PISA 型読解力を高める指導の授業提案 さいたま市立東宮下小学校 教諭 菊池健一 ■(21)1学年での実践 (道徳・学研『おじさんの手紙』より) 主題名 みんなが気もちよく 4-(1)公徳心、規則の尊重 『電車でのマナーについて考えること』を 取り上げた道徳授業 PISA型読解力育成の手だて 【情報へのアクセス・取り出し】 ・ 「おじさんの手紙」からおじさんが子どもたちのどんな様子に感心したのか分かる。 ・電車の模擬体験から、電車で必要なマナーについて考える。 【解釈・統合】 ・資料から、おじさんの気持ちや子どもたちの気持ちについて考える。 【熟考・評価】 ・電車でのマナーがどうして必要か考える。 ・自分がこれから実践したいマナーについて考えて発表する。 【取り組む能力】 ・自分がこれから実践したいマナーについて考えて発表する。 本教材は「4-(1)公徳心、規則の尊重」を取り上げたもので、電車の中のマナーに ついて考える教材です。電車に乗ってきた小学生を見て、最初はいやな気持になりかけた おじさんが、マナーのよい小学生の姿に感動し、最初にいやな気持になったことを恥ずか しく思い、小学生に手紙を送ったというストーリーになっています。 児童はこれまでバスや電車に乗った時の経験を思い出しながら、電車でのマナーについ て考えていきます。そして、最初に小学生が電車に乗ってきた時に「おじさん」がどうし ていやな気持になったのか、次に、マナーのよい小学生を見てどんなことを考えたかを話 し合います。さらに、自分がこれから守りたいマナーについても考えさせます。 この、教材文を読む前に、教室で実際に平均台や乗客の絵を使って簡単な列車を用意し、 児童が電車に乗る模擬体験をしてみました。最初は、電車に急いで乗ってしまったり、友 達と座席を奪い合ってしまったりと、マナーが守られていない状態でした。 体験をしたあとに、みんなで電車の乗り方がどうだったかを考えてみました。ここでも、 PISA型読解力の「情報の取り出し」や「熟考・評価」の力をつけられます。児童は体 験や友達の電車の乗り方などから、根拠をもって、電車でのマナーについて考えを述べる ことができました。電車の模擬体験がその後の教材の読み取りに大変効果的でした。 模擬体験の後に、教材の読み 取りを行いました。あまり電車 に乗ったことのない児童も、自 分の体験を生かして、教材文の 状況を思い浮かべながら、 「おじ さん」の気持ちを想像していま した。 「おじさんは、きっとこれま でマナーの悪い小学生しか見た ことがなかったんだよ」 「マナーが悪い小学生が、ま 」 た来たと思ったんだね。 次に、児童は教材文からおじ (教室に用意した模擬列車の様子) さんがマナーのよい小学生の姿 に感動したことを読み取っていきました。そして、模擬乗車のときの態度では、きっとそ う思わなかっただろうと考えました。ここも、模擬体験を生かして、PISA型読解力の 「解釈・統合」の力を伸ばせる学習場面だと考えます。児童は自分の体験と教材文とを比 べながら思考をめぐらすことができました。 そして、授業の終わりに、これから守ってみたいマナーについて具体的に考えて発表を します。ここでも、PISA型読解力の「熟考・評価」の力を伸ばすことができます。 「ぼくは、電車ではさわがないで静かにするようにします。 」 「わたしは、走って電車に乗ると危ないし、迷惑なので、静かに歩いて電車に乗ります。 」 など、具体的なマナーが発表されました。発表のあとは、もう一度模擬乗車体験を行いま した。授業の最初と比べて、マナー良く乗車 することができていました。 授業の最後の説話として新聞記事を取り 上げました。同じ埼玉県に住む中学生が、修 学旅行で乗車した新幹線を降りる際に、全員 でゴミを片付け、ゴミを一つも残さかった。 それを見た清掃員の方が感動して、中学校に 手紙を送ったという記事を提示しました。1 年生の子どもたちも新聞記事に大変感動し (児童に提示した新聞記事) ていました。
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