適切に伝える力を身につけるための,学習シートの活用 ― 1 2年 「たからものをしょうかいしよう」から ― はじめに 本学級の子供たちは,話すときや文章を書くときに,順序立てて説明をすることができず, 同じ内容の言葉を何度も重ねたり,突然自分の感情を話したりと何について話をしたいのか 伝えることができない子が多くいる。そこで,文章構成の理解と定着が必要であると考えた。 本実践では簡潔なモデル文の提示や学習シートの活用,モジュール制学習の朝学タイムを 発表の場に設定することを手立てとし, 「適切に伝え合う力を身につける」ことを目標として, 実践を行った。 2 単元計画 学習の内容 時間 ○教師が自分の宝物についての簡単なスピーチを行う。 ○宝物紹介のスピーチをするという学習内容を知り,学習の見通しを持つ。 2 ○自分の宝物を思い浮かべて,紹介したいものを決める。 ○自分の宝物について紹介したい内容をメモに書く。 ○教師の用意した例文をもとに, 「はじめ・なか・おわり」の文章構成を意識 させて,聞き手が理解しやすい文章を考えさせる。 2 ○メモをもとに,話す順序を整理して,宝物紹介のスピーチの文章を考えさ せる。 ○話すとき聞くときに気をつけることを確かめる。 1 ○声の大きさ,姿勢に注意をして,スピーチの練習をする。 ○話し方・聞き方を意識して,スピーチを行う。 モジュール 6 3 実 践 (1)題材について 本単元「宝物を紹介しよう」は,子供が気に入っているものを「宝物」として題材に取り 上げているので思い入れもあり,意欲的に取り組みやすいと考える。また,実際に宝物を持 ってスピーチを行うことから,聞き手も興味を持ちやすい。 教科書では,簡単なメモをもとにスピーチをするものだったが,子供たちの実態を考え, モデル文を使って「はじめ・なか・おわり」の文章構成の理解を全体の場で行ってから,構 成メモを元に文章を作成し,その後,スピーチを行うという方法をとった。 (2)手立てについて ①学習シート「宝物のメモ」の活用 まず,教師が自分の宝物についての簡単なスピーチした後,文章を書く上で必要な情報の 書き出しを行った。普段文章を書くときに悩む子が多いため,メモ用の学習シートには「い つ・どこで・色・形」など具体的に例を挙げたものを用意した。それを手がかりに日頃,書 くことを苦手としている子供たちも文章を書 くことができた。しかし,その一方で,文章 がパターン化されてしまい,個性のある文章 を書く妨げになっていたことも否めない。 ②モデル文による文章構成の理解 文章構成をばらばらにしたモデル文の短冊 を示し,どのような順序に直せば聞き手に伝 わりやすいか発問した。すると,ほとんどの 子が,並び替えることができた(資料1) 。さ らに,文章が「はじめ(これから伝えようと すること)・なか(詳しい説明)・おわり(い (資料1:用意した例文) ちばん伝えたいこと)」の3つに分 けられることを説明すると,文章 構成を理解した上で,分けること ができていた。 ③2種類の学習シートの活用 文章構成について学んだあと, 子供の実態に合わせた学習シート を 2 種類用意して定着を計った(資 料2)。学習シートは,普段文書が 書けない子に合わせて,構成メモ をそのまま穴埋めできるものを用 意した。すると,そのメモを見て すらすらと書くことができていた。 もう一方の学習シートでは,文 章構成の詳しい説明を記載し,構 成メモと対応させたが,「はじめ」 の部分の書き方をしっかりと押さ えていなかったため,子供たちは なかなか書き出すことができなか った。 (3)モジュールでの発表 45分の授業の中では,子供た ちの集中力が長く持たないため, モジュール制の朝学タイムの時間 を利用して発表を行った。短い時 間の中で,少人数の発表であるこ とや教材提示装置などを使った実 物のある発表を行ったことで,子 供たちの集中力を最後の発表まで 持続させることができた。 さらに,何回かに分けて,いろ いろな子の発表を聞いていくので, 後半に発表する子は,発表の仕方 を工夫したり実物の提示の仕方を 考えたりと,次第によりよい発表 になっていくという効用もあった。 4 (資料2:2種類の学習シート ↑上 穴埋め式) まとめ 実践の結果,ほとんどの子供が文章構成を理解するようになっていた。さらに,一度文章 を書ききることで,スピーチでは自信を持って発表することができていた。 今回,学習シートを2種類作成したが,子供の取り掛かりの状況から全員に穴埋め式の学 習シートを配ったほうが文章構成の理解につながったのではないかと考える。 スピーチでは,少人数で日ごとに発表を行ったことで,後半になるほど質の高い発表にな った。 今後も繰り返し,メモや学習シートを使い, 「はじめ・なか・おわり」の文章構成を押さえ て行くことで,適切に自分の意見を伝えられるようにしていく必要があると考える。
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