日 本 化 学 会 第 94 春 季 年 会 , 2014, 3H6-37.
Zhu, C. et al., J. Org. Chem., 1998, 63, 8100-8101.