2.民事訴訟実務の基礎I(PDF:224KB)

【2015年度シラバス】
【授業科目名】
【授業科目の区分】
【担当者】
【履修形態/単位】
【配当年次/開期】
民事訴訟実務の基礎Ⅰ
実務基礎科目群
池田克俊・青谷智晃(01・02クラス)
必修科目/2単位
3年次/前期
【授業科目の内容】
実務基礎科目群に配置される必修科目であり、実体法と手続法を有機的に関連させ、理
論と実務とを密接に架橋する実務教育の導入部分に当たる科目である。これまで法律基本
科目群で学修した内容を踏まえ、言い分方式の事例を中心に、訴訟物は何か、原告は自己
の請求を法律上根拠付けるために、どのような請求原因事実の主張が必要であるのか、ま
た、被告は原告の請求を排斥するためにどのような抗弁を提出することになるのか、など
について学修する。
【授業の目的・方法】
民事訴訟における判断構造を踏まえて基本的な紛争類型における要件事実を学修すると
ともに、これを通じて民事実体法の理解を一層深めることを目的とする。授業は、受講生
がテキストの学修予定範囲を予習していることを前提に、その課題について双方向的、多
方向的に検討しながら進める。授業は複数担当で実施し、両クラスの内容は同一である。
池田は、授業の進行を担当するとともに、裁判官の立場からコメントを行い、青谷は弁護
士の立場からコメントを行う。
【授業計画・到達目標】
第1回
訴訟物の概念・機能を説明できる。
訴訟物である権利の存否の認識はどのように行われるか、説明できる。
主張責任の意義について説明できる。
立証責任の意義及び分配基準について説明できる。
請求原因、抗弁などの概念・機能を説明できる。
主要事実に関する主張に対する認否の概念・機能を説明できる。
抗弁と否認の相違について説明できる。
第2回
売買契約に基づく代金支払請求訴訟の事例について、「攻撃防御方法の体系に従って主
張の分析・整理をし、請求原因、抗弁等について要件事実(主要事実)を摘示すること
(以下、認否の記載を含めて「主張整理」という。)」ができる。
売買、代理、錯誤、詐欺による取消しの各要件事実について説明できる。
第3回
貸金返還請求訴訟の事例について主張整理ができる。
消費貸借の要件事実について説明できる。
期限の定めのある消費貸借と期限の定めのない消費貸借において、貸主はどの時点で貸
金の返還を求めることができるか、説明できる。
履行遅滞を理由とする損害賠償請求権の要件を挙げることができ、それぞれの要件につ
いて主張立証責任がどのように分配されるか、説明できる。
相殺をするためにはどのような要件が備わっている必要があるか、同種の債権が相対立
し、それぞれ履行期が到来している場合に相殺ができないのはどのような場合か、説明
できる。
売買代金債権を自働債権とする相殺の要件事実について説明できる。
第4回
所有権に基づく建物明渡請求訴訟の事例について主張整理ができる。
物権的請求権とはどのような権利であり、どのような侵害に対してどのような救済手段
【2015年度シラバス】
を求めることができるかを具体的に説明できる。
権利自白の意義について理解し、具体例に即して権利自白の成立を説明できる。
単独相続を主張する者が主張すべき相続の要件事実を説明できる。
所有権喪失の抗弁について説明できる。
代物弁済の要件事実について説明できる。
所有権に基づく土地明渡請求訴訟の事例について主張整理ができる。
通謀虚偽表示の要件事実について説明できる。
占有権原の抗弁について説明できる。
所有権侵害の不法行為に基づく賃料相当額の損害賠償請求の要件事実について説明で
きる。
第5回
所有権に基づく建物収去土地明渡請求訴訟の事例について主張整理ができる。
建物収去土地明渡請求の訴訟物について説明できる。
対抗要件に関する主張立証責任は誰が負うべきか、どのような要件事実を主張すべきか
について、説明できる。
対抗要件具備による所有権喪失の抗弁について説明できる。
民法177条の主観的要件について、いわゆる背信的悪意者排除の法理がどのような考
え方であるかを具体例に即して説明できる。
背信的悪意者の要件事実について説明できる。
第6~8回
所有権に基づく所有権移転登記抹消登記手続請求訴訟の事例について主張整理ができ
る。
所有権に基づく根抵当権設定登記抹消登記手続請求の事例について主張整理ができる。
登記手続請求訴訟の訴訟物について説明できる。
物権的登記請求権の発生要件について説明できる。
登記保持権原の抗弁について説明できる。
表見代理にはどのような類型があり,本人はそれぞれどのような要件の下でどのような
根拠に基づいて責任を負うか、説明できる。また、それぞれの要件について主張立証責
任がどのように分配されるかを説明できる。
第9回
真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続請求訴訟の事例について主張
整理ができる。
強迫を理由として意思表示を取り消すために必要な要件を説明できる。
強迫による取消しと取消し後の第三者の関係について説明できる。
第10回
所有権に基づく土地明渡請求訴訟の事例について主張整理ができる。
履行遅滞を理由とする解除の要件を挙げることができ、それぞれの要件について主張立
証責任がどのように分配されるかを説明できる。
双務契約に基づく債務についての履行遅滞を理由とする解除と同時履行の抗弁権の関
係について、説明できる。
弁済の提供の要件事実について説明できる。
第11回
不動産売買の手付に関する訴訟の事例について主張整理ができる。
手付が解約手付に当たるとされるのはどのような場合か、また、それに当たるとされる
場合の効果はどのようなものか、説明できる。
手付の要件事実について説明できる。
解約手付において、履行の着手があったとされるのはどのような場合か、具体例に即し
て説明できる。
解約手付を受領した者がその倍額を償還したといえるのはどのような場合かに関する問
題点を具体例に即して説明できる。
【2015年度シラバス】
第12回
時効取得を原因とする所有権移転登記手続請求訴訟の事例について主張整理ができる。
取得時効の要件について、他の民法の規定や判例により主張立証責任がどのように分配
されているのかを説明できる。
法律上の事実推定と暫定真実の異同について説明できる。
第13回
所有権移転登記の抹消登記手続請求及び登記上の利害関係を有する第三者に対する承諾
請求訴訟の事例について、主張整理ができる。
通謀虚偽表示の第三者に対する効力について説明できる。
第14回
賃貸借契約の終了に基づく目的物返還請求訴訟の訴訟物について説明できる。
賃料不払いによる解除を終了原因とする建物明渡請求訴訟の事例について主張整理がで
きる。
敷金返還請求訴訟の事例について主張整理ができる。
賃貸借契約の締結に際して交付された敷金とはどのようなものであるか、また、その返
還に関する権利義務関係がどうなるかについて、説明できる。
第15回
譲受債権請求訴訟の事例について主張整理ができる。
指名債権の譲渡の要件事実について説明できる。
指名債権譲渡の対抗要件の構造・仕組みについて説明できる。
指名債権の譲渡禁止特約の効力について説明できる。
債務者が譲受人に対してどのような場合にどのような事由を主張することができるか
について、異議をとどめない承諾の制度趣旨を含めて、具体例を挙げて説明できる。
【教科書・参考文献】
教科書:司法研修所編『新問題研究 要件事実』『改訂紛争類型別の要件事実』『10
訂
民事判決起案の手引』(法曹会)
参考文献:司法研修所編『増補民事訴訟における要件事実第一巻』『民事訴訟における
要件事実第二巻』(法曹会)、村田渉・山野目章夫編著『要件事実論30講〔第
3版〕』(弘文堂)、加藤新太郎・細野敦著『要件事実の考え方と実務〔第3
版〕』(民事法研究会)
【成績評価】
試験(中間30%、期末50%)及び授業への参加度(予習状況、授業に対する姿勢、
議論の態度等20%)を総合評価する。